軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16.過去の大恩

「な、なんですと!? ゴーレムを引っ張り出して!?」

「キラっていうゴーレムに乗ってるって聞いたにゃ」

「キラに!?」

地鼠族は驚愕に言葉もないといった様子でへなへなとうずくまってしまった。

『刺激が強すぎたんだろうか…』

『にゃあ…『金平糖』あげるにゃん?』

『今!?』

「よくわからないけど、これでも食べて元気出すにゃん」

「か、かたじけない」

『金平糖』をあげると、地鼠族は袋を開けてひとつ取り、ポリポリと食べ始めた。

『食べたにゃ』

『主への土産はどうなったんだ』

『それどころじゃなくなったんだと思うにゃん』

『なるほど』

しばし呆然としたままポリポリしてた地鼠族だが、突然シャキッと立ち上がった。

「ハッ、こうしてはおれますまい! 若をお助けせねば!」

「山頂のゴーレムなら今頃、キングトレントと決戦してるにゃ」

「なんと!? 急がねば…!」

「落ち着くにゃん、猫の仲間がキングトレントを倒しにいってるにゃん。『ゴーレムの鍵』も持っていったし、若もきっと無事にゃ」

「お、おお、なんと……」

再びへにゃりと座り込んでしまう。そして猫たちの方へ向けて、土下座のように深々と頭を下げた。

「旅の方、伏してお願い申し上げます。拙を若の元までお連れ願えないでしょうか」

「にゃあ……」

『おっと? アライアンスで聞いてみるか』

戦闘のお邪魔にならないといいけども、と思いつつ、アライアンスチャットにお伺いを立ててみる。返事はすぐきた。

『終わったよ~~』

『はっや!!?』

『いうてフォレストトレントやもん』

『瞬殺でしたね』

『行くまでの道の方が苦戦したわね』

あっさりしたキングトレントの討伐報告。

『『ゴーレムの鍵』で無事、若様も保護できたで。ギャンギャン喚いてるけど元気、元気』

『ゴーレムの回収が一番手間取った。イベントアイテムなのかとにかく重くてな』

『荷物みんなで整理して、なんとか回収できたところよ~』

ゴーレム『キラ』も若様も無事回収済みとな。

それを地鼠族に伝えると、おいおい泣き始めてしまった。

「うっうっ、うう、よかった、若がご無事で…! キラもよくぞ確保してくださいました…」

山頂へいったメンバーがギルドへ戻ってくるまでに、泣く地鼠族から身の上話をきく。

この地鼠族の名前はヨシヒサさん。由緒正しい 魔道傀儡師(まどうくぐつし) の家系に生まれ、代々キラを管理してきた。

ちなみにキラというのは 雲母(きら) のことだそうで、その中心部に当たる心臓が雲母で出来てるゆえの呼び名だそうな。名字じゃなかった。

ヨシヒサさんがいうにはキラはもう時代遅れの古びたゴーレムで、決して現役で使えるようなものではないらしい。というのも、キラは地鼠族が地底王国を一種族で保っていた頃に使っていたゴーレムだからだ。

「拙たちは小さく、無力でございましたので、巨大なハリボテを作り、それで周囲を巡回することでどうにかして外敵を追い払い、細々と命を繋いできたのでございます」

地鼠族の出入りする入り口が小さいとはいえ、さまざまな外敵が侵入してきては地底王国で暴れまわり、地鼠族は食われてしまっていた。

「更に悪いことに、ゴーレムが暴れまわったゆえか、山の崩落まで起こしてしまう始末。地底王国の入り口は大きく開いてしまい、大型の獣まで入ってくるようになりました。我々の王国は風前の灯火でした」

そんなとき、ビオパールから足を延ばして救援に来てくれたのが、地人族だという。

「彼らは獣を追い払ってくれたばかりか、壊れた入り口を直し、我らの国が守られるようにと周辺を整えてくれました。こうして、地人族に守られた我らの王国が出来上がったのです」

