軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17.運べないもの

「このタコ、突耐性斬耐性があるっぽいね~」

「弱点はなんだ、雷?」

「あと鈍器らしいよ」

「大根で殴るんか」

「下処理にはまだ早いにゃんよ~」

雷、ということでフーテンさんが『フローライトニング』を試してみたが、この魔法は見た目は雷だが風属性らしく、特効は出なかったらしい。デバフはついたけども。

猫もエドさんやリーさんと『雷魔法玉』を投擲してみたり、ポユズさんが雷属性の矢を撃ってみたりしたが、元々耐性のある攻撃方法では思うようにダメージがでない。ペチペチしただけに終わった。

「仕方ないね~~」

フーテンさんが文句を言いつつ召喚妖精を出している。

上級者の召喚妖精、みんな結構でかいのよな。1mくらいある。そしてそのくらいあると、人間との造形の違いが明らかになる。目は白目がなくて大きく、鼻が高くて、顎が細い。実は妖精はあまり可愛い系ではない。だからほぼ人間と同じ造形の精霊と区別がつくともいう。

リーさんとポユズさんも新しく召喚妖精を出した。三匹ともよく似てるので、同種の妖精なのかな。金髪で耳がキツネのように尖っていて、顔も若干キツネっぽい。雷属性らしく、ふわふわと浮かび上がると交互にドでかい雷を放った。

おお、メタリック星きた。

バチバチと火花が散り、海の上を細かな紫電が走っていく。

「麻痺来てもここでやる攻撃がないのがつまらんなあ」

「鈍器の遠距離攻撃って無理じゃない?」

あ。ルビーがキャプテンデビーの上に行ってる。あわわ、ちょっと、電気がパリパリしてて危なさそうだからこっち来ててほしいんだけど!

あわてていたら、ルビーの絨毯から何かが落ちる。ゴイン、と固そうな音がして、ダメージ星が出る。なんと青だ。えっ、猫のダメージでは見たことない色だな!?

続けて雪崩のようにゴンゴンとダメージ星が上がった。よくよく見てみると、ルビーは絨毯の上にドでかい『岩石』を出し、それをキャプテンデビーの上へ蹴落としている。

か……賢い!!

ルビーの『郵便鞄』では、『岩石』は小さめのが3つしか入らなかったらしい。というかよくそんなの拾ってたな!? 猫が重量オーバーで捨てたやつを入れてたんだろうか?

猫のインベントリから『郵便鞄』の容量ギリギリの『岩石』を移してあげると、「チ!」と鳴き声が聞こえてすぐゴインと一際痛そうな音が鳴った。あ、緑星。

「猫ちゃんちの鳥さん何してるの?」

「『岩石』落としにゃん!」

「なるほど落下ダメージ!」

落下ダメージは落下物の高さと重さから算出され、その攻撃力に落とした或いは落ちたもののLVは考慮されない。落とされた或いは落ちたもののLVによる防御力で減衰はするが、下手すると普通の攻撃より攻撃力が出てしまうのが落下ダメージなのである。

そういえば低LVで中LV帯のBOSSをソロクリアするのに、「崖から落とす」っていうクリア方法があるって攻略サイトで見たことがある。あれとある意味同じことをしているわけだ。

ルビーは星属性持ちなので、重力がどういうダメージを与えられるのか、ということに詳しいのかもしれない。なんにせよすごいぞ。

『岩石』は重かったのでそれほど拾ってこなかったのがもったいなかったなあ。

更に3個ほど渡して落とすとキャプテンデビーが麻痺から復活したので、ルビーは戻ってくる。満足げにツヤツヤしていたので撫でておいた。えらいえらい。

チイチイと鳴いて『岩石』をねだるので、また重いのをいれてみたら鞄がパンパンになり、コロンと転がってしまった。すぐ立ち直ってたけども。大丈夫そうかな?

そこからは3連雷、ルビーの落石とテンポよく進めることが出来た。雷の威力がすごかっただけで、ルビーの岩落としは賑やかしだったけどね。

ぷかりとキャプテンデビーが水面に浮かび、BOSS戦はクリアー。

そしてリザルト、の前に、キャプテンデビーからぽつ、ぽつと光が溢れ出てくる。

「にゃん?」

「精霊……にしては沈んでいくねえ」

「液体じゃないっぽいし、なんだろ、楕円……円柱?」

「…タマゴか?」

「あー。タコとかイカのタマゴって不思議な形してるもんね。あるかも」

てことは、キャプテンデビーが船を持っていこうとしていたのは、タコツボみたいに産卵場所にしようとしてたってこと?

ゆらゆらと海面で揺れながら光を溢していたタコの体が、ゆっくりと船から離れていく。

「実入りがないってそういうことね~~」

離れ過ぎてしまうとドロップ回収が無効になる。BOSSはリザルトが出るまでドロップ回収が出来ないので、これが既定路線だったんだろう。

「お、切り落としたタコ足からはドロップ回収出来るな」

「やはり全部切り落とすのが正解だったか~」

するとBOSS戦が終わったことで出てきた船員さんから、小舟を出そうかという提案が。

プレイヤーの操縦ではなく、NPC船員さんが乗って引っ張ってきてくれるようだ。

「いや、あの大きさじゃ小舟が転覆しちゃうんじゃない?」

「んだね~、残念だけどBOSSドロはあきらめるってことで」

「元々実入りが悪い話は聞いてたしな」

せっかくの提案だったけど船員さんに断るフーテンさんたち。安全第一だ。

しかし猫としてはBOSSドロップよりも、未だに光りながら沈んでいっているタマゴが気になる。タコのいる辺りがぼんやり光っているのだ。

本当にタマゴなのだとしたら、幽霊船タコ増えまくってしまうのでは、とか。もしかしてあのタコは精霊スポットになってたのでは?とか。

まあ、持ってくる手段がない以上は仕方ないんだけども。

……あ。

これって 運べないもの(・・・・・・) か。もしかして?

