軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61.正体見たり

泉の女神さまがてるてる坊主だったのも、だいぶ謎なんだよなあ。

そもそもあの廃村ミニダンジョン、なんだったんだろう?

猫たち泉までは整備したけど、もしかして最後まで整えた方がよかったんだろうか。そうしたら何かわかることがあったとか?

うーん、なんにしても時間が足りなさすぎた。とりあえず、猫が解決すべきはおトミちゃんだ。

雨が止むのを待って古着屋へたどり着くと、案の定と言おうか、古着屋の店員さんは誰もトミちゃんのことを知らなかった。

ホラーが迫ってきたぞ。ペチカちゃんの方は大丈夫かな?

しかし困った。念のため古着屋さんの店内1周してみたが、やはりトミちゃんはいない。

ひとまず他に 伝(ツテ) もないので、ナザール工房へも行ってみることにしよう。

せっかくだからリボンを染めてもらっちゃお。

「トミちゃん……知らない子だねえ」

今回もナザールさんが染色中にお話ししてくれるのはザリさん。ちなみにリボンは亜麻なのできれいな青に染まる予定、とのこと。

そしてやはりザリさんも忘れてしまっているようだ。

「にゃん~、そういえば山奥にある廃村があったんだけど、あれはどこの村にゃん?」

「ああ、それはメエメエ様の村だよ。メエメエ様を祀る祠があっただろう?」

「にゃん?」

あったんだろうか? 途中離脱はやはりよくなかったかもしれない。

というかメエメエ様が大増殖してない? なんでもかんでもメエメエ様になっちゃってるような。これはこれで出来の悪いホラーみたいでちょっと気持ち悪いんだが。

「メエメエ様って、神様にゃん?」

「うん? そうだねえ、神様のようなものなのかもしれないねえ」

う、ううん?

神様、のようなもの……、その手前の大精霊かなにかだろうか?

猫に名前が聞こえるってことは、たぶん神様ではないんだよねえ。でも祠に祀られてる。これまで祠に祀られてるのって、神様しかいなかったんだけど、その辺はどうなんだ。なにもわからん。

とりあえずミニダンジョン周回中のフーテンさんとオードリーさんに、祠があるかもとは伝えておこう。

『廃村にはメエメエ様を祀る祠があるらしいにゃん。でも神様ではないみたいで?? 謎にゃん』

『にゃん~?? 祠?みたいなのはあったけど壊れてたなあ。修復前にお祈りしていいやつか迷ってしなかったんだけど、ちょっと調べてみるねえ』

『私が狩ってる辺りでは見掛けていないね。奥の方かい?』

『そうね~、BOSS手前辺りだったかな』

『ううん、私ひとりだとその手前のスライムがきついね』

『にゃあ、無理はよくないにゃ。フーテンさんにお任せするにゃん~』

『任されたにゃん~』

なるほど祠はあった。猫たちが行ってたら祠の修繕だったのかもしれない。でも木工も大工もないし、小人さんにまかせっきりになってしまうな。

『にゃあん。猫ちゃんや』

『にゃん??』

おや、メールだ。さっきはアライアンスチャットだったのになんだろ。

『祠に『然るべきとき名を呼べ』って書いてあるにゃん』

どこかで聞いたことのある文言だ。

名前……、ハッ!『月と精霊の扉』のお名前一覧がついに役立つときが!?

『然るべき場所のひとつがそこにゃん?』

『たぶんね~~、これでいくと、ときは赤月夜が上ったときだろうねえ』

『それしか考えられないにゃんね。問題はどのお名前かということにゃ……』

『メモリー』から本のログを開こうとするとチカチカ明滅するアイコンがついている。おお、読めといわんばかりだな。

……あれ、お名前はたしかにひとつ、明るくなってるんだけども。なってるんだけども、メエメエじゃないぞ?

