軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

48.メエメエ様

そのシーツお化けはペチカちゃんが怖くて固まってる内に、角を曲がって消えていったそうだ。

ペチカちゃんとしてはもう関わらないぞ!と思い、『メエメエ様』も『消える布』の捜索も諦めるつもりだったらしい。

「…手遅れでした」

そこまで悲壮な顔せんでも。

ペチカちゃんがいつものように冒険者ギルドでお手伝い系の依頼を受けようとすると、指名依頼という形で、以前お世話になった工房からの依頼が飛び込んできたらしい。

「そのときは気が回らなくて、一大事だ!て工房に向かいました。そうしたら『大切な布を盗まれてしまった、探してほしい』ていう依頼で……もうイヤな予感しかしなくて」

それでもペチカちゃんも、頑張って捜索してみたそうだ。しかし探せば探すほどメエメエ様に近づいていく。雨が降る度にシーツお化けが現れる。

もう、ペチカちゃんは雨ゾーンが怖くてたまらないまで来てしまっているそうな。

「雨ゾーンって、入る瞬間小さくゴロゴロ…て雷の音が聞こえたり、ポタ、ポタって水音が聞こえたりするんですけど、もう、それがすでにホラーなんですよう!」

演出される怖さってたしかにある。猫もチュートリアルのスニーキングかくれんぼ、めっちゃ怖かったもん。VRはホラーと相性がいい、これはガチ。

「そういえば、日付指定っていうのはなんにゃん?」

「ピースが足りなくて流れがいまいちわかってないんですけど、実はもうひとつ、冒険者ギルドから指名依頼が入ったんです」

新しい手伝いクエストの指名依頼。

それは森にある遺跡へ届け物?をする依頼だったそう。ただし、依頼人は不明。なぜか時間帯指定が夜。

更に盗まれた布は、元々はこの届け物として納品される予定だったという。

「にゃん?? 遺跡にゃん?」

「はい。遺跡っていっても、朽ち果てた柱が残ってるだけらしいんですけどね」

その柱の根本に布を届けるのが依頼だそうだ。しかし肝心の布は見つかっていない。見つかるのがいちばんだけど、見つからなかったとしても布はお届けしないといけないから、代替品の布が必要になるそうだ。

「最初の『布を見つけて』の依頼主は、代替品の布を用意してくれそうにないので、一応自前で用意した方がいいのかと考えています…」

なんでもプライドの高い、自分以外の布が選ばれるのは許せない!という織物職人なのだそうだ。おおう、敵が多そう……。

「布はなんでもいいにゃん?」

「ええと…、遺跡へ届ける方は特に指定がないですね。でも、工房の方でなくなった布は薄くて大判の白い布、らしいです」

「届けるアイテムの指定がないのも変な話にゃんね。それに遺跡に布を届けるっていうのも謎の依頼にゃん」

「そうなんですよ! 怪しすぎて受けたくなかったんですけど、ギルドで『この依頼は信頼できる、真面目なものに任せることにしている』とかいわれると、やっぱり断りづらくて…」

「真面目さが仇になるなんて…!」などと悔しがっているが、これはそういう一連のクエストの流れだ、ペチカちゃん。

もちろんペチカちゃんもそこはわかっているんだろうけど、なんか悔しいのだろう。気持ちはわからなくもない。

「遺跡に繋がるような話はなかったにゃん?」

「なかったと思います。遺跡の話自体、アルテザでは初耳です。ただこの日は 赤月夜(あかづきよ) で精霊に守られているから、夜でも森は安全なんだそうです。だから行って、遺跡の柱の下に布を置いて、戻ってくるだけだって」

