軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34.カカシと木こり

「じゃあ、猫ちゃんは『錬成陣』のレシピを求めて廃墟の街に来たかったわけか~」

「そうにゃん」

黄色い石畳の道は安全らしく、ウィッチボットは全く現れない。のんびりと歩いていられる。

物語のなかでは黄色いレンガの道がエメラルドシティへ向かう街道だったが、このシナリオの中では廃墟の街のなかのどこかへ向かっているっぽい。

そういえば竜巻から見たときには、廃墟の街の近くにはお城があったのだっけ。そして気球が飛んでいた。

「てことは、街についての情報は特にないのね」

「そこは教授に聞いてきたにゃんよ~」

「おっとぉ」

街についての情報は、マレビト研究のマジカルおじいちゃん教授から聞いている。いや、魔子族だったからマジカルではなかったのだが、それはさておき。

竜巻の街はやはり元々は学園都市の職人街で、その当時は芸術都市と呼ばれていたアルカディアには、カラクリの技術者たちが多くいたそうな。

「カラクリねえ」

「『 精霊傀儡(せいれいくぐつ) 』と並ぶ『 魔道傀儡(まどうくぐつ) 』ていう技術があって、人形遣いとか、人形製作師がいたっぽいにゃんよ」

「それはなかなかすごそうな情報」

フーテンさんいわく、人形製作師は今、探されてる職であるらしい。

「召喚獣のなかにゴーレムがいるでしょ、アレって進化できないって前から言われてたんだけど、人形製作師なら進化させられるんじゃないかって話に今なっててね~」

「にゃあ」

召喚獣のゴーレムと言えば、魔法師――特にヒーラーの盾として使われることの多い、人気の召喚獣だ。進化出来ないからなるべく上位のゴーレムを拾うようにという話だったはず。でも強いタンク型ゴーレムは足が遅いので、どのゴーレムがいいかはかなり論争があったりする。

そんなゴーレム論争に終止符を打ちそうなのが、ゴーレム進化の情報らしい。

「ヒーラー連中が黙ってなさそうね~」

人形連合連絡案件かと思ってたら、農家神官連絡案件だったのか。

いや、でもまだ確定の話ではない。可能性だ。

フーテンさんはたしかゴーレムを持っていない。以前全召喚してるところを見たけど、妖精多めだったからな。猫もゴーレムは持ってない。てことは、猫たちはゴーレムが進化できるかどうか、確かめようがない面子ということだ。

「にゃん……」

「まあ、猫ちゃんが求めてるのは『錬成陣』のレシピであって人形製作じゃないんだし」

「ロニのことがあるから、人形製作は気になってるにゃんよ~」

膝の上に乗せていたロニを持ち上げると、フーテンさんはなんともいえない顔をした。

「人形……ぬいぐるみ……?」

「ぬいぐるみ製作では可動域に限界があるらしいにゃん」

ロニがちょこちょこながら歩けるのは、人形連合のショーユラさんがぬいぐるみを可動にしてくれたからだ。手足が動くように、ジョイントが入っている。

しかし『裁縫』LVの高いショーユラさんでもつけられるジョイントは6つまで、更に回るもののみとなっており、曲げたり伸ばしたりなんかは難しいらしい。出来てテディベアまで、というのが今の人形――ぬいぐるみ製作であるそうな。

「ヒトガタなんて夢のまた夢っていってたにゃん~」

「夢に近づく一歩が見つかるといいねえ」

「にゃあ……にゃっ!!」

「おっと」

右前にウィッチボット! と咄嗟に身構えたけど、攻撃はやってこなかった。

おや?

「射程範囲が狭いのかね? ちょっと離れて進んだ方がいいかも~」

射程範囲が狭いイコール魔法が強力ということでもある。たしかに離れるに越したことはないか……と思ったのだけども。

ウィッチボットはふわりと浮かび上がっては回転しながら降り立つ独特の待機ポーズで周辺を監視している。その姿は、まるで魔女帽子を被った カカシ(・・・) だ。

「言われてみればたしかに~?」

「黄色い道だし、これが順路だと思うにゃん」

「さすがにメタじゃない?」

「にゃあ~~」

などとフーテンさんと話しつつ、くるくるするウィッチボットを眺める。

すると、ふいにウィッチボットが爆発した。

「あにゃあ」

「自爆タイプだったか……」

「近づいてたら危ないところだったにゃん?」

「かもね~」

やはりメタ読みは危ないか。

バラバラとウィッチボットの破片が散らばるのを眺める。ドロップがキラキラと光った。

猫ちゃんが拾ったらいいよ~とフーテンさんが言うので、お言葉に甘えてドロップをいただく。

お、これは重い。

「ウィッチボットのドロップって『カカシの頭』があるにゃん?」

「ないねえ~。イベントアイテムかな?」

重たいし、たぶんそう。

「ここのウィッチボットは元は人間だったにゃん?」

「突然のホラー展開」

オズの魔法使いのカカシって、たしかそんな設定があったような気がする。

取り出してみると『カカシの頭』はずだ袋に麦わらが詰まったようなアイテムだった。目鼻があるので、これだけ見るとたしかにホラーみがある。

「カカシの部品を集めるとかかな?」

「ぽいにゃんね?」

ちょっと進むと再び攻撃してこないウィッチボットが登場し、しばらくすると自爆。そしてドロップ。

『カカシの体』、次のウィッチボットで『カカシの腕』と『縄』。

ちなみに黄色い石畳の道は真っ直ぐではなく、ぐねぐね曲がるし瓦礫のなかに入り組んでいる。ちょっとした迷路だ。

ときどきカチカチと何処かから音がして、波のように石畳の色が変わっていく瞬間を見ることが出来る。ドミノ倒しみたいで壮観。猫たちが今踏んでいる黄色の石畳は変わらないので、道を離れると黄色を見失っちゃうかもね、というのが猫とフーテンさんの一致した意見。