『お名前、メエメエじゃないにゃんね』

『人違いにゃん~?』

『にゃん~、金月夜だとメエメエ様だったりするのかもしれないにゃん?』

『あ~、赤月夜だとまた違うパターン? たしかにそういうのもありそうね』

『それに時間限定だと、赤月夜にもう一回そこに行かないと手に入らないってことにゃんね』

『そうなりますなあ。クエストを取るか、精霊を取るか?』

ちなみに光ってるお名前はストルミ・レイニとある。ここでトミコって書かれてたらどうしようってちょっとドキドキしたけどそんなことはなかった。

しかしそうなると、ここでのヒントは関係ないとこを掘ってしまったっぽいな。

ひとまず今は「然るべきとき」ではない、てことで、その場は放置ということになった。

「そら出来た! きれいに青く染まったよ!」

リボンが仕上がってきた。ザリさんの言うとおり、綺麗な青に染まっている。まるで夏の空みたいに青い。いいね!

「お友だちにあげるのかい? それとも神殿へ?」

「神殿にゃ?」

「おや、知らないかい。刺繍したハンカチとリボンを一緒に神殿へ納めるんだよ。そうしたら、一段上の技術が手に入るのさ」

「一段上の技術」

「ご加護がもらえて、お針子の腕が上がるんだよ。『愛のハンカチ』に刺繍したら一石二鳥って、昔は有名な話だったんだ。今の若い子はもう、やらないのかもしれないね」

「にゃあ、猫の知り合いにお針子さんがいるから伝えておくにゃん~」

リボンと一緒に奉納で『裁縫』になにかプラスがあるんかな? 更なる加護がもらえるとかだろうか。『愛のハンカチ』の意外な使用方法が出てきてしまった。

そういえばペチカちゃんは『愛のハンカチ』の刺繍、してあるのかな。リボンを勧めておこ。

『にゃん~、猫の探し人、手がかりがもうなくて手詰まりにゃん』

『実は私もです! 工房主さんもお弟子さんも、ププちゃんのこと全然覚えてないばかりか、なんで火事になったのかも覚えてなくて。下手に聞き続けると犯人にされそうなので、撤退してきました』

ペチカちゃんはどちらかといえば消火に回った方なんだけど、ププちゃんを救出したことで彼らを追い詰めてしまったところはあるので、気まずいらしい。それはたしかに気まずい。

『猫の方は、ペチカちゃんと知り合う前に会った女の子が姿を消して、誰も覚えてないにゃん。獣顔の女の子だったのが気になってるにゃん~』

『そ、それは気になりますね!?』

ひとまずペチカちゃんの用事は終わってるので、合流することに。ついでに刺繍したハンカチとリボンを奉納すると『裁縫』的になにかあるらしい、と伝える。

「『愛のハンカチ』の刺繍、実は終わってるんですよ。LV低いのですごく下手なんですけど…。後でリボン買って、神殿へ行ってみようかと思います」

「にゃん~、リボンならいま猫、何本か持ってるにゃん」

「えっ、あ、じゃあ今から一緒に神殿、行ってみませんか? リボンは買いますんで、困ったときの神頼み、てことも含めて」

「いいにゃんね~!」

神殿でハンカチの奉納を、と神官に告げると、祭壇へ案内された。

祭壇はアジア系の寺院みたいで、ちょっとアルテザでは浮いているような、いや、逆にむしろエキゾチックで合っているような気もする。

木造の廊下には蝋燭の明かりが灯り、オレンジ色に木目が艶めく。グリーンフローラルといおうか、少し草っぽさもある花の香りが漂っている。煙も揺らいでるし、たぶんお香。

祭壇の上の籠に入った石をハンカチで包んで、リボンをちょうちょ結びしたら奉納完了だそうだ。包んだハンカチはどうするんだろ?と思ったけど特に説明はない。

石は、土を丸めて焼き固めたような、均一な丸い石だった。白く 化粧土(けしょうど) された陶器の玉、だろうか。大きさも均一だし、天然の石ではなく人工物のように見える。

「まだ見てないけど、もしかしてバンザイさんがレシピもらってたのってこれかにゃ?」

「『 祈陶玉(きとうだま) 』てやつですね。たしかにそれっぽい?」

バンザイさんが神託でもらったレシピには『?泥玉』を素材とするものがあって、それが先ほど出来上がったとアライアンスチャットで報告されていた。そのアイテム説明とこの石は、サイズ感や色、質感などかなり被るところがある。