「うーん、なんだか度胸試しみたいにゃん」

「ですよね、ですよね? なんか肝試しっぽくて!怖がらせられるやつは苦手なんですよ~!」

赤月夜だし、もしかしたら精霊関連なのではと思ったものの、名所スレの精霊スポットに当てはまりそうな場所もなく、かといって違う可能性も捨てきれない。

ひとりで踏み込む勇気が出なくて、困っていたら猫が来たので、藁にも縋る思いだったとか。

「にゃあ、猫も赤月夜の予定は未定だったし、猫の手貸しますにゃん」

「ありがとうございますううう!」

フーテンさんから小人族の里コロップへ誘われてはいたが、コロップは学園都市の方にある里だ。必然的に対象LVは高め、45~ということで、精霊スポットはなるべく廃都方面で見つけたかった。猫にとっても渡りに船だ。

しかしイベント日がすでに決まっている以上、出来ることといったら情報収集くらい。それもペチカちゃんはもう調べ尽くした感があり、行き詰まっているそう。

「結局、布はまだ出てきてませんし、下手に出歩くと、お化けに会っちゃいますし…!」

わあっと顔を覆いつつも、キコキコとブランコを漕いでくれるペチカちゃん。器用。

うーん…。

メエメエ様が大概、謎だなあ。

シーツお化けがメエメエ様で合ってるのかすらわからない。違う気もする。しかし通り雨が来ると現れるシーツお化けはたしかにそれっぽい気もするので、ひとまずメエメエ様と仮定しよう。

そして遺跡とメエメエ様が『布』で繋がっていると仮定して、考えられるルートはふたつ。

まずひとつはメエメエ様が新しい布を所望している説。

プレイヤーは布を差し出し、メエメエ様は布をもらってハッピーエンド、シーツお化けは街を出歩かなくなる。

もうひとつは、メエメエ様が布で増殖するタイプ(?)で、プレイヤーが布を媒介にメエメエ様をもらえる説。

プレイヤー自身が布を用意しないといけないかも、てあたりからの推理。

指定日が月夜だからメエメエ様も精霊、と仮定すると、石だけではなく布にも宿せることになり、可能性が広がりまくりで困惑しちゃう。

でもまあ、装備だしなあ。そういうのももしかしたらあるかもしれない。

しかし、精霊は石に宿すって話は、神さまから聞いてるし、たしかな情報だ。……いや「それ以外ないとは言ってない」てパターンもある?

あ。

「神殿は行ったにゃ?」

「…あ!」

精霊関連なら、神さまが関わってる可能性は大きい。

アルテザの神殿は、各種生産の神の合同祭祀場らしい。

ペチカちゃんは来たときに一通り巡ったきりだというので、まずはそちらへ行ってみることに。

「あとは布探しはひとまずあきらめて、別途布を手に入れる方がいいと思うにゃ」

「はい…。ちなみにそれは何故でしょう?」

「ペチカにゃんから聞く職人さんの態度から考えると、盗まれた可能性が高い気がするにゃん。犯人捜しはめんどくさいにゃん~」

「それ私も考えたんですよね~。ていうかお弟子さんにすんごい怪しい人がいるんですけど、単純に師弟関係拗れてるみたいなんで、お節介すべきなのかどうかで悩んでてですね」

「しないにゃん?」

犯人ぽいのがわかってるなら突っ込んじゃったらいいのでは?

「お弟子さんも過激派なので、下手に突っ込むと『布を燃やして私もしぬ!』とか言い出しそうで。観賞用人間関係というか、見守る分には楽しいんですけど、関わりたくない感じなんですよ…!」

「にゃん~…」

たしかにそれは関わりたくない。猫はみるのも遠慮したい感じだけど、ペチカちゃん、そういうの好きね?

ドラマチックといえばまあ、そうなのか?

