軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

592回目 VS『方舟』・序盤の山場

人員を交代し、ローテーションで回していく戦いは、俺達の入念な準備が功を奏して優位なままで進んでいる。

懸念があるとすれば、あまりにも戦いが有利に進む為に交代のタイミングがやや早い事だろうか。まだ戦力には大きく余裕があるし、問題にはなっていないが、あまりにも余裕が過ぎると油断にも繋がり兼ねない。

かと言って、ローテーションを変えようにも狂った神獣との連戦に耐えられるだけの者達はそこまで多くないのだ。

そんな懸念をレティアに伝えた所、その懸念はドゥルクからも出ていたらしく、ドゥルクとアルジャーノンで対策を考えている所だと言われた。

流石はドゥルクだ。積み上げて来た経験が違う。これなら、俺は安心して戦いに集中できそうだな。

『それよりも、そろそろ『神威』の操縦者を交代させましょう。順番に、しかし一気にやってしまいますので、準備をお願いします』

「…………そうか、最初の山場だな」

☆5『神罰の鎖』を☆5『◇創造神の『神威』工房』に捧げる事で生み出された『神威』。

もれなく☆5『神罰の鎖』の力を使える特殊装備だが、これにも当然ながら使用する者が必要であり、現在はマーメイド族の戦士がこれに乗っている。

だが、精霊種族である彼らとて人だ。いくら『神罰の鎖』を握っているだけとは言え、気力的にも体力的にも消耗する。

まだまだ終わりの見えない『方舟』との戦いだ。『神威』の操縦者の交代もまた、作戦には組み込まれている。

…………問題は、操縦者を交代する間、『方舟』を抑える『神罰の鎖』が一本減る事である。

『やるならば、少しでも虚を衝きましょう。そろそろ、『方舟』の幻獣や神獣達も鎖が緩むタイミングが解っている頃です。闘技場での戦いが全て終わる少し前に始めれば、予想外の事に動きが止まるかも知れません』

そのレティアの言葉に、俺はなるほど、と頷いた。今まで、安全策をとって闘技場が空になって軽く準備時間を取ってから鎖を緩めていた。そして、確かにこの数回前から、緩めた時に飛び出してくる神獣達に『待ち構えていた』気配があった。

ここで来る、と言うタイミングをズラしてやれば、向こうにも僅かに迷いが出て動けないかも知れない。

レティアの案を採用し、俺達はその瞬間を待った。

島の影一つない海面に着水している『方舟』は、『方舟』を囲むように周囲に浮かぶ五つの島々にいる『神威』から伸びる☆5『神罰の鎖』によって、グルグルに絡め取られていた。

絡め取られてはいても、『方舟』からは止めどなく濃い瘴気が流れ出しており、その海を紫色に染めている。

更に『方舟』からは、常にジャラジャラという音が響いている。

これは『神罰の鎖』の隙間を抜けようとする幻獣や神獣が鎖を揺らしている音であり、『神威』を通してその感触を常に感じている操縦者達の精神を、ゴリゴリと削っていた。

この『神威』の操縦者であるマーメイド族の者達は、長く海で戦って来た戦士である。弱音は吐かないが、『方舟』との戦いが始まって早々に、これは当初の予定よりも限界は早いと感じていた。

だからこそ、『フレンド・チャット』を通して伝えられた、予定時間よりも早い交代の報せには、操縦者の5人ともが、安堵のため息を漏らした。

「よし、ガモン殿から交代の許可が出たぞ。まずは俺達からだ。マスットン、準備は良いか!」

「準備は出来てる! いつでも来い!」

ここまで『神威』を操縦していたタータイと言うマーメイド族の男は、『方舟』を抑えていた『神罰の鎖』を戻すと、素早く『神威』から降りた。その瞬間、マーメイド型になっていた機体は、基本となる人型形態に戻って膝をついた。

そして下にいたマスットンは、タータイとのすれ違いざまにハイタッチをして『神威』に乗り込み、流れる様に起動操作をして機体をマーメイド型に戻して安定させると、即座に『神罰の鎖』を起動して『方舟』に飛ばして絡みつかせた。

一連の交代劇は、何度も訓練で繰り返した成果もあって僅か一分の間に行われ、虚を衝かれる形となった『方舟』側は何も行動出来ずに、その後も二機の『神威』が交代を終えた。

だが、四機目の交代劇は見逃して貰えず、二体の狂った神獣が『方舟』から飛び出し、レティアによってすぐに闘技場へと送られ、新たな戦いが始まったのだった。

「流石に全部見逃して貰おうってのは欲張り過ぎたか。レティア、最後の交代には少し間を開けるか?」

『いえ、直ぐに行った方が良いでしょう。操縦者となったマーメイド族の消耗が思ったよりも激しいです。少し交代の感覚を調整せねばなりません。それに、『方舟』にも動きがありました』

『ウム。レティアの言うように『方舟』の一部に魔力が集まっておる。交代する機体が残り一つになったからのぅ、次に無くなる鎖の場所で、飛び出す準備をしておる奴がいるな。…………この魔力の高まりからして、おそらくは幻獣じゃろう』

「そりゃマズイな。準備が終わる前に、交代させよう!」

だが、結論としてこの決断は少し遅かった。最後の『神威』が操縦者を交代させる隙をついて、大きな隼の様な幻獣が『方舟』から飛び出して、瞬時に魔力を解放した!

膨大な量の魔力は『方舟』の瘴気をも取り込んで無数の魔法陣を空に展開し、そこから隼の幻獣『テンペスタード・ファルコン』の眷属達が次々と生み出された。

そして、レティアによって闘技場へと回収された『テンペスタード・ファルコン』とは行動を別にして、無数の眷属達は、一直線に『◇天空城『レナスティア』』へと向かって来たのである。