軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23.レトの教本

「『錬成陣』のレシピがあるにゃん?」

「あ、はい。レシピありますよ。えっと……、どうしよう、物々交換とかって可能なんでしょうか。その、差し支えなければ『錬金釜』のレシピと交換とか…」

「にゃあ、可能ならそのレシピを手に入れた道順を教えてほしいにゃ。猫、『遺失したレシピを発見する』クエストを持ってるにゃん。プレイヤーから得たものでも可能か謎にゃん?」

「あ、そんなクエストがあるんですね!? もちろん構いませんよ」

「猫も直接のレシピじゃなくてレシピの覚え方を教えるにゃん~!」

早速フレ登録してもらい、メールでレシピ(の入手方法)を交換することに。

錬金術師の地人族ヨットさんによると、『錬成陣』のレシピは学園都市で手に入れたらしい。なんと。

「にゃあ、自由都市だとばかり思ってたにゃん!」

「あ、錬金釜は学園都市じゃないんですね」

お互いにクエストの場所に驚いてしまった。錬金術の本場って自由都市でもあり学園都市でもあるっていうから、意外とレシピ探しの場所は広くて大変なのかもしれない。

気になるのは学園都市内に廃墟があるってことですな。クエストのある場所がそこらしい。学園都市ってなんとなく隅から隅まで整備されてる印象だったけど、都市というだけあって思ったより雑多な土地柄なのかな。

「まさかお使いクエストの中に紛れていたとは思いませんでした。ありがとうございます、早速いってみようと思います」

「頑張るにゃん~」

行政施設へ向かうヨットさんを見送って、猫の露店もそろそろ閉店。

買取もほどほどに集まったし、よきかな、よきかな。

露店を終えたら、今日は本屋さんへ行く予定だ。しばらく行ってなかったし、インク作ったし、ちょっとお裾分けしに行こうかと。

もちろん、お金があるので本を買おうという算段もあります。ここからここまで全部……はやりたいけどやらないぞ。

「いらっしゃい」

いつも通り気のなさそうな接客で出迎えられて、本棚を眺める。最近はいろいろなところへ行ったけど、図書室がない街だったり、すでに読んだことのある本しかなかったりと、新しい発見はあまりなかった気がする。

だからきっと、たいして本は増えてないだろう、という判断だったのだが……、あった!

「こ」

レトがカードを出しつつ、激しく自己主張している。

そう、なんとマルモサイズの本が売ってるではないか!

これは買いだ、絶対買わなければ。

えっ、おいくらなんだろうか。今までの本の価格からは想像がつかないぞ。小さいから安い? いやいや、豆本は技術的に高いものだ。

レトが持っているのは1冊だが、マルモ本は3冊あるみたい。せっかくだから3冊すべて買ってあげたいが、はたして…!

「そのサイズの本は通常本よりも高いぞ」

「にゃん!!」

ですよね!

いや、でもやっぱり買ってあげたい。レトがもはや抱き締めている1冊は確実に買うとして。あ、でもこっちの2冊はあまり興味がないっぽい?

「にゃあ、その1冊でいいにゃん?」

「に」

「に」ってなに…!?

そっちの2冊も欲しいってこと!?

「3冊買うにゃ?」

レトは少し悩んだ素振りを見せたあと、1冊を抱えたままテテテッと本棚を走り去っていった。

「にゃあ」

「いらないんじゃねえか?」

レトの行方を同じく目で追っていた本屋さんが言う。

うん、猫もそうじゃないかと思った。つまり、レト用は1冊だ。

それから猫用の本を選ぶ。

猫の場合は、本屋さんに行ったら買おうと思っていた本が絞ってあったのですぐだ。

絶対買おうと思っていた『従魔法の基本』。本屋さんに来れない時期に見つけたのと、来れてもお金がなかったのが災いしてなかなか買えなかった本だ。

テイマーギルドの秘密の書庫で見つけたこの本は、風猫族のミー(仮)さんから買った『ポヨ』と同じく、写し伝いの本だと思われる。

にゃふふん、ついに手に入れちゃうぞ!

レトと一緒に本屋さんのカウンターへ。

「これくださいにゃん」

「また高い本ばっかり見つけてくるな、この猫は」

「にゃふふん、猫、いま懐がポカポカにゃん」

「前も言ったが、本で素寒貧になっても知らんぞ」

「大丈夫にゃんよ~」

パチパチと本屋さんがそろばんを弾いて、猫に見せる。ひいふうみい……、なな!?

七桁!?

たか…、たっかいね!!?

「び、びっくりのお値段にゃん!?」

「そりゃ写し伝いの本なんか持ってくりゃそうなる。おまけにこっちは魔法教本だ」

「教本だったにゃん!?」

なんと、レトの本は魔法の教本だったらしい。お、おお、レトったら自力で教本見つけてきてた。道理でそれだけ欲しがったはずだ。レト、魔法好きだもんね。

それに従魔法にしても、ひとつじゃなくて複数の魔法があるのでお高いといわれれば、そうね、としか言いようがない。む、むむむ。

「にゃあ~~」

「やめとけ、やめとけ」

「にゃっ、買うにゃん!!」

金ならあるもんね!!

