軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23.ブラスターウルフ討伐

夜明けとともに「血戦の誓約者」たちは村を出た。

目的は、街道を封鎖しているブラスターウルフの群れを討伐すること。

村は脇道の先にあるが、街道まで活動範囲が広がれば、被害も拡大する。

ブラスターウルフはその名の通り、追い詰められると爆破魔法を発動する厄介な魔物だ。

それ自体は珍しい魔物ではない。

「まずは索敵ね」

ヴァイオレットが目を細めながら呟く。

「高いところから見下ろせるといいね」

テレンスが周囲を見回しながら、なだらかな丘を指さした。

「ここからなら平原を一望できる。周囲の地形も確認できるし、索敵には最適だな」

ヘンリーが同意する。

「なら、行くぞ」

ダレンが短く言い、皆は丘へと向かった。

丘の上から、ヴァイオレットとテレンスは遠くを見渡した。

平原には点々と草木が茂り、小さな岩場や丘陵がある。

道はかすかに見えるが、ところどころに崩れた荷馬車や骨が散らばっていた。

「見つけた」

テレンスが弓を軽く握りながら指をさす。

視線の先には十数頭のブラスターウルフが群れをなしていた。

「……予想より多いな」

ダレンが眉をひそめる。

「ふん、まぁ、数が多いのは想定内だ。問題は……」

チャールズが言葉を切りながら視線を動かす。

その先に、一際大きな影があった。

「なに、あれ……?」

ヴァイオレットも目を凝らす。

周りのブラスターウルフよりも一回り大きく、筋肉質な体躯。

灰色の毛並みは鋭い光を反射し、目には知性を感じさせる輝きが宿っている。ただの魔物とは違う――。

「……アルファか」

ヘンリーが低く呟いた。

「報告にはなかったけど……間違いないね」

テレンスが鋭い目つきで観察する。

試しにヴァイオレットも鑑定してみるが、思った通りアルファと出た。

普通の魔物は単純な行動を取るが、指揮者がいれば話は別だ。

統率の取れた動きができるため、討伐の難易度が格段に上がる。

「マズいな。群れを統率する個体がいるってことは、奇襲もありえるぞ」

ヘンリーが険しい表情を浮かべる。

「うわ、面倒なことになってきたな……。さすが緊急討伐、って感じだ」

チャールズが軽く肩をすくめるが、表情は冗談めいてはいない。

「アルファの存在を見落とすなんて、ありえるのか?」

ダレンが無骨な口調で問いかける。

「……まあ、そういうこともあるんじゃないか?たまたま群れの中に紛れてて、気付かれなかったとかさ」

チャールズが軽く肩をすくめたが、どこか落ち着かない様子だった。

「ともかく、まずは群れの位置を特定しようか」

テレンスが穏やかに言った。

彼の指示で、一行は慎重に索敵を開始する。

テレンスは敏捷な動きで木々の間を移動し、高所から周囲を見渡した。

ヴァイオレットもまた魔力探知の魔法を【創造】し、近くに強い魔力を持つ存在がいないかを確かめる。

しばらく進んだところで、テレンスが手を挙げた。

「もうひとつ群れがいる。あの丘の向こう、林の手前に十数頭はいる」

「アルファは?」

「いない。けど、近くの群れのアルファの指示に従うかもしれない」

「どうする、ヘンリー?」

ヘンリーは少し考えた後、深く息を吐いた。

「……まずは、テレンスが高所から弓で狙撃。ヴィーはストーンバレットで複数を同時に攻撃しろ。俺たちは前線でブラスターウルフを引きつけつつ、そっちに近づかせないようにする」

「アルファはどうする」

「まだ動きを見極める。もしかしたら、特別な指示を出すかもしれないしな。まずは群れの数を減らすことに専念しよう」

ヴァイオレットは頷いた。

戦術は決まった。あとは、実行あるのみ――。

戦闘は、遠距離組のヴァイオレットとテレンスが先制攻撃を仕掛け、混乱を誘う形で始まった。

ヴァイオレットは「ストーンバレット」を唱え、拳大の石の弾丸を複数発射する。

岩弾は一直線に飛び、群れの前衛にいた三頭のブラスターウルフを直撃。

鈍い音とともに転倒させた。

ほぼ同時に、テレンスの矢が音もなく飛び、一頭のブラスターウルフの喉を的確に貫いた。

「よし、一気に畳みかけるぞ!」

ヘンリーの号令とともに、ダレン、チャールズ、ヘンリーが前線へと飛び出す。

しかし――。

アルファウルフはすぐに体勢を立て直し、鋭く吠えた。

その声に反応するように、群れの動きが一変する。

統制の取れた動きで距離を詰め、ヴァイオレットとテレンスのいる位置へと殺到した。

「遠距離組が狙われた! ヘンリー!」

ダレンが叫ぶ。

「わかってる!チャールズ、ダレン、前を押さえろ!」

三人が盾となり、迫るブラスターウルフの群れを食い止める。

しかし、アルファの影響か、動きに迷いがない。

まるで一つの意志を持っているかのような統率力だ。

「くっ……!ヴィー、次の魔法を!」

テレンスが言う。

ヴァイオレットは焦りを覚えながらも、息を整えた。

(怖い……でも、やるしかない!)

