軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14.氷の語り部

「弱点は例に漏れず火で、HPも貧弱なようです。急降下してきますが、飛んでる間は方向転換出来ないようなので、『ファイアーウォール』で対処可能かと」

「視界の悪さも『ファイアーウォール』なら関係ないにゃんね!」

「んね!」

スノーウィングへの対応はそれでいいとして、残るは金色の雪(?)がなんだったのかだ。オーロラとセットで謎の現象だった。

「ラッパっぽい音が聞こえた気がしましたし、やはり『トロンポス・ベル』が関係してそうですけども」

「にゃあ~、次は『トロンポス・ベル』を吹いてみるにゃん?」

「それもいいかもしれません」

「あとはやっぱり、次は金の雪が渦巻いてた地点をしらべたいにゃんね」

「そこまでたどりつきたいですねー!」

反省会終了。

猫が魔法師ギルドへ寄って『サーモスタット』を覚える間に、サッサさんは冒険者ギルドで、スノーウィングの情報を集めてくれることになった。

魔法師ギルドへ寄って、早速『サーモスタット』をインプット。いつもなら教本で覚えるところだけど、急ぎなのでササッとインプットだ。収入もあったことだしね!

幸いにして『サーモスタット』の要求LVはそう高くなく、インプットも50万zと良心的。この街では必須の魔法だからかな?

ついでに使いそうな『アイスブレス』もインプットしちゃう。

それから、『氷魔鉄』を作るのに使えそうな『アイスコフィン』の教本も購入しちゃお。こちらは後でじっくり読む予定。

少し時間が余った。マイルームへちょっと帰還。

まずはギリギリで送還が間に合ったリカを労う。『凍結』が完全行動不可じゃなくて助かった。

ブラッシングして真っ白な毛を撫でてやれば、次は我もとスーニャが寄ってくる。こやつめ、マイルームの庭で日向ぼっこしていたから、毛はふっかふかじゃないか。こやつめこやつめ。

ブラッシングを終えたら、『サーモスタット』の試運転。

『サーモスタット』は対象接触。使用MPは30、持続10分。対象者の周囲1mほどに不可視の適温空間を作る魔法だ。名前からすると保温できるように聞こえるが、20度前後の空間を作る魔法であるようだ。

そのため、『サーモスタット』を使って冷気を保存するとかは出来ないんだって。それは『コールドカーテン』という別の魔法になるらしい。なお『ホットカーテン』もあるとか。

また対象者の周囲1mと範囲が限定的なので、騎乗時は騎獣にもかける必要がある。なるほどなるほど。

ついでに『アイスブレス』も実験。文字通り氷の息を吐く魔法。攻撃範囲は術者の肺活量(種族および筋力・耐久に依存)による。吐息に触れたものに確率で『凍結』を与える。

猫は貧弱なので、たいしたブレスは出来ないっぽい。とはいえ口から氷のブレスが出るのはちょっと楽しい。

試しに『トロンポス・ベル』で『リリー・リリー』のアイスブレス付きを吹いてみると、ピキピキと腕の中の楽器が凍りつき、明らかに音程が変わっていく。

こうして吹いてみるとわかるけど、たしかに聞こえたラッパの音は『トロンポス・ベル』に似てる。似てるけど、でもそのものではなかったかもしれない。いや、遠くから聞こえるとまた違うのかなあ?

最後にマケボを物色。仕入れておくと便利そうなアイテムはないかなー。お金があるとお買い物が捗ってしまうな……、いや、いや。あまり買ってはいけないぞ!

さて、待ち合わせの時間が近づいたのでマイルームを出る。

『サーモスタット』は覚えたけど、ルイは雪道厳しそうだし、ルビーも絨毯に雪が積もるので不可、スーニャは断固拒否された。ラージはほぼ水なので気温の上下に弱いようで、今回は留守番。

そんなわけで連れていくのはレト、リカ、シロビ、ロニとなる。レキは新しくお出掛け。

約束の冒険者ギルド前へやってくると、見覚えのある人が。

「にゃあ、ロッテンさんにゃ」

「やあ、また会ったね。こんにちは」

ボウフォルで会った流浪の吟遊詩人、ロッテンさんだ。

「里帰りにきたにゃん?」

「ああ、君たちから聞いた祭壇の話が気になってね」

そういえばロッテンさんって、生け贄にされそうになったことがあるって言ってなかったっけ。それなら祭壇とか知ってそうなものだけど。

「心当たりはないにゃ?」

「私のときは、残念ながら谷底へ置き去りに、だったからね。祭壇らしきものはなかったんだよ。ボウフォルの例に倣うなら、街のなかにあると思うのだが」

「そういえば、行政施設で歴史を知るなら旅する語り部さんに聞くといいって言われたにゃん。それってロッテンさんにゃ?」

尋ねるとロッテンさんは笑った。

「語り部か。たしかに私のことかもしれないね。歴史といっても、私はここ百年ほどのことしかよく知らないけども」

「十分だと思うにゃんね~」

「百年では全然足りないよ。実際、私は祭壇を見つけられていないのだしね」

話している途中でサッサさんもやってきたので、合流。

「ボウフォルと違って、ヒントになる石碑もなさそうにゃんね」

「ビオパールは、新しい街だから」

「そうなんですか?」

「雪崩があったっていう話にゃんね」

「そうだね。雪崩を機に、街は壊されてしまったんだよ」

ロッテンさんによると、現在のビオパールの歴史はそれほど長くないらしい。前身となる街があったので建物自体は古いものも残っているけれど、大半は街が変わるときに壊されてしまったそうな。

