軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百六十五話 砂嵐

ロザリーさんも段々と慣れていったこともあり、俺達は砂漠エリアの攻略を始めて二日目にして二十七階層まで到達していた。

攻略ペースはかなり早く、アルナさんの魔法矢のストックがなくなって通常矢に切り替わったことで命中率が戻り、魔物に苦戦を強いられることが一度もないまま、ここまで辿り着けている。

ただ最初から分かっていた通り、暑さと足場の悪さにはかなり手こずっており、コールドミント草と水分をたくさん含んでいる植物であるアレカレスの実でなんとか凌いではいるが、この二種類の植物は不味いし疲労の方はどうやっても取れない。

大量にある薬草で疲労が取れればいいのだが、薬草が効力を発揮するのは傷や怪我のみで疲労にはあまり有効ではないのが非常に残念。

「うー、暑い。汗で体中ベッタベタで気持ち悪い」

「本当ですね。ベタベタな肌に砂が付いて更に気持ちが悪いです」

「二十八階層に到着した段階で引き返しますので、あと少しの辛抱ですよ。コールドミント草とアレカレスの実はいつでも渡せますので言ってください」

「うぅ……。コールドミント草はもう噛みたくないです……。噛むと冷たいしスースーして気持ちが良いんですけど、食べ過ぎたのか舌が麻痺してるんですよね」

「私も。単純に不味すぎる」

俺のそんな提案に対して文句を垂れる二人。

確かにコールドミント草はメントールが強すぎるのか、舌がビリビリするのは俺も感じていた。

アレカレスの実もしょっぱいのと苦いのとで、絶妙に飲みづらいんだよな。

体が水分を欲しているこの状況下でも、あまり摂取したくないと思うってことは相当に不味いんだろう。

なんとか美味しい調理法でもあればいいんだけど、今はそんなことを模索する余裕はない。

「不味くても水分補給も暑さ対策も必要ですから。無理やりにでも摂ってください」

「それは分かってるんですけど……。水分と暑さ対策は地上に戻ったらみんなで考えましょうね」

「ん。砂漠エリアに入るたびにこの苦痛を強いられるのは無理」

「それはそうですね。アーサーさんとも相談しながら色々考える時間は取りますので、今は我慢して植物のまま摂取してください」

二人を無理やり納得させ、コールドミント草とアレカレスの実を摂りながら俺達は二十七階層を進んでいく。

砂漠エリアは階層を進むごとに何処からか強い風が吹き込み始めており、砂が空に舞って視界が悪くなっているのが非常に厄介。

そんな悪天候の中、俺達はようやく今日の目標としていた二十八階層へと続く階段を見つけたのだった。

「やっぱりさっき通ったところにあった。階段も砂のせいで見にくい」

「魔物は気配があるから見つけることが出来ますが、階段は気配がないですからね。引き返してみて正解でした」

「やーっと休憩出来ますね! 吹き荒れる砂が届かない階段の中間地点で休みましょうよ!」

「賛成。休憩して下をちょっと覗いて帰ろう。二十八階層は砂嵐が落ち着いてるといいけど」

「二十八階層はこの階層以上に砂が舞ってますよ。砂嵐はランダムではなく、二十七階層以降はいつ見ても砂嵐状態ですから」

俺が下層の状況を伝えると、アルナさんは心底嫌そうな顔をした。

確かにこの砂嵐の中、進んでいくのは少々辛いものがある。

今は簡易的に布を顔に巻いて少しだけでも凌いでいるが、それでも口や鼻、そして目にも砂が入るため不快感が凄い。

コールドミント草とアレカレスの実の美味しい摂取法と同じく、これも何か対策案を考えなければ駄目だな。

「ふぅー。腰を下ろせるのいいですね。久しぶりに足がパンパンになりました」

「疲れるし暑いしで、このエリア最悪」

「でも魔物だけを見たら、一番楽なエリアじゃないですか? 私が不甲斐なくても楽々と倒せていますし」

「どうだろ。ルインの粘着が効いてるだけで普通に厄介じゃない? そもそもロザリーはここで壊滅させられたんでしょ?」

「あの時は砂漠エリアに入る前から絶望的な状況でしたので……。実際手強いですか?」

「そうですね。毒を持って動きの速い魔物が多いので、粘着爆弾がなかったら相当苦戦していたと思いますよ。投げた箇所に砂を被せればすぐに固まるのも、かなり相性が良いと感じます」

「なるほど、これはルインさん様様だったんですね!」

「ただ、エレメンタルゴーレム戦で分かっていると思いますが、粘着爆弾は巨体の相手には効きません。あとは地面を掘って進む魔物や砂を泳ぐ魔物なんてのもこの先出てきますので、油断は決して出来ませんよ」

「ん。でも、砂漠エリアに巨体の魔物っていたっけ?」

「ええ。ピークガリルと同じく裏ボスと呼ばれている魔物で、名前はデザートビッグモール。砂中を突き進――」

そこまで話したところで、上から何かの音が聞こえ始めた。

吹き荒れる風の音で、二十七階層を歩いていた時は周囲の音なんて何も聞こえなかったのだが、ビュービューと吹き荒れる風の音を遮るように何かの足音のようなものが聞こえる。

「なんでしょうかこの音。大きな足音にも聞こえます」

「――何か魔物の気配。近づいている」

「ここにですか? 階段って安全なんじゃ……」

「分かりませんが、すぐに逃げられるように荷物をまとめて動ける準備を整えてください」

三人で状況を確認し合いながら、耳を澄ませて音の考察をする。

地形の変化の音かと思ったが、アルナさんも言った通り魔物の強い気配も感じてきた。

俺もてっきり階段は安全だと思っていたのだが、明らかに足音はこの場所に近づいてきている。

そして大きな足音は真上で止まり、次の瞬間――勢い良く階段を駆け下りてきたのが音から分かった。

「下りてきました! 二十八階層に下りて、広い場所で戦いましょう!」

「了解」

「分かりました!」

この狭いスペースで戦うのは不利と考え、急いで二十八階層へと駆け下りる。

姿は見えていないが足音からかなりの巨体の魔物で、砂漠エリアで巨体の魔物というと一種類だけ。

――そう、ピークガリルと同様の裏ボス。

丁度、さっき話題にも出していたデザートビッグモールしかいない。

二連続での裏ボスとの遭遇に俺は深いため息を漏らしつつ、急いで二十八階層へと下りたのだった。