「ストーンスピア!」

彼女の声とともに、大地が震えた。

地面から無数の石の槍が突き出し、迫るウルフたちをまとめて貫く。

苦鳴を上げて数頭が倒れ、足止めに成功する。

「マジかよ、すげぇな!こんなの食らったら俺でも無事じゃ済まねえぞ!」

ヴァイオレットは肩で息をしながらも、仲間たちの反応に少し安心した。だが――。

そのとき、アルファウルフが鋭く吠えた。

その瞬間、群れのウルフたちが一斉に態勢を立て直し、今度は明確に狙いを定めた動きを見せる。

ヴァイオレットとテレンス――遠距離攻撃を担う二人に向かって、数頭が一斉に襲いかかってきた。

「くっ……!」

「ダレン、チャールズ! 防衛しろ!」

ヘンリーが叫び、ダレンとチャールズが素早く位置を変えた。

しかし、数が多い。すべてを止めるのは難しい。

テレンスが素早く動いて位置を変えながら矢を放つが、ブラスターウルフたちはそれを避けながら間合いを詰めてくる。

アルファウルフがそれを見て、鋭く吠えた。

その瞬間、数頭のブラスターウルフが毛を逆立て、全身を光らせる。

(まずい、爆破魔法を使う!)

ヴァイオレットは直感的に理解した。

「みんな、下がって!」

叫ぶと同時に、ブラスターウルフたちの体が膨張し――轟音とともに爆発した。

爆風が吹き荒れ、砂煙が舞い上がる。

「……っ!」

ヴァイオレットは咄嗟に魔力障壁を展開し、衝撃を受け流した。

テレンスもなんとか爆風から身を守ることができたが、視界は一瞬奪われる。

「くそっ、やられた!」

チャールズが爆風の中から姿を現し、剣を構える。

「ヘンリー、ダレンは?」

「大丈夫だ!」

ヘンリーの声が聞こえた。

ダレンも無言で盾を構え直している。

全員が無事だったが、爆破の威力は想像以上だった。

アルファウルフが低く唸る。

獲物を追い詰める捕食者の目をしていた。

(このままじゃまずい!)

「ヘンリー、作戦を変更しよう!アルファを優先的に倒す!」

ヴァイオレットの言葉に、ヘンリーは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに頷いた。

「そうだな……! アルファさえ落とせば、残りはバラバラになる!」

仲間たちがすぐに意図を理解し、動き出す。

ヴァイオレットは深く息を吸い、魔力を練った。

(今度こそ――確実に決める!)

「グラビティ・ウェーブ!」

ヴァイオレットの詠唱とともに、大地が揺れた。

重力の波動が発生し、突進してきたブラスターウルフたちの動きを鈍らせる。狼たちは足を取られ、踏み込もうとしても思うように動けない。

狼たちは悲鳴のような咆哮を上げながら倒れ込む。だが――

「チッ、アルファはまだ無傷か……!」

ヘンリーが悔しげに舌打ちする。

確かに周りのブラスターウルフは次々と倒れていったが、肝心のアルファウルフは素早く身を翻し、衝撃を最小限に抑えていた。

そして、ヴァイオレットの魔法を見て学習したのか、アルファは次の瞬間、後ろ足で大地を蹴り、一直線にヴァイオレットへ向かって跳躍した。

「っ――!」

高く跳び上がるその姿は、まるで漆黒の影。

咄嗟に防御魔法を展開しようとするが、反応が間に合わない――

「させるか!」

ダレンの巨体がヴァイオレットの前に割り込み、巨大な盾でアルファウルフの突進を受け止める。

すかさず、ヘンリーの剣がアルファの喉元を裂いた。

痙攣する巨体の動きが弱まり、やがて、完全に動かなくなった。

「……終わった、の?」

呟くと、ヘンリーが剣を収めながら、安堵の笑みを浮かべた。

「……ああ、勝ったよ」

チャールズが腰に手を当て、深く息を吐く。

「いやぁ、今回ばかりはヤバかったな!ヴィー、すげぇ魔法だったじゃねぇか!」

ヴァイオレットは少し照れ臭くなり、視線を逸らした。

「……ちょっと怖くて、できるかわからないのに強めの魔法を使っちゃった」

すると、テレンスが微笑んで肩を軽く叩く。

「僕たちがこうして無事なら、結果オーライってことだろ?」

ダレンも無言で頷き、盾を背負い直した。

――こうして、激闘の幕は下りた。