さておき、カカシの部品である。

「やっぱり組み立てるにゃん?」

「猫ちゃんできそう?」

「にゃあ、猫『木工』は持ってな……あ、出来る」

「おっ」

なんで作れるんだろ? と思ったら『罠作成』だ。なるほど、ウィッチボットって罠の一種だから? いや、カカシは罠ではない気もするが、まあいいか!

早速『罠作成』の導きに従ってカカシを組み立てる。といっても体と腕を十字に縄でくくって、頭を刺したら完成だ。簡単!

出来上がったカカシは自分から立ち上がり、ふわんと浮き上がってくるくる回った。

「カカシが仲間になった」

「次はブリキの木こりにゃんね~」

カカシは道案内が出来ないのがお約束だ。猫たちの後ろを浮かび上がっては回るという独特な歩き方で、器用についてくる。

黄色い道はときどき二つに別れたり、消えたりするけども、ちょっと待っているとさざ波のように石畳の色が変化してまた進める。

どの道を行ってもエメラルドシティーに辿り着ける、というのもまたオズの魔法使いのお約束である。

……はい。

そんなわけでブリキの木こり(?)を前にしています。

「真正面から来るのは卑怯にゃんよ~!!」

「削りきれる、削りきれるから大丈夫!」

ウィッチボットの次は、スチールソルジャーという鉄の塊で出来たmobが出てきた。索敵範囲に入ると斧を振り上げてこちらへ突っ込んでくる。

幸いにして1~2匹しか一気には来ないのだけれど、とにかくはやいはやい。足が車で出来ていてスピードがすごいのだ。

フーテンさんが前に出てこちらへ到達するまでに削りきってくれるのだが、ときどき魔法が切られるので(手練れ!)気が気ではない。迫力ぅ!

削りきれなかった場合に備えて猫がフーテンさんに『ポヨ』をかけるという手筈でいるが、今のところ『ポヨ』の出番はなく済んでいる。頼もしいぞシンデレラ…!

フーテンさんの『カマイタチ』で刈り取られたスチールソルジャーがキラキラと光になって消える。

「ドロップは『機械油』にゃんね~」

「今度は自作じゃないパターンぽい?」

「そうじゃないと猫、さすがに『鍛冶』はないにゃんよ」

「たしかに~」

猫は後ろでやんや言ってるだけなのでクラフト面でお役に立ちたいところだが、スキルがない領域はどうにもしようがない。

相変わらず廃墟の街ながら、針金が張り巡らされた通りに出た。黄色い石畳は続いているものの、四方八方に針金で作られた何かが転がっていて、さながら針金の森といったところ。瓦礫はなくなったけどちょっと不気味なのは変わりない。

細く入り組んだ通りを向こうからスチールソルジャーが駆けてくるわけで、なかなか気が抜けないのである。

「なんかでかい、なんかでかいにゃんよ!?」

「ほんとだでかい!?」

とかいってたら3倍でかいスチールソルジャーが駆けてきた。

フーテンさんがわたわたと魔法を放っていくのを、猫はヨイショしながら見守る。ちゃんとバフはかけてます、雀の涙だけどね! そして『ポヨ』待機。

さすがフーテンさんは上級魔法師だけあり、到達前に削りきった。ギギッと軋んだスチールソルジャーが斧を振り上げた状態で止まる。

「や~~、心臓に悪い」

「おつかれさまにゃん~」

今度は消えなかったけどドロップも出ないっぽい。

ここは原作通り、油を差してやる展開なのだろうけども。

「こんなでかいの着いてきたら困るにゃん?」

「たしかにでかいねえ」

フーテンさんの2倍はあるんだが。

まあ仕方ない、ブリキの木こりは物語に必要なのだ。

手分けしてドロップの『機械油』を大きなスチールソルジャーに使っていく。するとみるみる輝き始めたスチールソルジャーがピカリと光に包まれた。

そして光が収まると、ブリキの缶に手足が生えたようなものがいた。手には斧を持っている。ずんぐりむっくり。

「にゃん……」

「にゃん……」

スチールソルジャーはシュッとしてかっこよかったのになぜこんな姿に……。

「ま、まあサイズは小さくなったにゃ!」

「たしかに~~」

ブリキの木こり(?)は思いの外なめらかな動きで猫たちの後ろに加わった。カカシと並ぶとデコボココンビという感じでなかなかよい。

「次はライオンにゃんね」

「ライオン……この廃墟の街に?」

「動物園を抜け出して野生化しちゃったみたいな」

「世も末にゃん~~」

いやあ、だってそれくらいしかライオンが出てくるパターンなんて想像できないじゃない。

やっぱりまた襲ってくるパターンかな? ネコ科らしく奇襲だったら、今度こそ猫たちパーティーは危ないんだが。