軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百八十話 一年ぶりの再会

6階層までの攻略を終えてダンジョンを抜けた俺は、『グリーンフォミュ』で暗視ポーションを買ったあと、すぐに『ぽんぽこ亭』へと戻った。

いよいよ明日は、【青の同盟】さん達との1年以上ぶりの再会。

疲れを取るためにも早めに帰宅したのだが、頭が冴えてしまい全く眠ることが出来ない。

結局、目がギンギンの状態で一夜をベッドの上で明かしたのだった。

翌日。肌寒く、まだ外も薄暗い。

両手で腕を擦りながらベッドから這い出ると、出迎えに行くための準備を整える。

昨日の進行状況から考えると、【青の同盟】さん達がダンジョンから帰還するのは、恐らく朝から昼にかけての時間帯。

まだ薄暗い早朝からダンジョンに向かうのは少し早すぎるが、ソワソワとして居ても立っても居られなくなった俺は、ダンジョンモニター前へ行くことに決めた。

この時間帯のランダウストは、明るい時間帯の賑やかな街の様子はなく、人もいない薄暗い街を早足で進み、ダンジョンモニターの前へとやってきた。

街中には人の姿は見えなかったのだが、流石はダンジョンモニター前。

この時間帯でも、数人だがモニターでダンジョンを見ている人がいる。

ただやはり、今いる人が見ている映像は40~50階層のモニターで、当然ながら低階層のモニターを見ていない。

俺はポツンと一人離れた場所にある、10~1階層のモニター前へと陣取り、【青の同盟】さん達を視線で追う。

現在は8階層まで昇っている姿が確認でき、予定よりも少し早く到着する可能性が高い。

それから【青の同盟】さん達が、1階層まで辿り着くのをモニターで確認した後、俺はダンジョンの入口へと出迎えに向かった。

心臓がバクバクと高鳴っている。

このまま口から出そうなほどだが、口を両手で押さえながら静かにジッと待つ。

そして……とうとう【青の同盟】の3人がダンジョンから出てきたのを、この目でしっかりと確認することが出来た。

映像では本物かどうか半信半疑な部分があったが、肉眼で見れば本物だということが分かる。

スマッシュさんは、ダンジョンでの疲労からか酷く疲れた表情をしており、もさもさだった髭は更に伸びきって胸の位置まで達している。

ドロだらけの顔にボロボロの汚い服も相まって、パッと見は浮浪者にしか見えないな。

一方のディオンさんは、疲労している表情は確認できるが身なりは整っており、ダンジョンから帰還した直後とは思えないほどキッチリとしている。

ディオンさんのなおスマートなイメージが崩れていないことに、なんだか謎の安心があった。

そしてアーメッドさんはというと、疲労している様子は全く感じないが、服装は相応に汚れている。

俯きがちで口角の垂れている二人と違って、俺の記憶に強く残っている明るい笑顔を見せていた。

それから……俺と別れてから髪を切っていないのか、腰の辺りまで髪が伸びており、そんな長い髪を最後にプレゼントした髪留めで結んでいるのが目に入る。

俺が上げたものを大事に使ってくれているということに、顔がついにやけてしまう。

ただこの半笑いの表情で久しぶりの再会をしたくない。

下唇を噛んでなんとか表情を引き締め直してから、俺はとうとう3人に声を掛けに行った。

「ケッ、お前らは本当にだらしねぇな! こんなんで音を上げやがって」

「1週間以上もダンジョンに潜ってたんですぜ。音を上げない方が異常ってもんでさぁ」

「スマッシュさんの言う通りですよ。流石にクタクタですって。私はアーメッドさんが、なんでそんなに元気なのかが不思議でたまりません」

「だからそれは、お前らが不甲斐ないだけだっての!」

二人を軽く馬鹿にしながら笑っているアーメッドさんの前に立ち、俺は頭を下げてから3人の顔を見る。

アーメッドさんは急に誰かに目の前に立たれたからか、酷く鬱陶しそうな顔をしていたのだが……顔をじっくり見て、俺のことに気が付いたようで目がドンドンと開かれていったのが分かった。

「……お久しぶりです。アーメッドさん。それと、ディオンさんとスマッシュさんもお久しぶりです」

恐らく、俺に気づいたであろうアーメッドさんに短くそう声を掛けると、アーメッドさんは更に開かれていく目とリンクするように、徐々に顔が赤くなっていった。

声を掛けられてから、俺に気づいたディオンさんとスマッシュさんも驚いた表情を浮かべた。

「……えっ? ルインでやすか!? おおっ!ディオン、本物のルインですぜい!!」

「……驚きました。本当にルイン君ですね! お久しぶりです。元気にしてましたか?」

まず声を掛けてくれたのは、スマッシュさんだった。

ツルツルの頭を太鼓のようにリズム良く叩きながら、満面の笑みで小躍りしながら喜んでくれている。

そしてスマッシュさんほどではないが、驚いた表情を見せたあとにすぐに笑顔となったディオンさん。

声色からは歓喜の色が見え、ひとまず嫌われていなかったことに心の底からホッとする。

「本当にお久しぶりです! はい!元気にしてました!」

ディオンさんの言葉にそう返してから、アーメッドさんの反応を待ったのだが……。

アーメッドさんは何故か数歩後退しており、顔をキョロキョロとしながら動揺している様子が伺えた。

「あ、あの、アーメッドさん――」

「わ……わ、わりぃ! よ、用事を思い出した! じゃあな!」

そんなアーメッドさんに声を掛けた瞬間。

アーメッドさんは俺から避けるように、ディオンさんの背後を回るように駆けだすと、そのまま冒険者ギルドを勢いよく出て行った。

俺はアーメッドさんの唐突な逃げを茫然と眺めることしかできなく、ただただアーメッドさんが出て行った扉を眺めることしか出来なかった。