軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17.赤月夜は誰がために

赤月夜。

「そう、トレントの王は倒れたのね」

「この森にトレントが戻るまで、また長い年月がかかるのでしょうね」

「寂しい森になってしまうわ」

『ざ、罪悪感…!』

アルラウネのしょんぼりした雰囲気に山頂組が胸を痛める展開もあったが、

『いやいや、でもクエストの既定路線としてキングトレントは討伐対象やろ!?』

『それはそう』

『トレントが王になる前になんとかする道がもしかしたらあった…?』

『たぶんなかった…と思いたい!』

『少なくとも我々が関わった段階では、もう手遅れだったと思いますよ』

うむ、推定無罪。

これを機に迷いの森と惑わしの森が繋がるとか、なんらかの拡張が行われるのかも? そういうことであってほしい。

「トレントはいなくなっちゃうにゃん?」

「いいえ。『トレントの芽吹き枝』があるもの。いずれはこの森にもトレントは戻るはずよ」

「それまではマンドラコラがかれらのゆりかごとなるでしょう」

トレントとマンドラコラは、成長するまでは守ってあげて、成長してからは守ってもらう、そういう共生関係ってことらしい。

「『トレントの芽吹き枝』ならあるにゃん!」

「あら。それなら赤月夜にお祈りしてあげて」

「大きくなるよう祈ってあげて」

『『トレントの芽吹き枝』はキングトレントのドロップでもやたらと出たな。このせいか』

『使っていけってことだろうね~』

『『ハーヴェスト』出来ればなあ!』

『儀式魔法ばかりは、どうにもなりませんね』

『『経過』はアリ?』

『アリな気がするにゃん!』

『経過』や『タイムパス』なら持ってる人も多いので、ほどほどにかけつつ成長を見守ろうという話に。

「まあ、芽吹き枝を持っているの? マンドラコラも生まれるし、ちょうどいい場所があるわ」

「花は踏まないであげてね。赤月夜の精霊は花のある場所で生まれるの」

「花畑のある場所が好きなのよ」

「わかったにゃん~」

赤月夜の精霊は花畑のあるところか。

アルラウネが植えていい場所を教えてくれたので、早速手分けして『トレントの芽吹き枝』を植えて、ちょいちょい『タイムパス』。

本当は『トレントの芽吹き枝』を畑で育ててみたい気持ちもあったりしたのだが、まあその野望はまたいつか叶えることにしよう。

森は木陰が大きくて日が陰るのが早い。『灯』を浮かべつつの作業だ。青々とした緑のなかにポワポワと浮かぶ明かりはなかなか雰囲気がある。

気がつくと白ラコラたちも参加して、土を掘り、枝を支えたりと手伝ってくれた。ときどき掘った穴にそのまま寝る豪胆なものも現れ、土をかけて寝かしつけられていた。白ラコラの生態が相変わらず謎だ。

作業をしているといつの間にか白ラコラが増えていたのもびっくりした。どうやら森の白ラコラが合流していたらしい。ということは森のマンドラコラも?と探したがこちらは見当たらなかった。シャイなのかも。

やがて日は完全に落ちて暗くなり、風が吹いてきた頃、赤い月が現れた。ぽつぽつと花畑の花が咲き始め、その開いたつぼみから小さな光の玉が生まれる。光の玉は他の光とくっついたり離れたりを繰り返し、ふよふよと花畑を漂い始める。ホタルみたいで風情がある。

精霊の出現を見守っていると、そこかしこで白ラコラたちが他の植物を抱きかかえて(ちょっと腕がある)直立し始める。

そして「もう離さないよ…」とでもいいたげに白ラコラが植物をぎゅっと抱きしめると、ラコラと植物の双方に花がポンと咲く。

『結婚…式……???』

『ていうか心中じゃないこれ!?』

『ラコラの愛、いさぎよい』

『今思うとやつら命掛けて駆け落ちしてたんだなって…』

アルミハクさんが遠い目になってる!

白ラコラの花からもポワンと精霊が生まれるので、元々ここに植えられていた花に精霊が宿ってたとかではなく、現象によって生まれる?のかもしれない。

そこかしこで花が咲き、木々にもポツポツと花が開く。まるで夜の花見のようで、なかなかきれいだ。

猫以外の人々は精霊枠に空きがあるようで、精霊契約をしたりしていた。くぅっ、うらやましい!

猫は期待していた精霊パワーアップもなかった、無念! ロニもここで生まれた精霊は食べないみたい。白月夜の精霊だから、白月夜しか食べないのかも?

