軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

56.小さなお洋服

さすがクランだけあって裁縫師互助会は人数が多い。今回参加してくれる人だけでも15人いる。

一緒に行動するにはさすがに多すぎるので、ひとまず行動を4班に分けてもらうことにした。

まず顔が割れてて街歩きに支障がある凄腕裁縫師たち4人はペチカちゃんと合流してもらい、『布を見つけて』クエストの経過を託した。

どうやら裁縫LVが必要らしいのと、戦闘は発生しないことを確認した上でのお任せだ。

かれらは全員着ぐるみ。「3びきの子ブタ合わせです!」とのことで子ブタ3匹とオオカミで旅立った。

メルヘンが止まらない。

次に、顔割れしてるわけじゃないけど「クエスト探しとか無理ですぅ!」と及び腰の5人はショーユラさんと合流してもらい、ぬいぐるみ作成班を結成。

これで4人5人の9人が旅立ち、残り6人。

「赤月夜だけどお暇だったにゃん?」

「完全初心者の子たちは、ルイネへ出掛けさせています。今ならきっと混雑していて、戦わずに精霊が手に入るチャンスでしょうから」

まだ顔も知られてない上、完全なる初心者なら戦闘を避けていても純生産とはバレずにイケるだろう、という判断だとか。

「もちろん、本人たちが行きたがったのもありますよ。実際、行きたいものは行ってます。一大イベントですものね」

「クラマスさんたちは行かないにゃ?」

「残念ながら、アルテザ以外で着ぐるみは大変目立つのです…」

着ぐるみ行動が目立たない街、アルテザよ…。

たしかにだんだんプレイヤーが着ぐるみなことにも慣れてきた。麻痺してきたというか。

でもやっぱり自由都市で着ぐるみ装備見たら目がいっちゃうと思う。そういうのあるよね。

「自意識過剰と言われるかもしれませんが、いわゆるヲチスレ的なものを立てられてしまったことも何度かありまして」

「大変にゃんねえ」

選ばれし猛者、さすが修羅の道だ…。

「ですのでアルテザ内で赤月夜イベントがあるかも!とお聞きして、一同一度はあきらめたものですから、ソワソワしてしまって…。お恥ずかしい」

そういって照れ笑いをするワンコ着ぐるみ。中身はクラマスさん――ヘレナさんだ。

はい、猫も着ぐるみPTと街を移動しています。

猫もある意味ほら、着ぐるみみたいなもの(?)じゃない? そうか?

「ブレーメン合わせですね!」と張りきったクランメンバーがロバとニワトリと犬の着ぐるみを出してきたのであっという間にブレーメンの音楽隊が結成された。着ぐるみの種類が豊富すぎる…!

「アルテザで着ぐるみが許されてるのは、NPCの反応もあるんですよ。アルテザには『獣の神』がいらっしゃるでしょう? そのせいか、どうも獣の顔をしているものに対して、住人感情がいいんです。獣の仮面でもいいそうですが」

「へえ~! そういうのもあるにゃんね!」

初手からレアキャラっぽいトミちゃんに会えたのも、猫が『獣の顔をしている』という条件を備えてたからなんだろうか。

というかそもそもトミちゃんの好感度が高いのも、獣面のミミパットだからなのかも?

「獣の神はガバなので、着ぐるみ着てると加護くれちゃうんすよ」

「そんな裏技が!?」

「仮面でもいいらしいっす」

ワハハ、と笑うロバの着ぐるみはサブマスその1のミソラさん。身長が高いのでルイよりでかい。

ちなみにフルネームはミソラ・アメンさんだ。そう、ショーユラ・アメンさんとは兄弟らしい。ラァメン兄弟…!

実は露店時にペンギンを助けにきた人でもあった。いやロバの着ぐるみ姿で「いやはや先日はどうも、うちの兄がご迷惑を」とか言われても誰かわからんのよ。あのときはネズミだったもん。

そのショーユラさんからは『なんか知らんけど馬車馬のようにぬいぐるみ作ってます』ってさっきPTチャットがきた。

なにがどうして馬車馬に??? なんかクエストがやってきたんかな?

「ショーユラさんたち大丈夫にゃ?」

「あいつ、ぬいぐるみ作成の腕は無駄にいいので任せて大丈夫すよ!」

「でもぬいぐるみって、スキルはないにゃん?」

「スキルはないすね。革30木10裁縫50とかそんな感じで、あとは『 一針入魂(いっしんにゅうこん) 』『立体縫製』『かわいいは正義』あたりがあると成功しやすいっす」

「『かわいいは正義』」

「フリルとかレースとか、あと可愛い系装備の成功率が上がるスキルっすね」

スキルの幅が予想外に豊富だ。単純な技術系スキルだけでも山ほどあるのに、そういうスキルまであるのかー…。

「ドレスとか縫ってると、気がつくとついてるのよ」

気がつくとスキルがついてる、て辺りがもうね。すでに常人には真似できない領域だと思われる。

そんな玄人さんはサブマスその3、小人族のオスシさんだ。なお名字はタベタイーノ。名前欄見るたびに空腹を刺激される面子で困る。

ちなみにタベタイーノ 一族(いちぞく) は各地に散らばってるらしいが、誰一人として今のところ知り合いではないそうな。

オスシさんはニワトリの着ぐるみを着ている。猫と身長は同じくらいだが、デフォルメされたまんまるのニワトリになってるので、とても横に大きい。歩きにくくないんだろうか?

