軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35.にゃん……

さて次は臆病ライオン、と思っていたんだけども。

目の前に横たわっているのは、大きなライオンのぬいぐるみ。

「にゃん……」

「にゃん……」

いきなり起き上がってきたら困るので四方八方から観察して、ちょっと投石もしてみて、反応がないのを確かめて。ちょっと途方にくれてみたところ。

「いやこれどうしよう」

「ヒント無しにゃん~~?」

「これまでにライオンのぬいぐるみなんて落ちてなかったしなあ」

たしかに、これまでそれっぽいものは見かけていない。猫mobからの奇襲とかもなかったしなあ。

とりあえず反応がないのは確かめたので、近寄ってみる。つんつん。……あ。

「これ採取スポットにゃんね~」

「にゃんと」

『採取』『採掘』どちらでも収集出来るっぽい。まず採取してみると、ライオンのぬいぐるみが消えた。アイテム化したらしい。イベントアイテムらしくなかなかの重量がある。

「不法投棄にゃん」

「雰囲気も相まってたしかにその感じある~」

たしかに廃墟の街の針金の森、若干ゴミ捨て場の雰囲気が出てる。スチームパンクの下町やスラム街の雰囲気といおうか。

「ぬいぐるみ、どうやって使ったもんかね」

「鞄から出しても何も反応はないにゃんね~」

「やっぱり直さないとダメとか?」

「『裁縫』は猫も持ってないにゃんよ」

「うーん、『採取』して何かを集めるのかなあ」

「『採取』といえば、猫ちょっと気になってたことがあるにゃん」

「にゃん?」

「針金にもたまに採取スポットが出てるにゃん~」

「そうなの!?」

そうなんです。

黄色い石畳を外れるから取りに行くのもな~と思って黙っていたんだけど、道を囲む針金の山にもたまに『採取』出来るところがあるのだ。

「じゃあちょっとそっちも取ってもらっていーい?」

「いいにゃんよ~」

早速ちょっと戻って、針金の山の採取スポットへ。

では、と猫が黄色い石畳の道を外れると、ザザザッと波のように足元の石畳が色を変えた。赤!

「っと、『ミラー』!」

ニュッと生えてきたウィッチボットからの攻撃をフーテンさんが跳ね返す。うわわわ、氷柱が飛んでくる。猫も『ミラー』を使って応戦してみるが、反射はともかく相手に当てるのはかなり難しいぞコレ!

猫がわたわたしてる隙にフーテンさんがウィッチボットを削りきる。光になって消えたのを尻目に、針金の山から『採取』。

そうしてる間にも新しいウィッチボットが生えてくる。

「黄色い石畳を探すまでしばらくは敵が出そう!」

「にゃん~!」

ほどほどに逃げつつ、ほどほどに倒しつつ、針金の山から採取していく。

わかったのは針金の山から手に入るのは『何かの骨格』というアイテムで、手に入れるごとに 何か(・・) が猫たちの後ろについてくるようになるということだ。今は脚と尻尾だけがついてきている。

「いやこわいこわいこわい! 何かってなに!?」

「たぶんライオンだと思うにゃんね~」

「あっ、そういうこと!?」

最後に『ライオンのぬいぐるみ』を皮(?)として被せたら完成するんじゃないかと。カカシと木こりの後ろにくっついてるし。

「じゃあもう少し集めなきゃいけないってことか~」

「そうにゃんね~」

黄色い石畳が見えたけど、いったん保留にして針金の山を漁る。猫がゴソゴソ拾う間、フーテンさんは護衛をしてくれる。適材適所!

しばらく続けると、四足の動物だとわかる程度には骨格が揃った。ためしに『ライオンのぬいぐるみ』を鞄から出してみると、骨格に吸い込まれる。

「おっ」

「出来たにゃん~!」

骨格のときはスマートだったけど、皮がぬいぐるみなせいでやたらファンシーなライオンが出来上がった。歩き方もテチテチ…という感じで威厳は全くないが、まあよかろう。ライオンはライオンだ。

