軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

599回目 想定を超える被害

同時に起きた三体もの幻獣と、その幻獣の身体に隠れる様にして『方舟』から出て来た多くの狂った神獣。

その内、大猿の幻獣『カラブ・ハヌマーン』と、巨大鯨の幻獣『フォグホエール』は闘技場の外で抑える事に成功した。

幻獣『カラブ・ハヌマーン』はアリアが☆5『モンスター・チェス』を駆使して見事に倒しきり、幻獣『フォグホエール』は、コウハキンとダイキョ騎士団が、☆4装備の『釣神シリーズ』を巧みに使って倒した。

ただ、コウハキン達の方は無傷とはいかず、三名の重傷者と多数の怪我人を出しての辛勝だった。

だが、それよりも問題なのが闘技場で起きた戦いだった。

大ムカデの幻獣『グラウドピード』。そしてその幻獣と共にやって来た狂った神獣達。

その数が多過ぎた為に、一つの闘技場に一体では収まらなかった為に、あぶれた神獣達を一度一箇所に押し込めて、闘技場の神獣が倒れたらそこに一体ずつ送り込む、と言う戦法を取った。

神獣『グラウドピード』と相対したのはザッパ率いる『ノーバスナイト』の四人だ。

出会った頃はドゥルクのいた墓地で死にかけてた彼らや、まだ駆け出しだったトルテも、今やガチャ装備を使いこなして一流と言える冒険者に成長している。冒険の数で言えば、俺達なんかよりもずっと多くの場数を踏んでいる。

そんな彼らだから、俺も自信を持って神獣を任せた。

ノーバスナイトは、実際によく戦った。『グラウドピード』の隙をついて攻撃し、最後は『グラウドピード』の巨躯を真っ二つに斬り裂いた!

身体の中程から二つに斬り裂かれた『グラウドピード』は、その斬られた箇所から徐々に塵になっていった。

だが、戦っていたノーバスナイトも、それを見ていた俺達も、全員が『グラウドピード』の生命力と闘争心を甘く見ていた。

徐々に塵になっていく中で、『グラウドピード』は頭を大きく持ち上げ、闘技場を覆う結界が満たされる程の毒霧を吐き出したのだ。

毒霧に覆われて暗くなった結界の中で、『グラウドピード』は頭を持ち上げたままで塵となって消えていき、結界を解いて毒霧を散らした闘技場の舞台の上では、猛毒に侵されたノーバスナイトの面々が倒れていた。

不幸中の幸いな事に、ノーバスナイトの四人は生きている。虫の息だったが、死んでしまう前に救出出来たので何とか助ける事が出来た。

だが、エリクサーを使ったとしても、猛毒に長い時間晒された後遺症がある為に、ノーバスナイトはここからの戦いには参加出来なくなった。

そして、狂った神獣と戦っていた他の闘技場でも、神獣との戦いによって傷つき、倒れる者が続出した。

それにより、俺達はこの『方舟』との戦いで、初めての死者まで出してしまったのだ。

全ての戦いが終わった後、俺は仲間達と共にレティアから被害状況の報告を受けていた。

「…………死者七名、重傷者十三名か。いや、ノーバスナイトを含めると重傷者の数は十七名にもなるな。…………被害がデカいな」

『さらに、この凄惨な戦いを見て、歌えなくなったアイドルもいます。演奏者の中にも、演奏に支障をきたしている者がおり、歌と演奏によるバフとデバフが掛かりづらくなっています。今回の戦いでも、途中でバフとデバフが途切れた事で戦況が一変した戦いがありました』

「それも問題だな。アイドル達のバフとデバフによって、何とか神獣と戦えていた者達もいるからな」

死者が出た事は残念でならないし、重傷者のケアも頭の痛い問題だ。アイドル達の中にいると言う、ショックを受けて歌えなくなった者達にはケアも必要だろう。

「どうするのガモン? 次の戦いまでの時間をあける? せめて復帰出来そうな人達を待っていた方が…………」

そのティアナの言葉に、俺は首を横に振って答えた。確かに時間をかければ復帰する者は多いだろうが、それは『方舟』側も同じなのだ。

「いやダメだ。『方舟』にはあまり時間を与えたくない。時間を与えれば、『方舟』の中で既に倒した幻獣や神獣が復活するかも知れない。俺の『ガチャ・マイスター』がほとんど使えなくなった今、消耗戦になれば負けるのは俺達の方だ」

俺達の持つ戦力にも物資にも限りがある。それが尽きるのはまだまだ先だが、油断をしていい程に潤沢ではない。

それに比べて、『方舟』の方は時間さえあれば神獣を復活出来るのだ。流石に幻獣までは復活出来ないと思うが、神獣が復活するだけで十分に厄介なのだ。

俺達の目標は『方舟』の破壊だ。今のこの戦いは、あくまで『方舟』を破壊する為の準備に過ぎない。

仮にいま『方舟』を破壊しようとしても、それは中にいる幻獣や神獣によって阻止されてしまうからな。幻獣と神獣は、残らず倒さねばならないのだ。

「なら、どうするの? このまま次の戦いに入って同じ事が起きたら、被害はもっと増えるのよ?」

「…………こちらから仕掛けるか。ちょっと考えていた作戦があるんだ」

『もしやマスター、アレをやる気ですか? ですがアレは、こちらにも大きなリスクがありますよ?』

「だから、そのリスクにまだ耐えられる今やるんだ。準備しろレティア。『方舟』に、一度直接攻撃を撃ち込むぞ!」