「ちょっと試してみてもいいにゃん?」

「なんでもどうぞ~~」

それでは失礼して。

供物はキャプテンデビー、今夜は青月夜、いけるかな?

「 運送神(リュガ) さまのお力貸してほしいにゃーん!」

運送神から 幽世(かくりよ) の 澱(よど) みで名前を聞いたとき、たしか「運べぬものがあれば呼べ」て言ってたのだ。

決め台詞的なものかとも思ったけど、あれも青月夜のイベント。更に運送神は船の守護神だ。といっても猫は『光属性魔法』は持ってないので、言うだけ言ってみるだけなんだけども。

「にゃわ」

ザブン…、と。

タコから海の下へと注いでいた光が、一息に大きな闇へ飲み込まれた。

「ちょ」

見上げるほど大きなヒレ、それでもまだ切っ先しか出ていない。大きな波が立っているのに、不思議と船は凪いでいる。

『運ぼう』

ボオン、とピアノの低音を弾いたような声。

『これは船を食い尽くすもの。我が海に棲むものに非ず。 現世(うつしよ) には生まれ得ぬもの』

ザバ、とまるで神殿のように水の柱が立ったかと思うと、海の中から頭が覗く。

小山のように大きな海蛇だ。シーサーペント。目のなかに船が入れそう。ザアアア、と滝のように海水がヒレから降り注ぐが、船は守られているようで、水飛沫すら飛んでこなかった。

『 深海(ふかみ) では水の異界が開いている』

シーサーペントのまわりから、今度は精霊の光がふわふわと舞い上がり、みんなの精霊装身具へ吸い込まれていく。

猫のは、やはりロニはもう精霊を取り入れることは出来ないようだ。代わりにレトの杖にくるくると光がまとわりつく。リューシーと同居希望がいるらしい。ウェルカムにゃん。

「ありがとうにゃん~!」

『海の底を覗くものがあれば呼べ』

シーサーペントはトプン…と沈み、身をくねらせながら彼方へ消えていった。

『おめでとうございます。異界の扉の防衛に成功しました。DP20を入手しました』

「し…、心臓に悪いわ!!」

「ごめんにゃん~!」

さすがにちょっと怒られた。

ヤマビコさんはタンクだからそりゃあんなん出たらびっくりするよね。猫ったらホウレンソウの 報(ホウ) しか出来てなかった。いや、 相(ソウ) だったか?

「これはしんだ~~! て思ったわ~~」

「シーサーペントってことはあれ、運送神かな? 大きかったね」

「やっぱり海ってスケールが違うわね!」

「 幽世(かくりよ) の 澱(よど) みに行かなくても神にあえるパターンがあるんだな」

とはいえみんなは新しい精霊は手に入らなかったようで、月明精霊のパワーアップのみで終わったらしい。やはり幽世の澱み以外では新しい精霊は手に入りづらいのかもしれない。おそらくリューシーと同居してくれたのは、珍しいといわれる月明精霊じゃない子だったのだろう。

このまま融合してもらう予定なので、ちょっとかわいそうな気はするが、名前は『リューツー』である。運送神からもらったしね。

猫が『融合』のアーツを使えれば早いのだがまだ使えないので、時間をかけて融合してもらえればと思う。

ちなみに属性は時属性だったようで、レトの使える魔法が増えた。『スローワルツ』だって。どういう魔法?? また調べてみなければ。

「正規ルートは戦闘中にタコを引き揚げる、とか?」

「専用の漁船じゃない限り無理じゃない?」

「タコ釣りか…」

エドさんが若干やる気になってる。釣り好きだもんね。

「釣り神さまのイベントでなにかヒントがあるのかもしれないにゃんね~」

「そういやポーツは白月夜もイベントがありそうなんだっけ? 繋がりはありそうね~」

青月夜にしてもこのイベントで『漬物石』が手に入るし、どっちが先でも片手落ちになりそうだ。何度か繰り返す前提のイベントなのかもしれない。

キャプテン・デビーのリザルト。

結局BOSSドロップは無しだったけど、『海の雫』というアイテムを手に入れた。「海運のお守りに使われる魔石の一種」とのこと。透明でキラキラしている。たぶんシーサーペントの鱗の砕けたやつ?

経験値は結構もらえた。というのも格上相手にルビーが頑張ってくれたので。LV27になった。もう少しで夢の30台。庭の拡張が出来るぞ、 お金ないにゃん!!

船は自由を取り戻したけど、船員さんたちも二度の漂流でお疲れだったため朝を待って移動することになった。

みんなは夜釣りを楽しんだり、月夜の瞑想したり、各々自由に過ごすことに。

猫はマイルームへ戻って、『錬金術』することにした。もう少しルビーの落とすものにバリエーションがあればよかったかなと思って。

そして『爆弾』を調べるつもりだったのを思い出した。すっかり忘れてたね。