払ったらなくなっちゃうんですけどね!

「まいど」

「にゃあ~~」

財布があっという間に寒々しくなった。おそろしや、本屋さん…。

「にゃ、そうだ、インクを持ってきたにゃんよ」

「ほう?」

「『古書のインク』じゃないけど、猫が作ったにゃ」

素寒貧の威力で忘れるところだった。いそいそと『灰茶のインク』と『悩めるインク』を取り出す。

「同じく『マーロのイガ』から出来たインクだけど、本屋さんはどっちのインクを使うにゃ?」

「うちは『灰茶のインク』だな」

「にゃん~、じゃあこっちをお裾分けにゃん!」

『灰茶のインク』を渡すと、本屋さんは光に透かすようにしてインクを眺めた。

つ、通常品質なので大丈夫とは思うけど、品質チェックをされると心配になるな。

「ふむ。『従魔法の基本』を写してきたら、200万zで買ってやる」

「にゃ!?」

そりゃ写して覚えるから、写すけども。

200万zというのは(さすがに購入価格には届かないけど)結構なお値段だぞ?

「本屋さんで売るにゃ?」

「へたくそな本なんか売れるわけがねえだろう」

「にゃあ!」

たしかに猫の手だから美文字とはいきませんけども!

いや、そもそも本屋さんのラインナップは来る人によって変わるから、本屋さんが並べてるとは限らない、のか? この本屋ってNPCにとってはどう見える本屋さんなんだろうね?

首をかしげたところで、本屋さんは煙管を取ってゆっくり吸い、ぷかりと白い煙を吐いた。

「写し伝いの本は、人にやっても価値がある。だから好きにするといい」

なるほど、本屋さんに渡すもよし、誰かに渡すもよしってことか。

200万zは気になるけど、せっかく書いたなら写し伝い、誰かに渡したい気もするぞ。

そういえば『ポヨ』の紙片も、まだ誰にも渡さずインベントリの肥やしなんだよね。フーテンさんにでもあげようと思って忘れていた。シンデレラはガラスだから…。

従魔法だったら、ペチカちゃんに渡してもいいしなあ。

「ちなみに本は、どのインクで写すといいにゃん?」

「写し伝いの本には魔法が籠ってる。だから下手に魔力のあるインクで書いたら干渉する」

「魔力のないインクで写すにゃんね~」

となると、『灰茶のインク』をまた作らないといけないな。あとは『羊皮紙』だろうか。

「本は、綴じなくていいにゃん?」

「素人が綴じれるもんじゃねえ。紙のまま持ち込むんだな」

「了解にゃん~~」

ふむ、これはもしかすると『製本師』のジョブにまつわるクエストなのかも。

ジョブが関わってるとなると、ちょっと気になってしまうところだ。迷う~~!

まあ、書くまでにはしばらくかかるんだし、それまで悩んでみるのもいいかな…

本屋さんを後にして、寒々しくなった懐を抱えてルイに乗る。かぽかぽと移動。

お使いクエストも終わったし、本屋さんで本も買ったし、それでは次なる目的地へ移動、の前に、こなしておくことがある。

光属性魔法を手に入れたら行こうと思っていた、神殿の木である。GPSに印をつけておいてよかった。すっかり忘れるところだったわ。

印つけておいても一瞬、なんだっけこれ? てなったけどちゃんと思い出しました。

早速神殿へ行って、鎮守の森の奥へ向かう。鬱蒼とした木々は昼時間でもなお暗く、いつきてもちょっとひんやりしている。森林浴になりそう。

小さなお社へ辿り着く。

「どうぞ、入っていらっしゃい」

「お邪魔しますにゃん~」

前と同じく女性の声に誘われて、お社の中へ。

銀髪のルイネアが座っている。

「導きを得たものよ、こちらへ…」

「にゃん」

誘われるままに近づくと、ルイネアは猫の頭に――猫耳の間の狭い額のところに手を翳した。

「あなたの進む道に、光のあらんことを」

ポワンと少しだけ暖かくなって、光が猫へ吸い込まれる。ルイネアの姿は以前と同じく、かき消えた。

『おめでとうございます。隠された秘密に辿り着きました。SP10とプレゼントボックスを入手しました』

「にゃあ」

おや、お久しぶりの表示。

でもこの表示が出たときって、何かのスキルを習得可能になりましたって出ないっけ?

気になって調べてみると、ここで表示されるのは『聖属性魔法』らしい。なるほど、猫、すでに習得可能です。

このルイネア自体が第三エディションから追加されたもので、これまで神官LVを上げてからじゃないと生えてこなかった『聖属性魔法』を早いうちに生やすことの出来るアップデートらしい。

『聖属性魔法』は破邪系神官をしたいひとは早めに欲しいスキルだから、いいアップデートだったんだって。

猫は魔法スキルを取る余裕は、もうないからなあ。

ルイネアがかき消えた後に残された木は、相変わらず触っても変化無し。猫としてはむしろ、この木の方が気になっちゃうのに、残念。

さて、心残りを解消したので、今度こそ移動。

ついに行くぞ、学園都市アルカディア!

いやあ、ここまで長かったね。