軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37.テイマーオススメ従魔講座

「まあジェリは雑草でも食えるから、マイルームの庭に放り込んでおけばオッケーっていう超省エネ仕様だけどね」

「その代わり、といってはなんですが、ジェリは好物が個体によって違うので、データはあるんですけど結局総当たりするしかないんですよ。進化が大変なんで、そこだけ難点ですね!」

そういえばそんな話も以前聞いたっけ。飼いやすいけど、好感度上げるにはなかなか大変な魔物でもあるわけだ、ジェリ。

なおフルクもなかなかお高い肉を要求するので、好物で考えると好感度の上がりは鈍い方なのだとか。

「上がりにくいけど、滅多なことでは好感度が下がりません。それからフルクは好感度がそれほど高くなくても種族として忠誠心が高めなので、よほど変な命令をしない限りは命令違反をまずしない、扱いやすさも特徴です」

「その辺はジェリもね! フルクは『忠誠!』て感じだけど、ジェリは『疑うことを知らない』て感じでちょいちょい違うけど」

「どっちも命令ミスっちゃったときの心抉られる感じがやべえんですよ…!」

ふむふむ、どっちもなかなか重い、と。

「なのでその飼えなかったフルクちゃん、たぶん『迷子の犬狼』のクエストだと思うんですけど、もしかするとまだ好感度が高いままかもしれません。風猫族さんですし…、迎えにいってあげると、きっと仲間になってくれます!」

「う、うん…! 後で行ってみるよ!」

フルクが仲間になるクエストがあるのか。タイトル的にたぶん、都市内で拾えるやつかな?

猫が出会えてないってことは、冒険者ギルドの依頼経由かもしれんな。今度、依頼一覧ちゃんとチェックしてみよ。

便乗して猫も質問しちゃお。

「飛ぶ鳥の魔法アタッカーを仲間にしたいんだけど、オススメはあるにゃん?」

「飛ぶ鳥なら、まずはピジョネですね。ワンチャン、レア個体でヒーラーの可能性があります。その辺狙わないのであれば、姿の好みでダークロウにする人も多いです」

ピジョネは鳩、ダークロウはカラスかな?

ダークロウは羽根にお世話になったことがあります。すぐ壊れたけど…。

「もし飛ばなくてもいいのであれば、ドゥドゥーもオススメです。足は遅いし、命令は聞かないしめちゃくちゃ扱いづらいんですが、魔法タイミングは的確ですし、なにより『魔法のタマゴ』は大きいです」

ドゥドゥーと『魔法のタマゴ』はさっき書庫で読んできたやつ。

ちなみに平原地形ならどこにでもいる鳥らしく、姿はさまざまあるらしい。

見たことのない鳥を捕まえてみたらドゥドゥーだった、というのもあるあるらしく、平原の歩く鳥はすべてドゥドゥーと思ってもいいのでは、とのこと。言い切れないのは追加があるかもしれないから。それはそう。

ちなみに適切に手入れをすれば輝くのが従魔であるからして、プレイヤー主催のドゥドゥー品評会なんかもあるそうな。

フルク・ラン(わんこ運動会)とか、ニャッコ・ショー(お猫さまを眺める会)、コボルトかわいい選手権(?)があるのは掲示板で見て知ってたけど、ドゥドゥーまであったのか…。

飼い主の沼が深いゾーン、こんなところにも。

猫にドゥドゥーは縁遠そうな話だし、まずはピジョネを目指そうかな。ヒーラーはレトがいるけど、そうそうレア個体など引くことはあるまい。

ちなみにピジョネは鳩より一回り大きいがほぼ鳩であってるらしい。飛ぶのが速いので、手紙便用に運送ギルドでも多数飼われているのだとか。

気になる捕獲方法はといえば、ハッピー豆が好きなので、平原で撒いて待ってると現れるらしい。

そんな雑なことでいいの!?

「野生のピジョネは緑から青っぽいグレーで、天然の『ミミック』を持つ魔法アタッカーなんですよ。これに森で会うとかなり手強いので、平原でおびき寄せるのが安全にテイムする方法なんです」

「なるほど、ためになるにゃん~」

たしかに森で 遭(あ) って戦闘しつつテイムって感じの鳥ではなさそうだ。知らなかったらあきらめてただろう。ありがたや~。

あとはテイマーギルドでごく稀に入荷する『魔物の卵』ガチャはほぼピジョネ、とのこと。

ギルド公式卵ガチャなんてあるんだ!? 稀に入荷なので、いつもあるとは限らないらしい。

「いろいろあるにゃんね~」

「奥が深いんですよねー」

「沼っすわ~」

うんうん、とうなずきあう野次馬たち。

ハッピー豆は、よく見かける定番のお菓子屋台で使われている。豆菓子なんだけど、豆というわりになぜかポップコーン。

ゲーム内では『ハッピーポップ』の名で流通し、いろいろなフレーバーがある。

自由都市も、某ランドやシーみたいに区画によっていろいろなフレーバーのハッピーポップがあるんだよ。『自由都市観光スレ』のオススメポイントのひとつだ。いつか全制覇してみたい。

生の(?)豆はまだ見たことないけど、自由都市でもこれだけ見るのだから育てられるんじゃないかな?

