軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54.愛憎渦巻く展開

あれこれ相談させてもらって、結局絨毯はオーダーメイドだが露店販売と同じく53万、のところをリピーター割引(?)、情報提供料(純魔需要と星魔法の入手法の分)などで引かれ、45万での購入となった。

「売るときはアルテザ以外での購入なら60万で適正価格ですね~。今後化けるとまた変わってきますが、これより安く売ることはありませんので!」

なるほど売却すると15万の儲け。なかなかの利益だが、ロマン羽根1枚より安い、と思ってしまうとスンッとなる。

いやいや、それだけロマン羽根が破格なのだ、あれに慣れてはダメだぞ、猫。

あれこれ話しているうちにルビーたちの絨毯も魔法が切れて落ちた。ゆっくり着地で、転がり落ちることもなく安心だ。

特に安全装置などはいれてないそうだが、おそらく『軸転換』のせいで縦落下が横に変換され、変換しきれない分の落下で最終的には着地するのでは、とのことだった。

うん…、よくわからんがなんかそんな感じ!

「約15分ですか。十分実用的ですね!」

「これなら安心にゃん~!」

そして15分も経てばペチカちゃんのイベントも終わり、メールが入った。

『クリアできました! 師匠さんがスプーキー・インプと禁断の恋に落ちて監禁していたのを略奪愛した弟子というトンデモ展開でもう!びっくりしました! 道理で二人ともヤンデレの 気(ケ) を感じると思ったんですよね!』

なんて???

『イベントおつかれさまにゃん~!』としかとりあえず言葉がない。

うん、なんて?

『それで弟子に保護?というか再び監禁されてたスプーキー・インプを救出しようと、スプーキー・インプたちが工房周りに出没したり、出入りしてる私と接触しようとしていた…というのが、私が会いやすかった真相みたいです。これから監禁されてたインプちゃんの回復を待って、里?に帰すクエストが始まるみたいです。この分だと、明日の夜になりそうですね!』

さ、里?

いや、スプーキー・インプは異界の扉から来てるって話だったっけ。

『てことは遺跡の布納品クエストと重なるにゃん?』

『はい、重なりそうです。後は布をどうするかなんですよねえ……あ、布は騒動の最中に切られちゃって使い物にならないんです。なので新しいのを手に入れないと』

『にゃん?布購入出来るようにはならなかったにゃ?』

工房主の機嫌を損ねちゃってダメだったんかな??

『実は、工房が燃えてしまってひどい有り様で……無理心中エンドかと思ってもう! ハラハラしましたよ! 私、水魔法師でよかった! そんなわけで布は残ってないみたいなんです』

「にゃあ…」

ペチカちゃんが最初に言ってた「布を燃やして俺も(略)」をしてしまったのか。

ペチカちゃんのセンサーの精度がすごい。

『当てもないし、毛皮も私は『革工』持っていないので在庫がなくて…』

『あ、そうだ、ぬいぐるみを作ってくれる職人さんを確保したにゃん。それで、レシピがクエスト独自のものかどうかの確認がしたいにゃん~』

『わあ、さすがです! レシピはオーソドックスなぬいぐるみのものだと思います。『森の小人さん』ってぬいぐるみです』

猫、それクエストレシピだと思う。

「『森の小人さん』ってぬいぐるみのレシピらしいにゃん」

「ああ! あれですか、初級レシピのくせに無駄に工程が多くて難しいやつ! 持ってますよ~」

クエストレシピじゃなかった。

紛らわしいにゃん…!

『これ、他のぬいぐるみに比べると可動箇所がやたらと多くて、その分手間がかかるんですよ。だからレシピ番号に騙されて頭から作ろうとすると挫折させられるクソレシピとして有名です。低LV初心者さんならぬいぐるみの第一歩は『にぎにぎクマさん』がおすすめですね!』

『なるほど、そんな罠が…!』

ペチカちゃんにことわってクマ氏にPT加入してもらった。こうすると話がPT会話で済むからね。

そこでようやく知るクマ氏の名はショーユラ・アメン。

醤油ラァメン…!

いろいろややこしいわ。

『それにしても、『森の小人』ですか…』

ペンギン改めクマ改めショーユラさんが腕を組んで、うーんと唸り声をあげる。

『小人っていえば、仕事を手伝ってくれる善き隣人の話がありますよね』

『ありますね、小人の靴屋みたいな話。今回は、それが関係してたんですよ!』

なんでも深夜にそっと手伝ってくれる不思議な存在、というのがアルテザの職人には伝わっているそうだ。

彼らへのお礼はクッキーとミルク。小さなテーブルを用意してあげると特に喜ぶ、なんていわれているらしい。

それを踏まえて、ペチカちゃんの踏んだ『布を見つけて』の概要はこうだ。

あるときギリギリの納期で仕事中、うっかりうたた寝をしてしまった工房主が仕上がった布に驚き、半信半疑にお礼のクッキーとミルクを用意して、妖精と出会う。

その仕事振りに驚き、また自分よりも優れた技巧を持っているのではと嫉妬した工房主は、スプーキー・インプを捕まえる方法――『愛のハンカチ』を用意して、妖精を閉じ込めて籠に入れてしまった。

そして夜な夜なインプを口説いて?いたそうな。俺の元から離れないのであれば籠から出してやるぞ、的な。……たしかにヤンデレだぁ!

