軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1.旅はアルテザから再開

「お待たせしましたにゃん~!」

「ほー! これが人工魔石ですか。なるほどなるほど」

「きれいな色がつきますのね!」

目の前に並ぶ着ぐるみたちが、キラキラした宝石を前にきゃっきゃしている。とってもファンシー。

ちなみに今日の着ぐるみは猫。巨大猫たちに囲まれている。なんだかいつも以上に小さくなった気分。

いつの間にか硝子連合の人々まで着ぐるみになっていることには突っ込むまい。たぶんショーユラさんのインスピレーションが爆発しちゃったんだろう。職人だから…。

そんなわけで久しぶりにアルテザへ来ている。

頑張ってお金を貯めて、ようやく旅立つことが出来た。くぅ、 転移施設(ポータルポート) 代、貧乏にはバカにならん…。成金のうちに畑を買っておいてよかった。猫、大正解。

さておきせっかく来たので、猫が作れるようになった人工魔石、『 魔硝子(クリアビジュー) 』の御披露目を人形連合にした。人形に使う『思う心』の部品には魔宝石が使われているそうなので、属性と品質を思いどおりに出来るっていうのはかなり魅力的みたい。

ちなみに人形連合で今回集まってくれたのは、ショーユラさん、ティアラさん、ナマナマさん、バンザイさん、ココロさんだ。

「『錬金術』はずっとノーマークでしたからなあ」

「『ガラス工』『鍛冶』『陶芸』に加えて更に『錬金術』はきつい…!」

「私も『裁縫』関連でいっぱいいっぱいですね!」

「猫でお力になれる部分は頑張るにゃん~」

元々沼に引き込んじゃったのは猫だしね。やれるところはやるつもりだ。新しい魔法教本はまだ買えないので、属性増やすのは待ってて…。

「しかし魔法も必要となると、かなり『錬金術』も沼が深そうだね」

「にゃん~、『錬成陣』は一応、他の人に魔法を入れてもらうことも出来るにゃん」

フーテンさんに協力してもらって風属性魔法を入れてもらう実験はしてみた。魔法の威力が大きくなるほどタイミングがシビアみたいで、猫が作れたのは『 風魔硝子(クリアウィンドビジュー) 』だけだった。その上の魔法は全然無理でしたな。弾け飛んだ。

素材が不足しているか、押し込める魔法が『ジュエル』では足りないんじゃないか、という話。

他にもポユズさんに光やら、エドさんに毒やらいろいろ協力してもらい、光、土、水、毒は作成することが出来た。

木、闇、火はちょうどいい魔法を持ってる人がいなかった。他の属性はまだ、『 宝硝子(ビジュー) 』の形との相互関係がわかってないからお預けだ。

「火はいける!」

「闇と木は難しいですわね」

『闇属性魔法』は前ならレトが使えたんだけど、ロアンもリューツーも杖から出てしまった今は使えない。まあ使えたとしても『ダークミスト』だったし、『ミスト』同様、込められなかっただろう。

意外と穴なのが木で、木属性魔法持ちって少ないんだって。農家神官ならもしかして?とノーカさんにも聞いてみたけど、『グロウシード』と『プランツ・ケア』しか持ってないとのことだった。

『プランツ・ケア』は植物系魔物、またはオブジェクトを回復させる魔法。場合によっては植物を2回採取できたりする、と攻略サイトにはあった。農家的にはかなり気になる魔法である。今度、教本みておこ。

さておき、木属性の単体攻撃魔法は『ブランチニードル』というトゲを飛ばす魔法だ。これは主に植物系魔物が使う魔法だが、木系装備を持っていればプレイヤーも一応使える。

基本5属性(地水火風回復)以外の属性は、『生活魔法』を通らず取ろうとするとすべからく属性変換クエストを受ける必要がある。光や闇以外を取る人はそもそも珍しくて、更に木属性となると、輪をかけてマイナーだ。

一応、検証というか人柱はどこにでもいるもので、攻略サイトにはどんな魔法が取れるかが掲載されている。ありがたや。尖った性能が多くて、育てれば便利そうだけど、あえて取る必要もないかな…みたいな魔法が多かった。

ちなみに『グロウシード』と『プランツ・ケア』は豊穣神のクエスト報酬だったそう。オーブでもらったんだって。さすが神様は手厚い。

閑話休題、火魔法の『ファイアーバレット』で手伝ってもらい、無事『 火魔硝子(クリアファイアビジュー) 』が完成。

「ありがとうにゃん~!」

「こちらこそありがとうにゃん~!」

何個か猫用にも作ってもらって、逆に何個かは人形連合のために作る等価交換。『 宝硝子(ビジュー) 』と『ビー玉』は向こうが用意してくれるので猫は錬成陣を広げるだけの簡単なお仕事。

猫が作れる『 無魔硝子(クリアビジュー) 』『 雷魔硝子(クリアサンダービジュー) 』は素材と交換でお渡し。猫は素材分儲かる寸法。『 宝硝子(ビジュー) 』はマケボじゃ手に入らないので、お金でもらうよりありがたい。

「じゃあ、形と属性の法則は新しい七宝素材が入手出来ないと難しいわけだ」

「そうにゃん~、いろいろなのが欲しいにゃ」

「ぼくたちは半生産なので、新しい素材を手に入れるのはなかなか厳しいですが、その分、穴場の開拓を頑張ってみますかね~」

「いわゆる効率狩り場じゃないところは、素材もかなり埋もれてるって話ですしな」

「その辺りが私たちにとっては狙い目ですわね」

硝子連合たちはみんな『火属性魔法』持ちなので氷や木系の狩り場に行くことが多いらしく、あまり多種多様な素材の入手というのは難しいそうだ。

ショーユラさんは『生活魔法』で15属性を出してるのでかなりの魔法持ちだが、そもそものLVが高くないのと、本人いわく「ぼくの天賦の才は生産にあるので、戦闘はそこまでじゃないんですよね!」とのことで、行ける狩り場はそこまで多くないのだとか。

