軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

046 交流戦開始

交流戦当日。

貸し切りとなった闘技場には、AクラスとEクラスの面々が揃っている。

そしてその前方には、この授業を取り仕切るリオンが立っていた。

「前々から通達していたように、本日は二クラス合同の交流戦を執り行う。大怪我を負わぬよう、条件として武器はこちらで用意した木製の物を使用し、魔法は初級までとする。もっとも、現段階で中級まで使える者はそういないだろうが……」

ルールを説明していくリオン。

そんな彼女の言葉を聞く生徒たちの反応は、はっきりと二つに分かれた。

Aクラスの学生たちはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべ、自分たちの優位を確信しているかのよう。

対するEクラスの学生たちは、嫌そうな表情を隠そうともしない。

どうして格上の相手と戦わされるのか、納得のいっていない様子が手に取るように分かった。

(まあ、普通はそんな反応になるよな)

『ダンアカ』プレイ済みの俺はこの授業の意味を知っている。

だが彼らにしてみれば、ただ格上との実力差を思い知らされるだけの無意味な模擬戦にしか見えないのだろう。

できることなら不安を取り除いてやりたい気持ちもあるが……今の俺にはそんな余裕はなかった。

というのも、

「それではまず、初戦の組み合わせを発表する。アルバート・ガインドットとアレン・クロード。前に出てこい!」

――というわけだ。

しかもトップバッターと来た。

「はぁ」

小さくため息を零しつつ、俺は木製の短剣を手に舞台上へと昇る。

すると、Aクラスの生徒たちを中心にざわめきが広がった。

「最初はアルバートか。Aクラスとして恥ずかしいところ見せるなよ!」

「相手は誰だ? ……え、ヒーラー? ははっ、そんなの相手になる訳ねぇじゃん」

「けど噂によるとアイツ、リリアナ様と親し気に話してたらしいぞ」

「はあ!? どんな手使って取り入ったんだよ……アルバート! コテンパンにやっちまえ!」

Aクラスからは俺に対する批判的な声が飛び交う。

聞くに堪えない言葉も少なくなかったが、俺は特に気にすることなく体の調子を確かめる。

ふとEクラスの方を見やると、そこにはクラスメイトたちの様々な表情があった。

リリアナとローズは冷静そのもので、ユイナは複雑そう(俺の実力と、それを隠したいと考えていることも知っているからだろう)、そして彼女の隣にいるシフォンやミリャは、純粋に不安げな表情を浮かべている。

ルクシア? もちろんいないよ。

ちなみにゲーム通りだと今日は寝坊じゃないはず……って、今はそんなことどうでもよくて。

「ハッ! よく逃げずに来たな、アレン・クロード。そこだけは褒めてやる」

目の前に立つアルバートが、不遜な態度でそう告げてきた。

ちなみに武器は手にしていない。ジョブが【魔法使い】ということもあり、Eクラス相手の模擬戦程度なら不要だと考えたのだろう。

「逃げずに来たも何も……アカデミーの学生としてただ授業を受けに来ただけだ。当然のことだろ?」

「ハンッ、そんな減らず口を叩けるのも今だけだ……」

そう言いながら、アルバートはビシッと指先を俺に突き付けた。

「アレン・クロード。お前のことはあの後、改めて調べた。ただでさえ落ちこぼれなEクラスの中でも実力がなく、ダンジョンでトラブルに巻き込まれた時だって自力で解決することすらできないんだろ?」

トラブルとは、ダンジョン実習のことを言っているのだろう。

表向きでは、俺はルクシアに助けてもらったことになっているはずだからな。

「それがどうした?」

「それがどうした、だと? たかがダンジョン実習ごときで誰かに救ってもらわないと何もできない最弱職が、リリアナ様の興味を引いているという事実そのものが度し難い。お前はこのアカデミーに不要だ!」

「………………」

随分な物言いだ。

しかしそれを聞いたAクラスの面々は(ユーリを除いて)盛り上がり、対するEクラスの面々は苛立ちの反応を見せる。

その様子を把握しているはずのリオンは止めようともせず、静観を貫いていた。

十数秒後、会場が落ち着きを取り戻したタイミングを見計らって、リオンがゆっくりと腕を上げる。

「それでは――始め!」

リオンの合図と同時に、まず動いたのはアルバートだった。

「ファイアボール!」

奴がそう詠唱すると、手の先に火の球が現れる。

対して、何も行動を起こそうとしない俺を見て、アルバートはニィっと笑みを浮かべた。

「どうした、力の差に怯えて何もできずにいるのか? いや、関係ないか。なにせヒーラーは一人じゃ何もできない最弱職なんだからな!」

叫びながら、こちらに手を伸ばすアルバート。

そんな彼を前にし――俺は昨日から今日にかけての思考を反芻していた。

そもそも、俺がゲームのシナリオ通りに進めたかった理由は何か。

その理由について、改めて考え直したのだ。

そして、ついに一つの答えが出た。