それを家政婦のごとく見てしまった弟子は、工房主の腕そのものに疑問を持ってしまう。これまで工房主の技術に惚れ込んできたけど、もしかしてそれは彼ではなく妖精が作っていたのでは…?

そして弟子は師匠の腕を確かめるという名目で閉じ込められていた妖精を盗んでしまう。

これが背景ストーリーで、ペチカちゃんは心配していたスプーキー・インプと結託して妖精を救いだそう!ということで籠の鍵を探したり、工房主や弟子の目を盗んで鍵を開けて、監禁されてたスプーキー・インプを助け出したりしたんだそうだ。そして見つかって修羅場!あわや大惨事!みたいな。

…背景ストーリーに目を瞑ればわりと普通のシティクエスト、かも?

『小人の靴屋に羽衣伝説を足したみたいな印象でしたね!』

『羽衣伝説ってことは、スプーキー・インプは布がなくなると帰れなくなっちゃうにゃん??』

『その辺は逆で、どちらかというと布をもらっちゃうと脱げなくなる?みたいです。だから監禁されちゃったみたいで』

んん?

じゃあ雨の日にうろうろしてたっていうスプーキー・インプたちは今どうなってるんだろ?

『彼らは先に里へ帰ってます。里へ帰ると脱げるっぽいですよ! 何人かは残って、ププちゃん……あ、監禁されてた子ですね、この子の看病をしてます』

お名前つけてる!

このネーミングセンスは間違いなくペチカちゃんの犯行。わかりやすくてよろしい。

スプーキー・インプたちは話せないし、ジェスチャーも布だから限りがある。意志疎通は難しいのだが、そこは『魔物の心』を持つペチカちゃん、ときどき出るフキダシ頼りで重要そうなとこはなんとかなってるらしい。

『青い花の絵文字がよく出るんですけど、これがどうもスプちゃんたちの里みたいです』

『青い花。ヴィオスタリアですかね、ネモスフィラですかね? どっちもよく咲く観光名所がありますよ。もう少し遅い時期だったら、ヒュドラントスですが、ちと早いかな?』

ヴィオスタリアは藤のように咲く菫、ネモスフィラは木々に群生する青い星形の花、ヒュドラントスは水の上で咲く紫陽花。実在の植物をモデルにしてるが、ちょっとだけ違う、というやつ。

どれも時期は外れているが、そういえば藤っぽい花は咲いてるのを見たな。

アルテザは周囲が森な分、そういった季節系花畑をぐるっとまわるハイキングコースの観光案内なんかも結構充実している。

咲く季節が違う? いやいや、実在の植物とは関係ないファンタジー植物であるからして。

それにゲームは基本、季節先取りだし、場所さえちょっと違えば、紫陽花と藤が一緒に咲いても特におかしな話ではないのである。よくあるよくある。

さておき、その辺のハイキングコースを調べれば、スプーキー・インプの里はわかりそうかな?

しかし遺跡の納品クエストと、ププちゃんを里へ帰すイベントが重なってるのはよろしくない。

メエメエ様の遺跡と同じところから帰れたらいいんだけど、そういうことになってたりはしないだろうか。ほら、地下遺跡で繋がってたりしてさ。

『それにしても、なんだか考えさせられるイベントですねえ』

『にゃん~?』

『アルテザってほら、小人のマーク多いじゃないですか。昔は小人と暮らしてたって話もよく聞きまして。もしそれがスプーキー・インプなんだとしたら、『森の小人』って、布じゃなくてぬいぐるみに住まわせてた……っていう伏線だったりするのかな、と』

『わあ、体を作ってあげてたわけですね! ありそうです』

ペチカちゃんもしみじみとうなずいている。

『工房主さん、スプーキー・インプの才能に惚れ込んで嫉妬して、感情がとっ散らかった結果、これは恋だと勘違いして大暴走してたんですよね。だから、もしスプーキー・インプが表に出てる小人さんだったとしたら、昔はそういう人、もっといたんじゃないでしょうか。それで閉じ込めたり、逆に追い出す人が増えてきて……小人さんはいなくなっちゃった……みたいな、妄想なんですけどね!』

スプーキー・インプに恋って!?と思ったけどそういう理由なら納得できなくはない………、かも? いや無理か?

しかし『布を見つけて』が、こういう感じのことが起きて、次第に小人はいなくなっちゃったよ、というのを示すイベントだった、というのはまあ、わかる気はする。

『『森の小人』のレシピとかも、もしかしてクエストへのヒントだったりしたんですかねえ?』

もっと前からイベント埋まってた…?とクマさんは思案顔だ。

『でもそう考えると『プライドを捨てろ!』とかちょっと良心の呵責を抱きますね。あれはなんだったんだろ?』

『そこはまだ謎にゃんねえ』

スプーキー・インプにもいろいろいるんだろうか?

『小人活動が逆に工房主をダメにしてしまうパターンもある、て話なんじゃないでしょうか?』

『おおん、尽くし系小人さん…』

『にゃん~、共存共栄が難しい社会にゃんね』

用法用量を守って正しくお使いください?

知らんうちに手伝ってくれる小人さん、実際にいたら実力勘違いする人だって出てきちゃうだろうし、いいことばかりとは限らないってことなのかね?