軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十話 別れ

その後、受付嬢さんから詳しい補償についてを聞き、その場で依頼金として渡していた金貨4枚に加え、金貨20枚が別で手渡された。

これからグレゼスタの冒険者ギルドに限るが、冒険者ギルドを利用する際の手数料がなくなったし、それだけでもありがたいのにプラスで金貨20枚。

今回の採取遠征失敗で懐の心配もあったのだが、マイナスどころか金貨20枚を受け取ったことで、収支を大幅にプラスへと転じさせることが出来た。

本当はもう少し渡せる予定だったらしいのだが、予想以上にアーメッドさんに毟り取られたと、受付嬢さんが愚痴っぽく漏らしていたのには笑ってしまった。

結果だけ見れば、俺は手の火傷だけで済んでいる訳だから、大満足な対応だったな。

これも全てアーメッドさんのお陰と言っても過言ではないし、すぐにでもお礼の挨拶に行きたいところなのだが……今日は宿に戻って一度休もう。

初めての戦闘と一人で山に居た疲労が予想以上に酷く、今すぐにでも寝ないと倒れてしまうほどには限界が近い。

アーメッドさんの背中でずっと眠り、宿屋でも少し寝たはずなのにと、体力のない俺の体を情けなく思うが、こればかりは仕方がないか。

一つ大きなあくびをしてから俺はボロ宿へと戻り、そして泥のように眠った。

それから四日後の早朝。

今日は【青の同盟】さんがグレゼスタを発つ日。

泥のように眠った次の日から今日までの三日間、俺はずっと【青の同盟】さんたちと行動を共にしていた。

冒険者ギルドから貰った金貨20枚のお陰で、無理してお金を稼がなくても良くなったため、アーメッドさんに無理を言って同行させてもらったのだ。

それにしても……この三日間は本当に楽しかった。

初日は【青の同盟】さん達の旅の道具の買い出しに付き合い、夜はスマッシュさんが借りている借家で飲み会。

二日目は旅の支度を完璧に終えたと言うことで、五年暮らしているにも関わらずグレゼスタの街を何も知らない俺に、【青の同盟】の三人がそれぞれのお気に入りのお店を紹介して回り、誰のお店が一番良かったかを決めるゲームのようなものを行った。

アーメッドさんは美味しいステーキを提供してくれるお店を紹介してくれ、ディオンさんはオシャレな服屋さんを紹介してくれた。

そして、俺の中で勝手に最下位候補にしていたスマッシュさんだったのだが、スマッシュさんが紹介してくれたのはマジックアイテム専門店。

お店自体は裏道にあるこじんまりとしたお店で、大きさもお世辞にも大きいとは言えない大きさだったのだが……中は凄かった。

見たこともないアイテムが山のように置かれており、用途が不明な物もたくさんあったのだが、とにかく見ていて楽しい。

アーメッドさんとディオンさんもこのお店のことは知らなかったようで、俺と同じようにマジックアイテムを試用しながら楽しんでいた。

このことから、俺があまり洋服を分からないと言うこともあり、最下位はまさかのディオンさん。

二日目は最下位のディオンさんの奢りで飲み会をしたのだが、珍しく結構ショックを受けている様子で少し申し訳ないことをしてしまったな。

そして三日目は、剣の修業を三人から代わる代わるつけて貰うこととなった。

アーメッドさんからのお誘いで特訓をつけてもらったのだが……やっぱり俺は弱いと言うことを改めて痛感したな。

それでもディオンさんとスマッシュさんの教えのお陰で、少しは上達できたし、一人で行なえる特訓方法も伝授してもらった。

アーメッドさんは教える際に擬音が多すぎて、俺の頭では理解出来なかったのだが、その強さは間近で見れたから良かった……と思う。

こうして俺は三日間を【青の同盟】さんたちと過ごし、そして今日。

俺は三人を見送りにグレゼスタの街の門に来ていた。

「ルイン君、お見送りわざわざありがとうございます」

「いえいえ。【青の同盟】さんたちにはお世話になりっぱなしでしたから。あっそれと、これ……つまらないものですが、プレゼントです」

俺はあらかじめ買っていた三人へのプレゼントを手渡していく。

スマッシュさん、それからディオンさん。

ただ、アーメッドさんだけは先ほどからずっと背中を向けていて、俺のプレゼントを渡せない。

俺が正面に回り込み、アーメッドさんの下へ行こうとしたのだが、ディオンさんが片手で俺を静止した。

「アーメッドさんへのプレゼントは私が渡しておきますから、大丈夫ですよ」

「あ、……あ、ありがとうございます」

本当は直接渡したかったのだが……そう言うなら仕方がない。

俺はアーメッドさんへのプレゼントも、ディオンさんに手渡した。

「いやー、本当にルイン君しか、見送りに来てくれませんでしたね」

「本当ですぜ! エリザのせいであっしら嫌われてやしたから!」

いつものノリでスマッシュさんがアーメッドさんの名前を口にするが……今日はゲンコツも飛んでこない。

俺がなにか嫌われることでもしたのかと心配になるが、昨日は楽しくやっていたし、身に覚えがまるでないんだよな。

俺がいつもと様子が違うアーメッドさんに首を傾げていると、アーメッドさんはようやく一言ボソッと喋った。

「………………いぐぞ」

どこか声もおかしいが……それよりも、もう行ってしまう。

ちゃんと最後は顔を見て、お礼を伝えたかったのだが仕方ない。

俺はグレゼスタを去ろうとしているアーメッドさんの背中に、声を張って言葉をかける。

「アーメッドさん! 最初の依頼から本当にありがとうございました! なにも出来ない俺に優しくしてくれたお陰で、俺はなんとか生きていける目途が立ちました! そして……遭難した俺をアーメッドさんが助けてくれたからこそ、今俺は生きてここに立っていられます! いつか、絶対に強くなって、こ、ごの恩を返じに行きまずので……ぞのどぎはよげれば俺を……【青の同盟】に入れで、ぐだざい」

抑えていた感情が溢れ出て、詰まり詰まりの言葉だったが、なんとか伝えたいことは言えた。

俺の言葉がアーメッドさんに届いているか分からないけど、俺の感謝の気持ちは伝わったはず。

すると……もうかなり遠くを歩いているアーメッドさんが、片手を上げて親指を立てた。

「お、エリザはちゃんと聞こえていたみたいですぜ。それじゃルイン、あっしらも行きますぜ。また一緒に旅出来ることを楽しみしてやすから!」

「アーメッドさんはああ見えて恥ずかしがり屋なんですよ。すみませんね、うちのリーダー。本当に面倒くさい性格してまして」

「大丈夫でず。分がってますがら。ディオンざんにズマッシュさんも本当にありがとうございました。お二人に会えだがら、俺はアーメッドさんが怖くなぐなっだんです。いつか絶対に会いに行ぎますので、その時はまだ優しぐしてください」

「ふふふっ、はい。再会できるのを楽しみにしてますね」

こうして、俺は【青の同盟】さんと別れを告げた。

俺の人生を変えてくれたと言っても過言ではない【青の同盟】さん。

先ほど言葉にした通り、俺は絶対にこの恩を返しに行く。

そう心に決め、三人が見えなくなるまで俺は頭を下げ続けた。