「きれいな石ころ、て感じですね」

うん。あれだけ圧縮した素材をつかったわりには、なんだかちょっと残念アイテムな気も少々。

いや、でも、石か…。

「そういえば月夜ってことは精霊関連のイベントにゃんね」

「ミニダンジョンでも、ときどき光ってるのいましたもんねえ。スプちゃんも精霊なのかも、とかも考えてみたんですけど、スプちゃんは石じゃなくて、布ですもんねえ」

「そうにゃんねえ…」

うーん、と二人で首をかしげる。

スプーキー・インプは妖精とも取れるが、妖精にしては『魔物の心』でフキダシが出るので違うっぽいんだよね。なにせ『魔物の心』のスキル説明には「妖精は対象外」としっかり明記されている。たぶん妖精族の種族特性が潰されるからだろう。

つまり人間であるペチカちゃんがスプちゃんのフキダシを見てる時点で、スプーキー・インプは妖精ではないのだ。

…となるとじゃあスプーキー・インプってなんなんだ?という疑問がわいてくる。

いや、まずは先に奉納だ。

ペチカちゃんが石を取って、刺繍したハンカチで包み、猫から買い取った青リボンでキュキュっとちょうちょ結びする。

「「あ」」

ハンカチは包まれた石を上にして、てるてる坊主のようにふわりと浮かび上がり、くるんっと一回転、綺麗なターン。ちょうどてるてるの頭の部分にパチパチと目が開いたかと思うと、ニタァ、と口が開いた。

「ヒェ」

そして、ス――ッ、と消えた。

……これか、スプーキー・インプの正体は。

「クリーチャーを産み出してしまいました…」

「にゃん…」

ププちゃんの中身にゃんよ~、と説得(?)して、ペチカちゃんにはどうにかクリーチャー誕生から頭を切り替えてもらった。大丈夫大丈夫、クリーチャー生んでない。

改めてハンカチ奉納について掲示板で調べてみたところ、ハンカチが旅立つことが希にあるのだという。てるてる坊主になるとか目が開くとかは書いてなくて、ただフワーッと浮かんでいってそのまま消えるらしい。

これは裁縫の神がハンカチを気に入った、と捉えられており、加護の度合いが上がるのだとか。

「たしかに加護はもらえましたけどぉ…!」

やはり複雑な心境らしい。

「あのハンカチ、実は『愛のハンカチ』用に図案がありまして。練習用なんだと思って、入手して刺してみたやつなんです。もしかしたらそれが原因かもしれません」

「あの石も怪しいにゃんね」

「はい。さっき互助会にもメールで聞いてみたんですけど、『愛の刺繍図案』を使った場合は必ず旅立つんだそうです。互助会ではみんな必ずやってるって。でもやっぱりてるてる坊主じゃなかったみたいですねえ」

「そこはこのクエスト独自のところなのかもしれないにゃんね。解決編的な…」

「なにも解決してないですぅ!!」

それはそう。

でもやっぱりあの石は猫、精霊関連だと思うんだよね。

シャイアネイラさんの中身も精霊だったなあ、て思ったら、精霊なら布くらい別に動いても不思議じゃない気がしてきたのだ。

人形遣いと精霊については文通でペチカちゃんにも話してあったが、その辺のことも伝えると、彼女は顎に手を当ててむうっと考え込んだ。

「刺繍ハンカチが精霊の…精霊そのものの装備?ということですかね? そういう機構になってれば動く、と。絨毯だって組み合わせれば空を飛ぶんですし。精霊が動かすための機構と考えれば、うん、まあ納得です」

ペチカちゃんにはルビーの紹介がてら『空飛ぶ絨毯』も見てもらっている。たしかに絨毯が材料と魔法の組み合わせで空を飛ぶなら、刺繍と精霊の組み合わせで動く布があってもおかしくはない、か?

スプーキー・インプが布をもらうと自力では脱げなくなるのも、外側にある刺繍が塞がれるから…とかそういうことなのかも? とはペチカちゃん。

人工的にスプーキー・インプが作れるなら、それを封じる手段は当然、あるだろうね。

「刺繍図案を読み解いたら別のレシピが出てきたりしそうにゃんね~。でも図案を作るのが何の分野になるのかも謎にゃん」

もしかして魔道工かな~と思いつつ、猫はあきらめた分野なので知らないフリにゃん…。