「壊されてしまったにゃん?」

「ああ、私たち氷の系譜が、瑞獣を失ったときにね」

瑞獣というのは、風は猫、地は鼠、火は狗、水は蛇――というアレだ。風は風猫族で、地は地鼠族、火は火狗族、みたいなやつ。

地水火風の妖精族から瑞獣は生まれたとする説があり、逆もある。その他の属性は、妖精族が旅立ってしまったからいないのだとも伝えられているらしい。

「氷属性にも古くは瑞獣がいたと伝えられているんだ。氷が溶けるようになって、逃げてしまったと」

「そうだったんですか。どんな瑞獣だったんです?」

「詳しくは伝わっていない。ただ『トロンポス・ベル』の音色は、彼らの歌を真似たものだといわれているよ」

「にゃあ…」

『トロンポス・ベル』はそのままラッパの音だから、模すって言われてもな。出来そうなのは鳥や海獣の鳴き声くらいだろうか?

『もしかして、さっきのラッパの音って『トロンポス・ベル』じゃなくて瑞獣の声だったんでしょうか?』

『その可能性も高いにゃんね! 氷の尾根に住んでるのかもしれないにゃ』

『尾根に行くのは我々だけじゃ厳しそうなんですよねー』

『にゃん~』

未確認魔物というBOSSに挑むには、猫たちでは難しい。少なくとも猫は適正LVじゃないし、サッサさんもメインは魔法師、ひ弱なのである。

「そういえば、氷の尾根には何があるにゃ?」

「あそこは禁足地で、人は入ってはいけない地だよ」

「にゃん??」

あれ、猟師のおじさんは未確認魔物がいるから入れないって感じだったけど。

猫が首を傾げていると、ロッテンさんも首をかしげ、それからハッと目を瞬かせた。

「もしかして、今は禁足地じゃなくなっているのかな? あそこは吹雪の乙女が帰った場所だから、人は足を踏み入れてはならないっていうのが、私の子どもの頃には常識だったのだけれど」

「今は違うんじゃないかにゃ? 猟師さんからもそんな話はなかったにゃん」

「氷の尾根って、『銀雪花』が咲くところですよね? 私も入っちゃったことがありますよ」

「なんだって…!?」

サッサさんいわく、氷の尾根には青月夜の精霊スポットがあったので、硝子連合で向かったことがあったらしい。特に止められたりもしなかったとか。

たしかに猫も冒険者ギルドで聞いたけど、問題があるのは未確認魔物だけっぽい言い方だったな。

「なるほど……。私が子供の頃には、氷の尾根では神隠しが起きると伝えられていたんだ。それで入ってはいけないと言われていたのだが……」

「神隠しですか。そんな話は聞きませんでしたね…、まあ隠されていたらわからないですけども」

「にゃん~~」

うーん、神隠しか。ますます気になっちゃうな。

「氷の尾根に用事があったのかい?」

「にゃあ、『トロンポス・ベル』を吹くのにふさわしい場所を探していたら、氷の尾根を勧められたにゃんよ。なんでも、尾根から音色が聞こえてくるとかで」

「それでさっき実際に、その音色を聞いたんです。たしかにちょっと『トロンポス・ベル』に似てました」

「それは…、もしかしたら瑞獣の声かもしれないね」

「猫たちも思っていたところにゃん!」

「ですね!」

「その音がまた聞こえたら、私にも教えてくれないかい。一度、瑞獣の声を聞いてみたいんだ」

「わかったにゃん~」

「また聞こえたら、呼びに来ます!」

ロッテンさんとひとまず別れる。

『ロッテンがPTに加わってくれそうですね!』

『ボウフォルと同じなら、瑞獣も仲間になってくれそうな気がするにゃん!』

『瑞獣、どんな子でしょうねー』

『あとは祭壇がどこにあるかにゃんね~』

『怪しそうなのは、やはり氷の谷の尾根ですよね』

『にゃあ~~、BOSS討伐は荷が重いにゃん』

『にゃん~~』

話しつつ、ひとまず冒険者ギルドに入る。

さっき一度入ってギルドから出たら音が聞こえたので、その再現を試してみることにしたのだ。

すると、大当たり。

戸を開けるとプアー……と遠くからラッパに似た音が降ってきた!

「ロッテンさん!」

「ああ、今のは聞こえたよ!」

白い頬を紅潮させたロッテンさんがPTに加わる。忘れずにフルクのリカに『サーモスタット』、猫はしがみつく。サッサさんもファントム・フルクを呼び出してしがみつく。準備はオーケー!

ロッテンさんは猫たちより身長があるので、雪道でもそのまま行くようだ。足が長い。

「金のオーロラ……、まさしくこれは瑞獣の声だ!」

興奮したようにロッテンさんが駆け出すのを、慌てて追いかけていく猫たち。

金の天蓋が落ちた地点へ向かうにつれて、再び吹雪はひどくなる。

「『ウィンドカーテン』」

ロッテンさんが魔法を使うと、吹雪が止んだ。いや、風のカーテンが作られて、吹雪が遮断されたのだ。あ、頭がいい…!