栽培できるならピジョネの飼育も楽そうだ。農業ギルドで見てみよっと。

ケータくんも慣れてきたようであれこれ質問して、みんなでお茶を飲むと『今は心を癒すとき』というクエストのクリア通知がポンと出た。

クリア報酬は『カフェチケット:ニャッコの寝床』3枚。この喫茶店で使えるようだ。猫にはとても嬉しい。

ホクホクしていたら、野次馬テイマーさんたちも便乗でクエストクリア出来たようでホクホクしていた。

紅茶はほんの少しだが、MP系のバフが入る。猫には味わうだけではなくバフ飯としても美味しいわけだ。

テイクアウトも、茶葉の購入も出来るようなので通ってしまいそう。

喫茶『ニャッコの寝床』の店主お姉さんにお支払とお礼をして喫茶店を後にした。ちなみに野次馬さんたちにクエストのお礼に奢ると言われたのでお言葉に甘えてしまった。

俺が出す大戦が始まりそうだったけど、さりげなく輪から抜けたピンク髪お姉さんがススっと払っていた。出来る…!

「ごちそうさまにゃん~」

「にゃん…! わあ、あの、実は灰色猫さんにお願いがあってェ…!」

「にゃん?」

モジモジするお姉さんに首をかしげる。

なんだろ、アクションのリクエスト?

猫はラララ以外にはお祈りアクションくらいしかまだ持ってないから、ご期待に添えそうにないのだが。

「すぅ~…、…ふ、踏んでもらえませんか!!!」

「嫌にゃん」

中身入りの猫に猫ハラを希望するとは、なかなか猛者だなこのお姉さん。

猫、普通の猫より重いし、なによりブーツ履いてるからダメです。いや履いてなかったらいいかというと、それも審議だけど。……否決!

猫の隣にいたケータくんも両手をワタワタして、どうやって断ろうか考えているようだったが、お姉さんはふっと首を振った。

「いや、ケータくんはいいのよ」

「えっ」

なぜかショックを受けるケータくん。もしかして踏みたかった…わけないな!

「風猫族らしい風猫族ちゃんに踏んでもらうのが夢なんだよォ! でもそんなことしたら風猫族ちゃんに嫌われちゃうよォ!」

それはそう。

風猫族はあれで、相手側からの身体接触が嫌いだ。本人からくっついてくるのを待つのみ! の、まさにお猫さまなのである。

「背中に『←順路』って書いて風猫族の前に倒れる計画はどうなったんですか」

「人としての倫理観が邪魔をして決行出来ませんでした…ッ!」

…倫理が機能していてなによりである。

メガネっ 娘(こ) さんとピンク髪さんは仲良しっぽいな。

「か、風猫族らしさ、って…」

「風猫族は、ニャンって言ってほしいィ!!」

ピンク髪さんの叫び!

やはり風猫族はニャンがセットなのか。

「言わない風猫族もいるでしょうが。強要はいけません!」

言わないのもいるらしい。

「でもため息とか掛け声はニャンだもん!」

「あれも可愛いですよね」

「ねーー!」

キャッキャと盛り上がる女子ふたり。

取り残される風猫族ふたり。

「にゃん?」

「……そんな口調で恥ずかしくねーのかよ」

ムッと猫を見てくるけど、なんていうか顔がハチワレ猫なので全然イライラしないんだなあ! 不思議だ。

やはり猫パワー。猫は全てを解決する。

「全然恥ずかしくないにゃんよ~。猫のポテンシャルが最大限にいかされるパフォーマンスにゃん? 」

猫もときどきふと我に返る瞬間がなくもないけど、でも猫だもの。周りから見たら猫なんだから、それはもう猫じゃない?

猫はミーさんを見て、風猫族は可愛いことを再認識したのだ。いや、キャラ作成したときから可愛いと思ってたけども!

「で、でもバカみてえじゃんか」

フハハこやつめナチュラル失礼さんだな。

「あるものを使わないなんてそれこそバカのすることにゃん~、もったいないにゃんね?」

にゃふん、と笑ってピンク髪お姉さんへ猫は近づく。

猫は気づいているのだ。

ケータくんが、ちょっとこのピンク髪お姉さんにときめいちゃってることを…!

なにせいきなり距離近かったからねお姉さん。青少年にあの距離感はいけない。お話し中はお姉さんの倫理働いてなかった。

「お姉さんにはお世話になったから、踏むのは無理でも特別にお礼をするにゃん!」

「えっあっ、あっあっあっ、なに? なんです?」

限界オタクのようにはわわしているお姉さんにちょっと引きつつ、猫は両手をあげる。

「肉球ハイタッチにゃん!」

「ニャンーーーーーーーー!!!!!!」

お姉さんは顔を覆って天を仰いだ後、「待って」と何度も深呼吸を繰り返した後、ちょん、とホントにそっとハイタッチした。控えめ!

「楽園はここにあった……え、あったか……やわらか……ぷにぃ……」

両手を胸に抱きつつ、ぶつぶつ言いながら猫をガン見するお姉さんは正直怖かった。

おう…、これは諸刃の剣かもしれない。

しかし外から見ていたケータくんには、お姉さんとハイタッチ決めた猫は羨ましい存在だったのだろう。

ぐっと拳を握ると、ケータくんはずんずんと猫とお姉さんの方へ歩いてきた。そして。

「に、ニャン……………」

蚊の鳴くような声でささやき。

「…………なんて言えるわけねーーだろ!! くそ!!」

叫んで走り去っていった。ありゃ。

しかし途中で振り返り、「ありがとう、世話になった!!」と叫ぶのは忘れない。いい子か。

「ツンデレ猫ちゃん……かわよ…!」

無事お姉さんの心を射止めていたのだが、そのときにはもうケータくんの姿はなかったのだった…。

猫はピンクお姉さんとメガネっ娘さんとフレ登録をした。

恥ずかしがらなければケータくんもフレだったのにな~。いや~残念だな~~。

まあいいか、それもまた青春である!