赤ならばあるいは、と期待したが、仮面に入ったロミコは無反応だった。うぐぐ。

やはり月明精霊のパワーアップは『ムーンキャッチ』に入ってないと無理ってことなんだろう。ロニは月明精霊からの成り上がりだからか、精霊傀儡だからなのか、その辺はちょっとまだ謎だ。

月が南中すると風がざわざわと大きく吹き始め、それに合わせるように『トレントの芽吹き枝』がにょきにょきと大きくなる。

『何処かで見たことがある…』

『ト○ロだ!』

『それだ!』

『今メイちゃんになってる!?』

『なってはいないかな!?』

『もの○け姫かもしれない』

『どっちにしてもジ○リ感!』

どんどん大きくなり人の背丈ほどになったかと思うと、どっこいしょと根を上げて立ち上がった。ミニトレントだ。

まだまだトレントとしては小さいようだが、動けるようになると一人立ちするのか、そのまま立ち去って行ってしまった。

『まあ我々、親(?)の仇なわけですし』

『ううっ』

『寂しいけど仕方ないね』

トレントが去っていく後ろへついていく白ラコラもいて、かれらはいずれトレントの元でマンドラコラになるのだろう。

大きくなれよ…。

いずれプレイヤーに倒されるのだとしても、こうして成長するところを見るとなんかこう、長生きしてほしい気持ち。

などと見守っていたら、立ち去らない個体も現れた。

『おや??』

『アルラウネ村で暮らす感じ?』

「あらあら、この子たちは旅に出たいみたい」

「旅に!?」

「時々いるのよ。森以外で暮らしてみたい、放浪系トレントが」

「放浪系トレント」

矛盾する存在がいたものだな?

「これは、テイム可能個体ってことかな?」

「あっ、なるほど!」

居残りの放浪系トレントは全部で5体ほど。

『使役』持ちで相談した結果、神官農家なノーカさん、タスクさん、アルミハクさん、それからヤマビコさん、最後に猫がテイムすることになった。

人形連合は火属性だし、工房とは相性が悪そうということだった。

猫のテイムした個体は、他よりちょっと小さく猫と同じくらいのサイズ。まだ葉っぱはそんなに生えてないけど、葉はなかなか大きそうな広葉樹トレントだ。トレントにも針葉樹と広葉樹があるので面白いよね。

向こうもテイムを望んでるってことなのか、テイムは1回で完了。『モンシラの卵』とは大違いだ。

『従魔に名前をつけてください』

「モリー」

森から名付けた。安直だけどいいの、わかりやすさが大事なの! ラ行縛りは敗北しました。

モリーは最初から好感度が高いようで、音符のふきだしが出たりしている。向こうが望んだ契約だと好感度が高くなるんだろうなあ。

「放浪系トレントは自分の生まれた森ではない別の場所にいければそれで気が済むものよ」

「庭や畑にいさせても大丈夫ってことです?」

「ええ。栄養のある眠れる土地があるなら、それでひとまず満足するものよ」

「時々はお散歩が必要かもしれないわ」

「歩くのはゆっくりだけど、たまにお散歩させてあげるといいわ」

ふむふむ、お散歩は必要だけど、基本は置きっぱなしでも大丈夫みたい? なかなか足が遅いようだから、その点はみんな安心してた。

どちらかといえば昼夜のある畑の方がよくて、畑に植えておくと他の植物の面倒をみたりもしてくれるらしい。強い日差しを遮ったり、風避けになったり、なかなか世話好きな性格が多いそうな。

マンドラコラと一緒に育てるのがオススメ、とのことだったので、みんなに結婚式した白ラコラたちの種を分けた。アルラウネと分けても多かったのでちょうどいい。

「何から何までお世話になって…」

「にゃん~、今回の月夜はなんだか肩透かしで申し訳なかったにゃん」

「いやいや、地鼠族との縁は十分大きいからね!」

「そうですぞ! かなり進んだ感があります」

地人族にしても、鍛冶師的にも有用な情報だったとのことで、それはなにより。それにアルラウネからの『農業』や『調薬』の情報もなかなかよかったそう。

猫としても、アルラウネからマンドラコラの種を分けてもらっただけで十分収穫だったので、問題はないんだけども。

「みんなでわいわいするだけでも楽しいしね、こういうのはいつでも歓迎よ~」

「ゴーレムとレイドして何も知らんまま若様倒しちゃう展開もあったかもだし、十分でしょう」

「そういわれると、たしかにそうにゃん?」

何事も起こる前に片付いてしまうと肩透かしな気持ちがするものなのかもしれない。

地鼠族との再会は、それぞれがフラグをもらったことだし個々で行うということになり、今日のところは解散。もうかなりいい時間だったしね。

猫ったらうっかり自分が『農業』と『調薬』のアルラウネ講習を受けるの忘れてたので、このままアルラウネの村でログアウトして、ちゃんと教えを受けることにした。

街観光も終わってないし、まだまだドゥーアでやることも多そうだ。

ひとまずログアウト前にマイルームへ戻って、『マンドラコラの種』を眺める。だって気になるんだもん。

これ、シュガーでもホースでもなく『マンドラコラの種』とだけある。出てくるのはランダムなのかね?

マンドラコラは畑に植えなきゃならないらしい。畑…大丈夫だろうか。

それにマンドラコラが家畜扱いなのか、それともテイムしないといけないのかでも変わってくる。

うーん、しばらくは『タイムパス』せずにじっくり育てるのがいいのかな。人、それを先延ばしという。いいの! 後でちゃんと調べるから!

いや、調べるようなところがなくて悩んでたんでした。うん、アルラウネにちゃんと聞いておこう。

ああー。やることリスト更新しておかないとすぐ忘れちゃいそう、というかすでに忘れてる。

隠者の村もいかないといけないし、お使いクエストも進めたい。

でもルイネにも行きたいし、早く学園都市にも行きたいし。今回のことでビオパールも気になっちゃったしな。でもそっちは地底王国へいったら何かしら通じてたりするのかも?

……まあ、寄り道だらけの旅もいいもんだよね!