「布、買ったものでいいんですかね?」

「手に入るイベントもありそうだけど、マケボで見たら案外あったりしないにゃ?」

「ありそうですね~、でもイベント必需品ならお高そうですし、手に入らなかったら検討してみます!」

「猫も 伝(ツテ) を当たってみるにゃん~」

白い布の供給元なら、染色工房は詳しいのではなかろうか。ナザールさんとこの工房へいってみたい。

「あとは、本来は全然月夜と関係ないアルテザのシティクエストと、月夜のクエストが合体しちゃってる可能性もあるにゃん」

「なる……ほど?? 布捜しと遺跡は本当は別クエストってことですか?」

「可能性にゃん。精霊と月夜関連は第三エディションからだと思うけど、布捜しは前からあるとか、そういうパターンもあるにゃ? その場合はネタバレが見れるにゃん」

「ああ! 行き詰まってるクエストなら、攻略見るのも手ですもんね!」

ただ、ペチカちゃんはすでに1週間以上アルテザにいる。それで行き詰まってるなら、複合クエストになってる可能性も高いと猫は考えている。

本来はさっさと片付くはずのクエストが、月夜と複合したことでこんがらがってる、なんてこともありそうだ。

隠者の村で 黒月夜(くろづきよ) と 鏡月夜(かがみづきよ) が合体したように、例えば月夜へのヒントになるはずのイベントが、月夜にくっついちゃうこともあるかもしれないじゃない?

「とりあえず、『布を見つけて』の師弟を動かす勇気は私にはないんで、まず攻略を探してみることにします。アルテザのミニクエストについて、調べてみますね」

「ネタバレ避けるなら猫が調べるにゃんよ?」

「縛りプレイするほど避けたいわけじゃないんで、全然大丈夫です!」

うむ、さすがエンジョイ勢。柔軟なことはいいことだ。

てくてくと歩いて神殿へ移動。ルイに乗らないと日が暮れても着きそうにないので、いったんルビーは牧場へ帰還させた。準備が整ったら喚ぶから待っててくれ…。

そして数時間ぶりのルイへの騎乗。快適!

うーん、やっぱり従魔のコンパクトな移動も考えないとな。別に牧場に帰したところで好感度は下がらないので、街では帰すのでもいいんだけども。召喚獣じゃないから共鳴値もないし。

でもやっぱり、1匹だけ帰すのはかわいそうだな~とも思っちゃうんだよね。

アルテザの神殿は、なんか神社みたいな作りだった。社殿の前に出店?が出ていて、お守りなどをいろいろ売っている。お守りってことはアクセサリーだろうから、アルテザならではの手工芸品の装飾品がたくさんあるんだろうな。

売り子さんが着ぐるみだったり、動物の仮面をつけているのが面白い。

…ううう、今は近寄らんとこ…!

神殿では一通りお祈りして回ったが、残念ながら加護は得られなかった。アルテザは生産の神が多い。持ってないし、持ってても使ってない(伐採とか)からなあ。

伐採の担当と思われる『森林の神』はLV上がったらまたお祈りにこないと。

アルテザにある神像は、ほとんど自由都市にもある。ないのはこの『森林の神』と、あともうひとつ『獣の神』だけだ。

そしてここが本尊なのが、糸巻きを持つ『裁縫の神』、それからポユズさんの信仰神である『狩猟神』だったはず。

『獣の神』は獣系種族の加護、のはずなのだが、猫はもらえなかった。……忘れてたけど、風猫族は分類としては妖精族だ。あれ、て思っちゃったけど、しかたなし。

あと、猫も狩人だから『狩猟神』から加護をもらえるだろうと思ったらこれももらえなかった。こちらはおそらく最低討伐数とかが足りてないんだろう。むう。

特に何も加護をもらえなかったので、なんかちょっと肩透かしで寂しい。まあそうそううまくはいかないな!

ペチカちゃんは『裁縫の神』から以前も加護をもらっていたが、新たに『ぬいぐるみがオススメ!』というお言葉をもらったらしい。

ぬ、ぬいぐるみがオススメ???

「これ、クエストのヒントなんですかね? それともただのオススメ?」

「う、うーん? クエストのヒントだとして、何のぬいぐるみを作るのかとか、これだけじゃまだ謎が多いにゃんね?」

「ですよねえ。『裁縫の神』についても、ちょっと掲示板調べてみます」

もしただのオススメ生産品なんだとしたら、それはそれで面白いんだが。

神さまの話し方もいろいろなんだなあ。