「着ぐるみは上着装備なので、判定ガバなんす」

「マントかすっても破れない法則」

「それそれ」

上着装備はマントや翼などでかくてヒラヒラしたものが多いからか、ダメージ判定の的にはならないし、たとえ明らかにかすったり直撃してようと破れることもない、という特徴がある。

しかし本体(装備者)が受けたダメージで耐久が溶けて弾け飛んだりするので、一部装備品は「なんでそこが壊れるんだよ!?」という謎の挙動に見えることがあるらしい。ゲームのご都合。

そんなわけで猫と行動してるのはヘレナさん、ミソラさん、オスシさんの3人。

こちらは特に織物や紡績に強い3人だそうで、反物の材料が拾えたらいいな、てことで小人商店街へ向かっているところだ。

猫とルイ(+レト)は、ペチカちゃんとピピちゃん、ショーユラさんでPTを組んでいるので、互助会とはアライアンスで繋がってる状態。

硝子連合と組んでたときはアライアンスチャットが終始ドンチャカしていたんだけど、こっちはスンッと静かなのでその差がちょっと面白い。

ショーユラさんいわく『普段引きこもりなので優しく見守ってあげてください!』とのこと。

伝達が心配なのは3びきの子ブタwithオオカミが向かった『布を見つけて』の続編クエストくらいだが、あれはペチカちゃんいわく『完全に裁縫師向けでした!』とのことなので問題ないだろう。

そんなアライアンスチャットから初めての報告が来た。

『無事にオススメもらえましたぁ!』

ペチカちゃんである。

『私はぬいぐるみから更新されて『小さなお洋服がオススメ!』になりました』

『進んだみたいにゃんね!』

ペチカちゃんはクエストを託した後、サブマスその2率いる3人と合流。まず裁縫の神からオススメ加護をもらえるか試そうということで、神殿へ向かっていたところだった。

「ついでに雨にも 遭(あ) えたらいいですね!」とか言っていたので、ペチカちゃんは人が増えると強気になるタイプ。

さておき、無事に加護がもらえたようでなによりだ。

ぬいぐるみが出来上がってきたことで、今度はそのお洋服を要求されている、のかな?

『私以外も『小さなお洋服』みたいです。反物じゃないのは、もしかして裁縫師とそれ以外でルートが違うんですかね?』

『あり得るにゃんね~。もしかしたら反物探しのあとに、NPCにぬいぐるみやお洋服を作ってもらうイベントが入ってたのかもしれないにゃん?』

『そうなると反物で必要って、相当数がいるってことですよね?』

『馬車馬のように作ってるってそのことだったのかもしれないにゃんね』

肝心のぬいぐるみ作成班ショーユラさんたちは、イベントフィールドに入っちゃったみたいでバツ印だ。ううん、不便。

ペチカちゃん以外の裁縫師さんたちは、お洋服の細かなデザインまでオススメいただいたらしく(そんなことが!?)、なんとレシピを授かったという。

『それって神託にゃん??』

『神託……なんですかねえ??』

そのレシピは『???のレシピ』となってるらしいのだけど、デザイン画によると the 小人の服、であるらしい。

ざっと見たところ複合レシピであるらしく、『??木のボタン』『??革のベルト』『??染色液』など裁縫外のレシピもあれこれ書いてあるそうだ。

裁縫師互助会は、メインは裁縫師ばかりだが革工を嗜む人も少数ながらいる。しかし問題はある。

『革工の方はレシピの要求LVより低いので成功率が低く、素材が多く必要かも、って。素材も、どうもクエスト素材みたいです。見たことないそうなので…。それから、木工師も調薬師も、互助会にはいないんだそうです』

アライアンスチャットなのにペチカちゃんが意見をまとめて伝えてくれているっぽくて、心のなかでちょっと応援してしまう。

『猫も木工と調薬は持ってないにゃんね~』

『私も両方持ってないんですよねえ。それに、どうもLV30相当のレシピっぽくて、素人じゃ歯が立たなそうです』

「にゃあ、かなり条件が厳しいにゃん」

革工については、ショーユラさんが戻ってきたらなんとかなるかもしれない。革工持ってるっていってたもんね。いや、でも彼に負担が集中するのはよろしくないか。

革工調薬木工LV30、それから素材。

素材の方は、オードリーさんが合流したらなんとかなるかもしれない。護衛をしてもらって、猫とペチカちゃんも合わせて取りに行くのが効率いいと思う。

問題は、生産スキルだ。

ぱっと浮かんだ人々はいたけれど、はたして呼びつけてしまっていいものだろうか?

うーん、いや、悩んでたって解決しないもんね。メールだけは投げてみるか!

『にゃん~、来てくれるかはわからないけど、猫のフレに声をかけてみてもいいにゃん?』

『歓迎ですよ! 互助会の方も、着ぐるみで会う分には問題ないそうです』

着ぐるみ万能説。

では早速メールぽーい!

もし無理そうなら、初めての野良募集デビューだな。

野良猫拾ってくださいにゃん~。