軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

017 不死人形

メインキャラの一人であるルクシアを前にし、思わず言葉を失ってしまう。

(おいおい、絡まないでおこうと思った矢先にこれかよ……)

何か興味を持たれることをやらかしてしまっただろうか。

そう不安に思っていると、ルクシアがおもむろに切り出す。

「さっき。たまたま聞こえてきたんだけど、君が【ヒーラー】ってホントっ?」

「……自己紹介はたまたま聞くものじゃないと思うんだが……そうだけど、それがどうかしたのか?」

「ふ~ん、 こ(・) れ(・) でそうなんだ……」

納得したのかしてないのか、眉を寄せてジロジロと俺の全身を観察してくる。

どう対応したものか計りかねていると、彼女は打って変わって笑顔を浮かべた。

「あはは、急に呼び止めちゃってごめんね! 教えてくれてありがとう。私はルクシア……えーっと」

「……アレンだ」

「これからよろしくね、アレン! じゃっ!」

そんな言葉を言い残し、ルクシアは颯爽と立ち去っていく。

最初から最後までよく分からない行動だったため戸惑ってしまうが、ルクシアは自由奔放な性格であり、大した意味もないかもしれない。

なにせ、寝坊で入学試験の大半をすっぽかすような奴だし……

ただ、

「何だか、アカデミーを見て回る気力を奪われたな……」

どうせ明日、案内で見て回ることになるからいいかと、今日は寮へ帰るのだった。

◇◆◇

翌日。

二日目の今日は授業がなく、校舎の案内が主となっていた。

魔導図書館や魔道具工房といったファンタジー世界独特の施設から、食堂や購買部といった一般的な施設まで。

リオンの案内で校内を巡る中、最後に訪れたのが鍛錬場だった。

「ここが、Eクラス専用の鍛錬場だ」

リオンが扉を開くと、そこには30人が自由に動き回れるほどの広大なスペースが広がっていた。

床には魔力を含んだ特殊な材質が使われており、壁には無数の魔導具が設置されている。

「基本的な自主練はここで行うように。そして、これを一人一体ずつ受け取れ」

リオンが手をかざすと、部屋の中央に人の背丈ほどもある案山子が現れた。

一見すると、ただの的にしか見えない。

しかし、アレが重要なアイテムであることを俺は知っていた。

生徒たちの注目を集める中、リオンは案山子に手を置く。

「これは『 不死人形(ふしにんぎょう) 』。 煌血竜(こうけつりゅう) という不死の性質を持つSランク魔物が素材に使われている特別なマジックアイテムだ」

リオンは『不死人形』の特徴について説明を始める。

まず、煌血竜の性質を受け継いでいるため、一定の強度と再生能力を有しており、訓練用の的とするには最適なこと。

そして最大の特徴として、『不死人形』を使用することで、スキルの熟練度上昇を効率的に行えると語った。

「通常、スキルの熟練度を上げるには、実際のスキル効果――たとえば攻撃スキルの場合、魔物にダメージを与えるなどの結果が伴う必要がある。それがない空撃ちでは効率が格段に下がるのは皆も知っての通りだろう。とはいえ、全ての特訓を魔物相手に行う訳にもいかない――そこで、この『不死人形』が役に立つ」

一息入れ、リオンは続ける。

「この『不死人形』はステラアカデミーの知恵と技術の結晶。便宜上マジックアイテムと分類されているが、煌血竜の性質を受けついでいるため、 正(・) 確(・) に(・) は(・) ま(・) だ(・) 生(・) き(・) て(・) い(・) る(・) 。つまりこれに攻撃を加えると、魔物相手にスキルを使うのと同様に、熟練度を上げることが可能となるわけだ。さらに与えたダメージ量に応じ、一部パラメータが上昇する効果もある」

リオンの説明を聞き、クラスメイトたちが「おおっ」と声を上げた。

それもそのはず。

なにせ『不死人形』は、ステラアカデミーに入学する理由の上位に入るほど、この世界にとっては画期的なアイテム。

安全かつ効率的に成長できる手段があるとなれば、彼らのテンションが上がるのも当然だ。

ただ、

(本当に効率的かって言えば、悩ましいところなんだけどな……)

確かに魅力的なアイテムではあるが、デメリットも複数存在する。

まず、熟練度が上がるとはいえ経験値は獲得できないこと。

結局のところこの世界で物を言うのはレベルなため、最短効率で強さを求めるならダンジョンに潜るのが一番なのだ。

パラメータが一部上昇することがあるとリオンは言っていたが、それだってレベルを上げるのに比べたら微々たるものである。

そのため『ダンアカ』では、メインパーティーでダンジョンを攻略する間、それ以外のクラスメイトを鍛錬場に放置し、『不死人形』相手に特訓をさせることで熟練度を上げてもらうという使い方をされていた。

使用頻度の多いキャラとそれ以外では、時間が経つほどに格差が生まれていく仕様だったのだ。

(もっとも、ダンジョン攻略を優先した方がいいというのは、コンティニューが可能なゲーマー特有の考え方。命が一つしかない現実だと話は変わってくるんだろうが……)

デメリットはそれだけではない。

もう一つだけ、致命的なものが存在する。

『不死人形』がいくら煌血竜の性質を受け継いでいるとはいえ、能力や強度は本来の数十分の一にまで低下している。

一日に与えられるダメージ量には制限があり、それ以外の時間は特別な魔力が満たされたポットに保管し、再生するのを待つ必要があるのだ。

そのため結局のところ、一日に得られる熟練度やパラメータは限られた値になってしまい、ダンジョン攻略の効率を超えることはできなかった。

これらの理由から、『ダンアカ』において『不死人形』は、あくまでキャラクターの成長を補助するものでしかなかったのだが――

( 俺(アレン) の場合は、事情が少し違うかもしれない)

クラスメイトたちが『不死人形』に興味津々な様子を見せる中、俺は密かに思案を巡らせていた。

ゲームをプレイして『不死人形』の設定を聞いた時から、ずっと考えていた疑問があった。

アレンに転生した今、それをようやく試すことができる。

俺は自分専用の『不死人形』を受け取り、小さく息を吐く。

(さあ、検証開始だ)