軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36.風猫族の『魅力』

「風猫族の魅力は文字通りの『魅力』にあるにゃん!」

「はえ?」

拍子抜けしたようにポカンとするケータくん。

横でうんうんうなずいているお姉さん(起き上がった)はとりあえず置いておこう。

「風猫族は『NPCとの交渉に適性がある』にゃん? それって要は、NPC好感度が上がりやすいってことにゃん。マスクデータとしてステータスに『魅力』の値があって、そこが風猫族は飛び抜けている、と猫は考えてるにゃん」

犬派猫派もあろうに風猫族が愛され種族なのって、そういうことじゃないかなと。

まず従魔法『チャームアップ』に、一応『魅力を上げる』という文言があるので、好感度を管理するなんらかの数値がある、というのは間違いない。

それから交渉に適性があるイコール 主導権(イニシアチブ) があるとは限らない、というのも『魅力』があると考えた遠因だ。だって串焼き屋のおじちゃん、猫のいうこと聞いてくれんもん。雇ってくれるしお代も弾んでくれるけどさ。

猫は最初に串焼き屋のおじちゃんにあって『交易』チュートリアルをしたときに、風猫族が『交易』持ってるのって、行動指針なんかなって思ったんだよね。

だってこれだけテイマーサモナー推奨されてるのに、『使役』も『召喚』も、種族スキルじゃない。風猫族の種族スキルは『交易』と『隠れる』。

これを戦闘スキルとその他スキルと考えると、「戦闘は隠れろ、後は交渉して誰かに任せろ」て話になる。

誰かに任せる手段は人それぞれあるけれど、基本は『交易』であり、交渉が基本なのだ。

「で…、でも俺、NPCによくしてもらったりとか全然ねえけど…」

「全く? ぜんぜん?」

席につき直したお姉さんが問うと、ケータくんは激しく首を上下に振る。

「全然!俺がNPCと話してないってのもあるかもだけど、クエストしてたら、多少PTで恩恵があるはずだろ? それがなくて、」

「えっ、ないよそれは!?」

「にゃん。鍵開けできるプレイヤーがいても、PT誰でも鍵が開けられる訳じゃないにゃん?」

「……え」

風猫族は招き猫ではないので、置くだけで効果があるわけではない。

「で、でも俺…、隠キャだし、交渉とか、無理だし…」

ケータくんが背を丸めて更なる猫背になった。

「にゃあ、猫は基本、ギブアンドテイクだと思ってるにゃん。相手が親切にしてくれたら、こっちも親切にするだけにゃ。猫が欲しいものをくれたら、相手にとって欲しいものをあげるにゃん。『交易』にゃんよ~」

「NPC風猫族もそんな感じだよね。あっちはむしろ親切の押し売りをして、こっちの親切をむしっていくところもあるけど。いや、そんなところもお猫様なんだけど」

そんなアグレッシブ風猫族もいるのか。ミーさんはマイルド風猫族だったのかもしれん。

「『交易』かぁ…。全然、使ってなかった」

「商人してないにゃん?」

「うーん、素材は冒険者ギルドで全部売ってたし、特にしてない、かな。……あ! あそこの受付の人が『1人で来てるならオマケな』てちょっと増やしてくれるのってもしかして、ソロ特典じゃない!?」

「それは間違いなく風猫族特典! あたし、長いことやってるけどソロでそんなオマケされたことない!」

俺も、私も~!と喫茶店の背景で野次馬していたプレイヤーたちも参戦してくる。

そうなのか…。

猫、戦闘で入手する素材って量が少ないのもあって――いや戦闘回数自体が少ないからだけども、特に売らずに全部タンスに放り込んであるんだよね。

ランクアップのための常設依頼とかで使うかもだし、錬金術には数が必要だし。PTプレイのときは景気よく売り払っちゃうけど。

ペチカちゃんとのときは猫が売りにいったけど、たしかに「オマケしとくな!」てポーツの素材買い取り所でも言われたわ。あれって定型句じゃなかったんだね。

そこからケータくんが「もしかしてこれも!?」とあげる例(オマケしてくれるとか、声かけてくれるとか)は、猫にはあるあるだけど、他プレイヤーには「ねーわ」な話らしくて、ちょっと面白かった。

ほんとNPC補正が高いんだな風猫族。

「でもさ、NPC補正高くたって戦えねえじゃん…」

周りがやんやと盛り上げたことでちょっと落ち着きを取り戻したケータくん、今度はふて腐れている。まあ泣いているよりはいい。

「何言ってんですか、風猫族なんて天然のテイマーじゃないですか!」

そう気炎をあげたのは青っぽい黒髪三つ編みの眼鏡っ娘さん。ルイネア…じゃないな、身長高めでわかりづらいけど魔子族かな?

