軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

016 メインキャラに捕まった

グレイの言葉に、教室中がざわつき始める。

「ジョブがない? 本当なのか?」

「なんでそんな奴がアカデミーに……」

「そもそも、どうやって入学試験を突破したんだ?」

同時に聞こえてくるのは、そんな言葉の数々。

主にモブを中心として、グレイを怪訝そうに見つめていた。

(……まあ、こうなるよな)

この世界において、ジョブは本人の器が十分に仕上がった時、突如として女神から選択の機会が与えられる。

平均して14歳の時に獲得できるのだが、そのタイミングが早ければ早いほど才能があるというのが通説。

15歳を超えてから獲得したものは才能がないとされているのだが、グレイはその例に当てはまっていた。

(実際のところは、英才教育のおかげでジョブ発現の早い貴族が、勝手に言い出しただけなんだけどな……)

そんな裏設定を知っている俺はともかくとして、彼らにとってはその通説こそが真実に外ならない。

自分たちが必死に苦労して合格したこの世界最高峰のアカデミーに、ジョブなしの人間が紛れ込んでいるという事実に、どこか納得いかない様子だった。

実際問題、物語開始段階のグレイはジョブを持たないことから非常に弱い。

もし俺がヒールを使えなかったらどうなるかを考えたら、想像も容易いだろう。

そして、周囲から落ちこぼれ扱いされるグレイがどう成り上がっていくのか――そんなところから『ダンアカ』本編は始まるというわけだ。

「注目」

違和感のある教室内の空気を断ち切るように、リオンの声が響き渡る。

教室中の視線を集めた彼女は、グレイのことに触れるでもなく話を進めた。

「自己紹介は終わりだ。次に魔導学生証を渡していく、名前を呼ばれた者から取りにくるように」

そう言って俺たちに魔導学生証が手渡された。

この魔導学生証は単なる身分証明書ではなく、迷宮都市内での買い物や、ダンジョン攻略の通行証代わりに使える万能デバイスでもあり、アカデミーで生活していく上での必需品となる。

絶対に失くすなと、念を押すようにリオンは告げていた。

彼女は続けて、今後の予定が書かれたスケジュール表を配布するとともに、幾つかの注意点について説明した。

その中でも特に重要なのは、二週間後に行われるダンジョン実習について。

それを終えるまでは、【駆け出しの迷宮】を含めた一部の低ランクダンジョンしか入場が許可されないとのことだった。

その説明を聞いた俺は、思わず眉をひそめる。

先日のリリアナの一件で、俺のレベルは21へと上がった。

それ自体は喜ばしいことであり、アカデミー入学までに想定していた数値を遥かに上回っているのだが……

問題は、今の俺が低ランクダンジョンに挑戦したところで、レベルを上げられないということだ。

(一応、魔導学生証がなくても入場できる隠しダンジョンは幾つか覚えがあるけど、そこは逆に難易度が高すぎるからな……)

今のレベルで挑戦するのは現実的ではない。

二週間後までは、別の手段で成長を試みる必要がある。

(とはいえ、手がない訳じゃない)

もらったスケジュール表のうち、明日のラストに書かれた「鍛錬場紹介」の文字に視線を落とす。

そこで一つ、どうしても試したいことがある。

もしそれが成功した場合、 俺(・) の(・) 成(・) 長(・) 速(・) 度(・) は(・) 一(・) 気(・) に(・) 跳(・) ね(・) 上(・) が(・) る(・) はずだ。

「では、本日はここまでとする」

そんなことを考えているうちに、リオンは説明を終えており、本日は解散の運びとなった。

(さて、ここからどうするかな……)

主人公のグレイに視線を向けると、幼なじみのミクと合流し帰路についていた。

『ダンアカ』ではこのまま初日が終了し、翌日までスキップされるはず。

いわば、ここからはゲームで語られることのなかった空白期間だ。

『ダンアカ』の大ファンだった俺としては、ゲームキャラがどんな風に生活しているのか観察したい気持ちもある――が、ここは自制することにした。

(ただでさえ、リリアナの件でシナリオに歪みが生じてる。これ以上、モブの俺がメインキャラに絡むのは避けた方がいいだろう……)

名残惜しくはあるが、今日のところは大人しく帰ることにしよう。

そう思いながらカバンを持ち上げる。

「ねえねえ、そこの君」

いや、待て。

何もすぐに帰らずとも、校舎内を探索するくらいならいいかもしれない。

このステラアカデミーは、俺にとっては聖地同然。

ただ探索するだけでも十分に楽しめるはず――

「ちょっ、無視しないでよ~」

「――えっ?」

その直後だった。

誰かに腕を掴まれ、動きを制限される。

いったい何が起きたのかと思いながら振り向き――俺は驚きに目を見開いた。

「あっ、やっと見てくれたねっ」

そこにいたのはピンク色のセミロングに、まるで宝石のように輝く青色の瞳を持つ少女、ルクシア・フォトン。

たった今、絡むのは止めておこうと考えていたメインキャラの一人だった。