軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

72回目 ギルドでの揉め事

冒険者ギルドにおけるGランク依頼の三日目は、『ギルド職員のお手伝い』が仕事になる。

だが、どうもこの依頼は人気が無いらしく、受けるのは俺とシエラにトルテの三人だけだった。

ちなみにトルテも、俺達と同じ依頼を受けると言っていたのに、やるのがギルド職員のお手伝いだと知ると素材の洗浄に変更しようとしていた。そうしなかったのは、シエラにギルド職員との関係性を良好にしておく有用性を説かれたからだ。

「だから何でDランクの俺達がいつまでも薬草の選別なんかやらねぇといけねぇんだ! そういうのはヒヨッコの仕事だろうが! オーガでも大猿でも狩って来てやるからよ! そういう依頼を出せよ!!」

「ですから! 今あなた方には依頼を出せないんです! あと五日間は薬草の選別をしてもらいます!」

トルテの説得も終わり、いつものようにミミナが座るカウンターに行こうとすると、言い争う声が聞こえて来た。

しかも場所は、まさに俺達が行こうとしていたミミナのいるカウンターであり、その前には三人の冒険者がいて揉めていた。

「最初の話と違うだろうが! 最初は三日って言ってたぞ! 何でそれがあと五日に増えてんだよ!!」

「それはあなた方が真面目に取り組んでいなかったからです! とにかく後五日間は、通常の依頼を出すわけにいきません!!」

「このアマ! 下でに出てりゃ調子に乗りやがって!!」

「おい止めろよ! 何してんだ!!」

「あぁん!?」

突然上げられた非難の声に、ミミナに絡んでいた三人が一斉に俺達へと振り返った。

その三人の視線が突き刺さっているのは俺だが、さっきの声はトルテのものである。そしてそのトルテはと言うと、その小柄な体を俺の後ろに隠している。

いやトルテさん? 声を上げたのは立派だと思うけど、俺を盾にしちゃダメだろ。ちゃんと前に出て胸張って言いなさいよ。

「なんだテメェ! 俺達に文句つけようってのか!! おいっ!!」

ほらぁ、まるで俺が言ったみたいになってるじゃん。などと、うんざりしながらもどうしたものかと三人を見ると、その顔に見覚えがあった。

いや正確には、三人の顔にそれぞれ付いている青アザに、だ。このオッサン達は確か、薬草の選別の時にいたオッサン達だ。

「なんだ! 何とか言えよテメェ!!」

「あっ! おいちょっと待て! あの女!」

「あぁん!?」

一番キレていたオッサンが、仲間に引っ張られて後ろを向いた。なんか直前にシエラを指差していたし、今もヒソヒソやりながらシエラを見ているが、何の相談をしてんだ?

「なぁおい! お前らあれか、Gランクの依頼を受けに来たんだな!?」

「…………ま、まぁ、そうですけど」

「よし! おいギルドのねぇちゃん! 俺達の罰は、あの三人が代わりに受けるぜ!!」

「は?」

はぁ? いきなり何を言ってんだあのオッサンは。

「ほらあの女! あの女は一人で何人分も仕事できるヤツだぜ! 俺らの分はあの女にやらせりゃ問題ねぇだろ!!」

ホントに何言ってんだこのオッサン。何でウチのシエラがお前らの分も働かなきゃいけないんだ? まったく何を言ってるのか理解できない。

そして俺と同じ感想をミミナも持ったらしく、大きく溜め息をついて三人のオッサンを睨みつけた。

「まだ分かっていないんですか? あなた方に課せられ薬草の選別作業は、ただの依頼ではなく罰則なんです。あなた方がギルドの酒場でお酒を飲んで暴れた事に対する罰則です。なぜそれを他人がやる話になるのですか? まったく理解ができません」

「だから俺達は三日はやったじゃねぇか! 罰則ならもう終わったはずだろう!!」

「ですから! あの程度の働きでは依頼をこなした事にならないんですよ! あと五日間! 薬草の選別はやってもらいます!!」

「だから俺達のそれはあの女が引き受けるって言ってるだろ! この依頼を受けるって事はあいつは駆け出しだろ! 駆け出しは先輩を助けるもんだ! あの女にやらせるから、俺らには別の依頼を…………」

「ふざけるな!!」

まるでシエラが、このオッサン達の為に働くのが当たり前みたいなその言い方に、俺は日本にいた時に俺に仕事を押し付けまくった上司を思い出した。

理不尽に仕事を押し付け、自分は仕事もせずに口だけ出してくるクソ上司とオッサン共の姿が重なり、俺の中で感情を抑えるダムが決壊した。

「引き受けねぇよ! なんでシエラがお前らの為に働かなきゃいけねぇんだ!!」

「あぁっ!? なんだテメェ! 駆け出しのクセに生意気言うんじゃねぇよ!! どうせGランクの依頼を受けに来たんだろ! だったら黙って薬草の選別してろ!!」

「俺らの今日の依頼はギルドの手伝いだ! 薬草の選別はテメェらでやれや! テメェらの罰なんだろうが!!」

「何だとコイツ!! 表出ろ!!」

ズカズカとこっちに歩いて来たオッサンが俺の胸ぐらを掴んだ瞬間。その腕がバシッと跳ね上げられたかと思えば、俺とオッサンの間に体を滑り込ませたシエラによって、一瞬でオッサンは上下逆さまにぶん投げられ頭からギルドの床に叩きつけられた!

「テ、テメェ何しやがる!!」

「よくもやりやがったな!!」

残る二人のオッサンは、その瞬間を見ていたにも関わらず何故か俺に向かって来た。

いや、何となく分かる。シエラが仲間をぶん投げた現実を理解できなかったのだろう。だってシエラはどう見てもそんな事が出来そうにない美少女なんだから。そもそも俺も、目の前で起きた事が信じられずにフリーズしているし。

そんな中で俺に向かって走るオッサン達。しかし、このオッサン達はすぐに現実を思い知る事になる。

シエラは、右側のオッサンの顎を左の裏拳で打ち抜くと、そのままの勢いで左側のオッサンの横ヅラに蹴りを叩き込んだ。さらに脳震とうを起こして倒れ混むオッサン二人の頭を両脇に抱え、背中から倒れ込むように二人の頭を床に叩きつけて、オッサン達の意識を完全に狩り取った。

「うげぇっ!?」

「ぐべぇっ!?」

そして、動く者がいなくなりシーーンと静まりかえるギルドの中で立ち上がると。

「ガモン様に危害を加える事は、この私が許しません!!」

と、もはや聞こえていない相手に啖呵を切ったのだった。…………シエラさん、メッチャ強ぇ…………。