黄色い石畳の道に戻ると、石畳が再びザーッと音を立てて姿を変えていき、大きな階段になった。

階段の向こうを見上げると、そこには城が立っている。

「思ったより早くつけそう?」

「にゃんね~」

物語ではエメラルドシティへ辿り着くまでにも紆余曲折あったはずだが、さすがにすべてをなぞったりはしないらしい。

階段を上って廃墟の街を振り返ると、これまでさまよっていたとは思えないほど街は小さかった。

「異界化してるにゃん」

「そうみたいね~」

階段はアーチ状になっており、上りきったあとはゆるやかに下っていく。そして城の門へと繋がっていた。

「オズに会ったら東の魔女を倒すのが筋書きにゃんね」

「東の魔女がBOSSかなあ」

などと言いながら、ゆっくりと階段を降りていたのだけども。

目の前が一瞬、真っ白に染まったと思ったらお空を見上げていた。

『にゃん……』

『にゃん……』

隣ではフーテンさんも見事に転がっている。

HPはふたりとも赤を通り越して黒。一撃でしたね。

『なんだろ、罠かな~~!?』

『なんだったかもわからなかったにゃんよ~~!!』

このゲームでは死亡するとカメラが固定されて、周囲をぐるぐる見たりすることは出来ない。とりあえず猫たちがメラメラ燃やされていることはわかる。

猫は『ド根性』持ちなのでHP越えても一発は耐えるはずだから、連続ダメージ床だったか、ついでに遠距離攻撃を受けたかのどちらかだと思われる。

『まあ転がってても仕方ないし、帰りますかあ』

『にゃあ~~、残念無念にゃ……』

『紙二枚は無謀でしたな』

『ペラペラにゃん』

そんなわけで、残念ながら道半ばにしてホーム帰還。

学園都市の冒険者ギルド前でフーテンさんと再会した。

「デスペナ大丈夫だったにゃ?」

「LVダウンしたわけじゃないしね~構わんよ。猫ちゃんは?」

「猫はのんびり上げてるから気にしないにゃん」

「そうだと思ったにゃん」

このゲームのデスペナルティは、一定時間の衰弱と経験値消失だ。LVが上がるにつれて重くのし掛かるのはどんなゲームでも変わらない。衰弱は攻撃力・防御力の減少を示し、街歩きには関係ないデバフだ。

ギルド前で立ち話もなんなので、ちょっと移動してベンチに座る。街着に戻って、はいお茶、そして『ハッピーポップ』。

休憩しつつ、反省会だ。

「召喚獣はもっと前に出しておくべきだったねえ…」

「猫も従魔を出しておけばよかったにゃん~。廃墟とはいえ普通に街だろうと思ったのが間違いだったにゃ」

「俺もそう思ってた~」

「にゃん~。猫はもう一回リベンジしてみるけど、フーテンさんはどうするにゃん?」

「俺も気になるし行くにゃんよ~。まだ時間もあるしね。紙2枚の再来はまずいから、ヤマビコたちも呼んじゃっていい?」

「ありがたいにゃん~、猫も応援を呼べないか考えてみるにゃんよ」

「猫ちゃんの呼ぶ応援ならきっとアライアンス単位になるねえ。準備しとくわ~」

そうだろうか。

まあ人形連合は大ニュースだから来てくれそうだけど、農家神官さんたちは情報があやふやだし、みんな忙しそうだし、無理じゃないかな?

そう思いつつも、あちこちにメールを飛ばしていく。フーテンさんも連絡を取っているようなので、そっちはおまかせ。

『たぶん人形製作師にまつわるクエストを見つけたけど、猫じゃ戦力的に最後まで辿り着けなかったにゃんよ~! お暇ならちょっと力を貸してほしいにゃん~!』

ひとまず人形連合へポンポンと送信。

うーん、農家神官さんたちにはどうしようか。ゴーレム関連は決まったわけじゃないしなあ。

悩んでいるとポコンとメールが来た。

『『パラシュート飴』の量産は可能ですか?』

ノーカさんだ。

『パラシュート飴』とは意外だな。

しかしこの飴だけは普通に露店で売れると思って、量産しておいた分がある。

『もちろん出来るにゃんよ~! 今ちょっとクエストに行くところだから、送るの後になるけどいいにゃん?』

『もちろん後で構いませんよ。いま暇なのでヒーラーが必要ならお気軽に誘ってください』

『にゃ!? そんなこと言われたら遠慮なくお誘いしちゃうにゃんよ~!』

『どうぞ。どこへ行けばいいですか?』

フッ軽!!

『学園都市にゃんよ~』と返して、ちょっと迷ってから『たぶん人形製作師の関連クエストだと思うにゃん』と付け加えておく。

『人形製作師……、人数が増えても大丈夫ですか?』

『望むところにゃん~!』

私は猫。

パーティーバランスなど知ったこっちゃない猫。大人数でいけばだいたいなんとかなるさ!

そんなわけで、ベンチを待ち合わせ場所に指定してお待ちする。

「お邪魔いたしますわ!」

「人形製作師と聞いて!」

「こんにちはー!」

「きましたよー!」

「イベントごちです!」

まずやってきてくれたのは、人形連合のみんな。

ガラス工のティアラさんに人形製作を目指すナマナマさん、陶芸家のバンザイさん、楽士のサッサさん。それからイベント好きのタレイアさんにその相棒のエンジェルさん、怖いもの好きのココロさん。

お久しぶりの面子もいて、装備が変わっている。こういうのって、みんなそれぞれに楽しんでいるんだなあとわかってよいよね。

それから、中身がわからない着ぐるみが3名。

いやほんと誰だ……。毎回着ているぬいぐるみが違うので、喋るまで誰か本当にわからない。装備変わっているのっていいよねと言った舌の根も乾かぬうちだが、これは困る。

「中身の点呼するにゃんよ~」

「やだなあ、ショーユラですよ!」

「ミソラです!」

「オスシでーす!」

お馴染み裁縫師で人形連合のショーユラさんが蛍光グリーンの熊、その弟のミソラさんがピンクの象、タベタイーノ一族のオスシさんが名状しがたき青い目玉か。

今回の着ぐるみ隊も個性的ですな……。ここはアルテザではないので、周囲がざわついたのはご愛敬。

その後、農家神官さんが到着。

「お世話になりまーす」

「むしろお世話しにきましたー」

「回復ならまかせろー!」

「お騒がせしてすみません。お邪魔します」

「多くなりましたが大丈夫です?」

ゴージャス金髪お姉さんのユミーさんに、ルイネアのラコラ農家アルミハクさん、同じくルイネア男性で美形なのに言動がチャラいタスクさん。二面性神父ロールプレイヤーのアベルカインさんに、ノーカさん。

この前農家ダンジョンに行ったときには会えなかった人もいて、これまた嬉しい。農家神官たちはだいたい最前線を走ってるので、装備に変更はない。これもまた頼もしさの証のようで面白いよね。