軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

74回目 異種族

トルテと別れて街へ繰り出した俺達は、屋台で買い食いをしながら街をブラブラと歩いていた。

タミナルの街に住みはじめて数日たったが、異世界の街並みを見てのワクワクはまだ治まらない。日本とは違う風景をみながら、青やら赤やらの髪色を持つ人とすれ違う。それに稀にだが、猫っぽい耳を持つ人や漫画で見たドワーフのように背の低いモジャモジャ髭のオッサンとすれ違ったりする。

ジッと見るのは失礼だと解るのでチラ見だけど、見ちゃうよね。出来ればお近づきになりたいものだ。

「ガモン様は獣人族や精霊種族が好きなんですか?」

「獣人族……は解るけど、精霊種族?」

「精霊種族はドワーフやドライアド、あとはマーマンなどを指す言葉です」

「ほほぅ。ちなみにエルフは?」

「エルフも精霊種族ですね。ガモン様の世界には、エルフがいたのですか?」

「いや、いなかったよ。それどころか獣人族や精霊種族なんて者が、そもそも無かった」

「そうなのですか。…………ああ、それで彼らをチラチラと見ていたのですね」

「あー、やっぱバレるよな。気をつけないとな」

それからちょっと歩きながら、シエラに種族差について教えてもらった。

それによると、獣人族は魔力こそ少ないが身体能力が高く、スキルもそれに則した物になっている事が多い。普通の人間は生まれ持ったスキルを基本に、それからの経験に基づいて様々なスキルが派生的に増えていくらしいが、獣人族の場合はスキルそのものがレベルアップや進化をしていくようだ。

例えば『筋力アップ』というスキルを持って生まれて、修行を重ねると『怪力』に変わり、更に『剛力』となる。

そして格闘技を極める事で『格闘王』というスキルに進化し、そこから『闘神』という《称号》になった。

獣人族の伝説には、『闘神』まで登り詰めた者が歳を取り、枯れ枝のように痩せて見る影もなくなった頃に、フラフラとした足取りと蚊も殺せないようなゆっくりとした動きの拳の一撃で岩山を砕き。

『…………我、到達せり』

という言葉を残して立ったまま息絶えた。という伝説があるという。見る者が見た『闘神』が持つその瞬間の《称号》は『破壊神』だったそうだ。…………メッッッチャ格好いい。

対して精霊種族は、契約を結んだ精霊によって魔法やスキルが変化していく。

基本は自分と源泉を同じくする精霊。エルフやドライアドなら森の精霊、ドワーフなら大地の精霊、マーメイドなら海の精霊なのだが、それぞれの精霊と仲良くなるか、または精霊王の試練を越える事で新たな精霊と契約を結べるようになるらしい。

この二つの方法には差があり、精霊と仲良くなる方だと組み合わせ次第では元の力を失ってしまう。

解りやすく例えるなら、元から持つ精霊の属性が『火』で、仲良くなった精霊の属性が『水』だった場合、水の力が火を呑み込み火の属性が消えてしまう。

その場合。最悪のケースとして自らが生まれ持った精霊との繋がりが完全に失われてしまい、自らの根幹を失った事で自我が保てなくなって『魔落ち』、つまりモンスター化してしまうと言う。

そして、一度『魔落ち』するともう元には戻れないため、『魔落ち』を出した精霊種族は、その者を種族の威信にかけて討伐するそうだ。

まあこれは、本当に極々稀に起きる事故に近いものらしい。

では精霊王の試練を受ける方はと言うと、こちらは精霊王が認めた新たな精霊との契約であって、元から持つ精霊との同居になる。完全なるパワーアップだ。

さらに三属性以上の精霊と契約すれば、エルフは種族自体が『ハイエルフ』となり、上位種族へと生まれ変わるそうな。

うーーん、ファンタジー。

「って言うか、シエラはそういうのよく知ってるな。一般的に知られてる話なのか?」

「一般的に…………は、どうでしょう? 私の場合は同期の友人にエルフがいた事と、私のような教会所属の治癒師に護身術を教えてくださった師匠が獣人だったので、その二人に聞いた感じですね。なので、一般的に知られてるのかどうかまでは分かりません」

「へぇ…………。護身術?」

「はい。私達のような治癒色の髪を持つ者は、外ではよく狙われますから、教会では治癒色の髪を持つ者には護身術を覚えさせているんです」

なるほど。まぁ確かに、治癒の力を持つ子供なんて犯罪者からしたら格好の餌食だろう。

その治癒師の卵を育てる教会としては、治癒師達が自分の身を守れるように護身術などを教え込むのは、当然と言う訳だ。

「そうなのか。シエラのあの強さの理由がそれだとしたら、教会の治癒師ってのは、みんなシエラ並みに強いのか…………」

「いいえ。自分で言うのもなんですが、護身術の訓練だと、同期では私が一番強かったんですよ? 師匠に気に入られてたってのもありますが、特別な修行も積んで、最後には『免許皆伝』も貰ったんですよ。凄くないですか? 護身術の免許皆伝!」

「…………それは、凄いな」

「はい! 私の自慢ですわ!」

胸を張って得意気な顔をするシエラは可愛いが、ひとつ言わせて貰うならば、それは『護身術』ではないと思う。

きっと、その護身術の師匠とやらはシエラの格闘技における才能に気づき、自分の流派を余す所なく伝えたのだろう。

幼い頃に教会に引き取られたシエラは、その師匠の英才教育を受けてメキメキと実力をつけていき、最終的には若くして『免許皆伝』にまで至った訳だ。

そりゃ強い訳だよ。本物の達人やんけ。