野次馬プレイヤーはみんなテイマーを嗜んでいたらしい。

最初は風猫族のテイマー適性がうらやましいという話だったのだが、徐々にオススメ従魔の話になり、この辺から話が盛り上がってきて、やがて低LV帯での推し従魔について熱く語り始めた。

「やはりフルク!フルクしか勝たん!!もふもふ!わんこ、忠誠心の塊!」

「ポルクスですよ! 気ままで大きなお耳に目つきクソ悪なのが最高です!!」

「ジェリのひんやり感はこれからの季節にオススメ」

「ミミットのふんわり感は全季節通してオススメ」

「ピジョネかわよ! ダークロウもいいけどピジョネのアホかわいさこそ愛してる!」

「ここまでニャッコなし」

「ニャッコは名誉貴族ゆえ」

「むしろ王」

うむ…。

みんな従魔には並々ならぬ思いがあるんだな。ケータくんなんてさっきは話の中心だったのに、今や話に入れずおろおろしているぞ。

しかしやはりテイマー界隈は近接職多めっぽい。召喚獣を何体も出すにはMPが心許ないから、どうしても従魔になってくるんだな。

前に召喚獣を呼び出してMP尽きて文鎮になる後衛魔法師の話を聞いたけど、あれは中級までで、上級者になるとソロではむしろMP余るって魔法師のが増えるそうな。

そして逆に戦士職は使えるMPアーツが徐々に増えていき、MPを多く確保しておくことが重要になってくる。最大MP低いと回復速度も遅いしね。

ちなみに召喚コストで減っても基準は元の最大MPなので、魔法師は回復早くて十分回る。それも上級魔法師にサモナーが多い理由のひとつなんだとか。

中級辺りで逆転現象が起きてしまうの、意外と厄介よな。

「お話盛り上がってますし、おかわりどうでしょう?」

喫茶店の店主さんが話に入れてない猫たちに新しいお茶を勧めてくれたので、ケータくんとメニューを覗く。

おお、すごい!

「めちゃくちゃ種類があるにゃん!」

「えへへ、いろいろなお茶を集めるのが趣味なんです。気がついたらすごい量になって、趣味が高じてお店もやってます」

「猫もお茶好きにゃん。通って全制覇を目指すにゃん~!」

「わあ、嬉しいですー!」

「にゃふん、猫はまずはシンプルにストレートティーにするにゃん」

このゲームでの紅茶は産地や季節で味が変わるんじゃなくて、どうもブレンドで変わるらしい。

いちばんシンプルなのが何も入ってない『紅茶』だ。ブレンドでわかりやすいものだとオレンジ系の花をブレンドした『紅茶(ネラ)』はアールグレイ系のフレーバードティーらしい。

紅茶のブレンドは『料理』だが、薬草系列を多く扱うので『調薬』も持っていると捗るそう。店主さんは『カフェマスター』というジョブなのだとか。

紅茶をおいしく淹れられるジョブとか、気になりすぎるな!

「ケータさんはどれにしましょう?」

「俺は、あの、さっきの美味しかったのでおかわりで…」

「『ラヴツレミルクティー』ですね!」

店主さんが新しいお湯を沸かし(ものの数秒で沸く)、店内に紅茶とハーブのいい香りが漂う。

すると、ヒートアップし過ぎたことに気がついた面々が、さりげなく話題を元に戻し始めた。

つまりテイマーのオススメ構成。

「まず基本としては、PTプレイと変わらないんですよ」

チャキッとメガネをあげて、青黒髪お姉さんが言う。

テイマーの従魔構成は、PT構成とほぼ同じ。

タンク、物理アタッカー(場合によってはスイッチ盾)、遠距離アタッカー、ヒーラー、余裕があればバフ・デバッファー。

この内、もっとも手に入れるのが難しいとされるのがヒーラーで、そのため使役主がヒーラーを兼ねることが多い。もちろん『従魔法』スキルはそのためにあると言っても過言ではない。

自分が近接戦闘のときはスイッチ用の壁役、それからバッファー(ヒーラー)、遠距離魔法アタッカーをいれると安定する。

自分がタンクとヒーラーを兼任する、これが最初はいちばん事故が少ないパターンなんだって。

「まず第一に、従魔は戦闘でダメージを受けると使役主への好感度が下がります。もちろん性格にもよりますし、一定の好感度を稼げば多少のダメージでは下がらなくなります。その前段階までの好感度を上げるのが、近接職以外のテイマーは大変なんです」

まずは徹底的に従魔を守ることで、危険に晒したいわけではないことを理解してもらう、という過程が必要らしい。

すでに好感度の高い別の従魔がいるとタンク役も安定しやすいことから、まず遠距離アタッカー、それからタンクなどが望ましいのだとか。

「灰色猫さんのような、騎乗用の従魔を持ってるというのも初期の好感度上げには有効と思います。たぶん、それが風猫族の正解ルートですよね…、設定画もああだし」

「猫は気がついたらルイが戦ってくれるようになってたにゃんね~」

なるほど、猫とルイは大勝利?

最初、いきなりポルクスに向かっていったときには驚いたけど、あれは戦ってもいいと思うくらいにルイの好感度が上がってたということなのかもしれない。愛されてる!

ルイが魔ロバだと伝えたところ、やはり戦闘向きではないので、念のため別途タンク役を用意することをオススメされてしまった。

そのつもりだけどスカウトが追いついていないのだ…。

「初心者さんのタンク役としてオススメなのはやはり、フルクかジェリですね! 捕まえやすい・養いやすい・扱いやすいの3点から安心のオススメです」

「3点セットで上げられると、その2種にはどれも敵わないんだよなあ!」

悔しそうなのはニャッコ推しだった青年だ。

ケータくんがぱっと顔を上げて、嬉しそうに笑った。

「俺もジェリ、仲間にしてる! フルクは、一度クエストで仲良くなったことがあったんだけど、金がなくて飼えなくて…」

「ええええ!? それはもったいない! フルクとジェリは全種の中でもこの2種だけ、粗麦粥でも好感度が下がらない稀少な子たちなんですよ!」

「え!?」

えっ、そうなのかフルク。

というか従魔も粗麦粥食べられるとは知らなかった。