その地底王国の外周、地鼠族を守るための機構こそ、今のドゥーアのはじまりだという。

『ずいぶん話が違うにゃんね』

『どっちが正しいのかはわからんが、ヨシヒサの説が俺は好きだな!』

『猫もにゃん~~』

そして助けてくれた地人族に報いようと、地鼠族は魔道傀儡を使って採掘を手伝い始めた。ふたつの地底王国が本格的に繋がり始めた、その矢先。

「異界の扉が開いたのです」

「にゃあ」

「我らが地人族のために投入したゴーレムは、すべて異界によって敵対者に変わり果てました……」

「あ、ああー……」

「我らの総力を上げてゴーレムに挑みましたが、異界はすべてを歪めてしまいました。あのゴーレムには、人が入っていないのです…。なにもないのに動いている」

「にゃん? クラノスケは、人がいなくても動くゴーレムは旧時代の技術の名残とかいってたにゃんよ?」

「クラノスケは 傀儡師(くぐつし) ではありませぬ! ゴーレムとは、我らの肉体の延長に過ぎぬのです。単体では未完成なもの。我ら傀儡師が中へ入り、初めて完成する」

「ふむ?」

「異界のゴーレムが緊急脱出用の外鍵で開くこともまたその証明でございます」

「にゃあ、そういえばクラノスケが、若様は希代の魔道傀儡師みたいなことを言ってたにゃん?」

「カーッ!! あやつは!! あやつはまったく!」

ヨシヒサさんの顔が真っ赤になり、頭からポーッと湯気が出た。たぶんそういうアクション。

「ゴーレムは若のオモチャではないのですぞ! それをよいではないかなどと甘やかして! 幼い頃から褒めそやされれば、誰しも一度は天狗になるというもの!」

キイキイとヨシヒサさんが怒り心頭なところに、ミニチュア家具を製作していたショーユラさん組が合流した。もちろんアルミハクさんの連れたクラノスケも一緒だ。

「よ、ヨシヒサ!」

「よくも我が前に 面(つら) を出せたなクラノスケ!」

嫌そうに顔を歪ませ、怯んだ様子のクラノスケに対して、ヨシヒサさんは冷静だ。ただしめっちゃ怒ってる。

この対面を見ただけでも、なんとなく事情を察しようというもの。

「まだドゥーアを乗っ取り我が地底王国の再興などと血迷ったことを掲げておるのか! 誰のお陰で我らが存続できたと思ってか!」

「し、しかしな」

「しかしも案山子もあろうか!」

ヨシヒサさんの猛攻にクラノスケはたじたじだ。

「おぬしのような輩のせいで、近頃は若いものまでもドゥーアを逆恨みする始末! なァーにがお天道様の元に、だ! 日の下におれば我らなどあっという間に獣に食われて終わりだろうに!!」

「さりとて我らが地人族によって割りを食っているのは事実でござろう! 昔の大恩などと悠長なことを言っておれば、いずれ我が王国は食い潰されてしまうに違いない!」

揉めてる揉めてる。なんか色々あるんだなあ…。

その間に猫たちはざっくりと、アライアンスチャットで情報共有を済ませる。

『これ47人まではいかないまでも、地鼠族はもうちょっと集めておくべきだったのかもね~』

『たぶん、地鼠族の機嫌を取るというよりは、地鼠族を誘い出す意味でミニチュア家具や『金平糖』が必要だったんじゃないかと』

『それな。あとは、PTに地鼠族が既にいると入ってこないとかあったのかもしれん』

『ありそー』

『ちょっと我々、後手に回ってしまいましたねえ』

『地鼠族探しの方向性が間違ってましたわね!』

取っ組み合いの喧嘩になりそうな2匹をどうどうと宥めている内に、今度は山頂組が合流した。

ルイネアのポユズさんの肩に乗る、ひときわ小さな地鼠族。他の子は毛がほんのり金色というか茶色なんだけど、この子は真っ白だ。

「に、ニャッコ!」

「ニャッコじゃないにゃんよ~」

対面した途端、若様に叫ばれてしまった。風猫族と地鼠族って相性悪いんだろうなあ。

と思ったらヨシヒサさんが大激怒。

「若! 風猫族を相手にニャッコとは何ですか!! それは我らがマルモと呼ばれるほどの侮辱とお教えしたはず!」

「う、うぐぅ…!」

そう言われてみるとたしかにそう。思わずクラノスケを見てしまうとそっぽ向いていた。

まあ、クラノスケのときには猫たちもマルモと呼んでしまったのでおあいこみたいなもんだけど。

「我らのキラまで持ち出しての今回の所業! お父上にもご報告致しますぞ!」

「ええっ!?」

「当然でございましょう! それだけのことをされたのです!!」

『それはそう』

『ドゥーアの崖崩れもだけど、キングトレント生み出しちゃったのはなかなかの所業よな』

ひとまずクラノスケと若を連れてヨシヒサさんは一旦、地底王国へ戻るというので見送ることに。

「この場で説教を続けるのは一族の恥!」と言われれば、そうね~、としか言いようがないやつ。

『殿中でござらなかった』

『殿中じゃないですしね』

『そうだけどそうじゃないぃ…!』

言いたいことはわかる。

何事もなくてよかったんだけどなんか見たかった気もするこの野次馬心(?)よ。

「ゴーレムの『キラ』は後日受取に参ります。此度の報酬に関しましても、そのときにまた相談させていただければ、と」

「承りました」

山頂組を代表して、ノーカさんが答える。

重量級クエストアイテムのままだったら持ちっぱなしは負担では?と思ったが、この時点で重量が0になった『キラのゴーレム』が全員のアイテム欄に配布された。なるほど、ある意味フラグのようなもの?

「その証として、今はこれをお預けいたします。こちらは我が地底王国の信にございます」

更に全員に渡されたのは『地底王国の鍵』。

『これはついにきたー!?』

『地人族大歓喜!』

『うおおおお!!』

『地底王国は『鍛冶』の地と言われていますもの! 地人族じゃなくてもアガりますわ!』

『たのしみー!!』

そうしてワチャワチャと揉めつつも、3匹の地鼠族は帰っていった。

『……あ、あれぇ??』

『え、地鼠族は月夜関係なかった???』

『はて』

『月夜前に片付いてしまったからでしょうか…?』

『う、ううん??』

宛が外れたというか、梯子を外されてしまったようで、しばし途方にくれてしまう。

あ、でもそうだ。

『精霊スポットはたぶんアルラウネの村にあるにゃんよ。赤月夜の話が出てたにゃん』

『じゃあそっちで何かしらあるんかな?』

『何もないかもしれないけど、近場に精霊スポットあるならいっておきたいですね!』

『なにかしらあるとしたら、トレント関連でしょうか』

『キングトレントの後始末…的な?』

『んじゃ移動しようか~~』

他に用事のあるところもないし、今夜の赤月夜のためにアルラウネの村へ移動することにした。