まあ、適性は間違ってないのにどうにも合わない狩り場って、やはりある。猫の場合は投擲テイマーなので混雑地はどうやっても苦手だ。横殴り怖い。

「あー、でもどこかのダンジョンで七色の氷が取れるってところ聞いたことあったかも」

「氷を取るのってだいたい火魔法禁止プレイじゃないです?」

「ああー! ありそう…!」

「欲しい素材に限って手に入らない諸行無常」

「あきらめて『風属性魔法』取ろうかなって思うときもある~~」

「わかりみが深い!」

鍛冶によく使われる土系魔物素材はだいたい『風属性魔法』が弱点だからね…。

「もし見つかったらでいいにゃんよ~」

「うぃ、気楽に探してみるわ~」

「お互い、あまり期待せずにいきましょうぞ!」

「この無力さが切ない…!」

半生産とはこのようにままならないのである。猫もだけどね!

そんなこんなで行商を終えて、次はアルテザの樵ギルドへ。『罠作成』を鍛えるのに木を結構伐ったので、ランクが上がるはず。

『樵』から『駆け出し樵』に上がった。

ここまでは簡単に上がれたけど、次からは『トレントの討伐』などの討伐系や、『『トリドリレモネ』の収穫』などアイテム採取系も入ってきてなかなか難しそう。

やはりジョブをたくさん増やしてランク5にしてSP回収、はそう簡単にはいかない。とはいえ『伐採』は猫の初期スキル。ランク5までは上げたいところだ。

つらつらと依頼書を眺めていると、ふとひとつのチラシに目が留まった。

「にゃあ、『『ニャルコール』注意』??」

「ああ、森に入るなら気を付けてくれよ」

樵ギルドの受付さんがいう。ちなみに髭もじゃの、いかにも斧担いでそうないかついおじさんである。

「『ニャルコール』って何にゃん?」

「おや、知らんのか。ニャッコが酔っぱらっちまう酒のような植物でな、この実が生ると、ニャッコが節操なくなっちまうんだよ」

「にゃん~、知らなかったにゃん。ニャッコがちょっかいかけてくるにゃ?」

「敵味方関係なく魔法を飛ばしたりするから、森が大混乱になることがある。もし『ニャルコール』――『ニャッコの木の実』の亜種を見つけたら速やかに回収してくれると助かる」

「『ニャッコの木の実』の亜種にゃんね。わかったにゃん!」

ニャッコは名の通り猫型の魔物。デバフ系、バフ系、アタッカー系といろいろ種類がいる。同種では滅多に群れを作らないのが特徴で、そのせいか生息数はそこまで多くない。有名なのは隠密のブラックニャッコ、それからバッファーのチェスニャッコだ。

ブラックニャッコは素早い上に行動キャンセル付きクリティカルを出してくる天然の暗殺者で、プレイヤーが一度は送還されたことがあるという恐るべき猫ちゃんだ。素早さは高いがHPは貧弱なので、範囲型攻撃を持ってると安心。初心者の壁と言われている。

チェスニャッコはおもにダンジョンのモンスターハウスで現れ、カーバンクルと同じく恐れられる敵だ。この2匹が紛れ込んでるとモンスターハウスでの生還率がぐんと下がるとか。

アルテザとドゥーアの間にある『迷いの森』にチェスニャッコはいないが、ブラックニャッコは希に出る。

……これはフラグ? フラグかな??

「ところで、『ニャルコール』を買えるにゃん?」

「あん? 何に使おうってんだい?」

「猫も風猫族とはいえ猫の端くれ、ちょっと『ニャルコール』が気になっちゃうにゃん!」

「ハハハ! 残念だが風猫族にはただの木の臭いしかしないそうだよ。そうだな、少しでいいなら売ってやろう。ただし、絶対に森の中で使うんじゃないぞ」

森の中で使うとイベントが起きるんですね、わかります。

猫は賢いから危うきには近寄らないんだ、大丈夫。

……。

心配だから森を通るときには箪笥にしまっとこ。

ドキドキしたけど『ニャルコール』は特に高くなくて、200zで購入出来た。お安い。

液体かと思ったら、手のひら大の緑色した木の実だった。ポコポコしている。虫こぶかな?

「『ニャッコの木の実』が虫に寄生されると『ニャルコール』になっちまうのさ」

ほうほう、なるほど?

嗅いでみるけど全然アルコール臭もなく、さしたる特徴もない木の香りですな。ちょっと残念。

しかし虫こぶマタタビといえば、リアルでは漢方じゃなかったっけ。マタタビ酒とか作れるやつ。

もしかしたら『調薬』の材料になるかもしれないし、見つかるようなら多めに採取しておきたい。

いや、これは周辺にブラックニャッコが出るぞ、ていう注意喚起と取るべきなのかな? てことはのんびり採取してる場合じゃない?

…まあいいか。

ブラックニャッコはあくまでも初心者の壁。もはや中級者となったLV29猫の敵ではないのである。フハハ!

……たぶんね。

猫、打たれ弱さにも攻撃力の薄さにも自信があるからにゃんとも言えない。