作品タイトル不明
486回目 変化
『…………ウグッ!? …………グ、グゥオォォーーーーッ!!??』
大魔王の苦し気な呻き声が叫びに変わり、大魔王の右腕や肩から胸にかけた辺りに亀裂が走り、黒い煙が吹き出した!!
これはきっと、多数の『郷愁の禍津像』が破壊された事で起きた事に違いなく、それはティアナ達が大量の『郷愁の禍津像』を破壊した証である。
「おおっ!! やるなティアナ達は!! こんなに短い間にどれだけ『郷愁の禍津像』を集めたんだ!!」
「体にまで亀裂が入りました! 行きます!!」
「アレス! あっしも付き合いやすぜ!!」
どれ程の魔王を失ったのか解らないが、少し魔王を失ったくらいでは動きを止めなくなった大魔王が、自分の体を抱えるように丸まって動きを止めた。
いや、どんだけ『郷愁の禍津像』が破壊されたんだ? 凄いなティアナ達は!!
だが、このまま先程のようにバリアを張られると攻撃が通らなくなる。なのでその前にと、アレスとバルタが飛び出して大魔王に攻撃を加えた!
大魔王に走った亀裂部分に与えた攻撃により、大魔王の体は数メートル押されて、深く亀裂の入った右腕がダラリと体から垂れ下がる。
「ガモン殿!!」
「旦那!!」
「おう! 任せろ!! 喰らえっ! 『破壊』!!」
二人には少し遅れて飛び出した俺は、その垂れ下がった右腕を走り登り、亀裂が一番深くなっている所に『破壊の一撃』を叩き込み、その右腕を殴り飛ばす事に成功した!!
殴り飛ばされ本体から千切れた右腕は、『サワン』を倒してこちらへ向かっていた『大蛇八首』の頭上を越えて、地面に落ちて転がった。
そして大魔王の右腕は、すぐにドクンッ! と脈打ち始め、変化が始まる。
グググッ…………。と盛り上がりながら大きくなる『右腕』は、やがて硬質で丸い亀の甲羅の形状と質感を造り出し、前後の足の部分からは大きくて爪が流線形に生え揃ったヒレが、尻尾の位置から大きな蛇が姿を見せ、頭の位置からは鋭い牙が生え揃う口を持つ鮫の頭みたいな物が飛び出した。
言うなれば『海洋キメラ』だろうか。まあ、取り敢えず名前は『ウワン』にしておこう。右腕だし。
『おいおい、せっかくさっきの化物を倒した所だって言うのに、もう次のが出て来たのか!』
「ケト!? いつの間に…………!?」
『つい今し方な。だが、そんは事はどうでも良い。問題は、また面倒敵が増えた事だな』
いつの間にか俺の隣にいたケトが、そんな風に文句を言いながらニヤリと笑った。本気で嫌がってる訳ではなく、どこか楽しんでいるようだ。
「ケト、すまないけどもう一戦いけるか?」
『ああ、任せておけ。さっきのヤツもだが、強いヤツは歓迎だ!』
そう言って、ケトは『大蛇八首』を引き連れて『ウワン』との戦いに入った。なんとも頼もしい戦士達だな。
「ガモン殿!! 大魔王が!!」
「は!? もう硬直から復活するのか!? …………嘘だろ、しかも形が変わっていく?」
そして、両腕を失った大魔王にも、変化が訪れていた。
大魔王は、まず腰を折って前屈の様な形になってしゃがみ体を丸くすると形を変え始め、その形状が段々と人の物から離れていった。
俺はてっきり、腕を治す…………と言うか、別の部位から持って来て新たな腕にするのだと思っていたが、大魔王は、俺の予想をナナメ上に裏切って来た。
「…………マジか、そんなのもアリなのか」
「…………な!? グ、グレイトアースドラゴン!? 旦那! アレス! 気をつけてくだせぇ! 亜竜ですが、ありゃあドラゴンの一種ですぜ!!」
「あ、あれがグレイトアースドラゴン!?」
「……………………え?」
大魔王が自らを変化させた形は、一言で表すならば『ティラノサウルス』だ。
まぁどうやら、この世界には『グレイトアースドラゴン』と言う、ティラノそっくりの亜竜モンスターもいるらしいが、あれは間違いなくティラノサウルスである。
腕を作らずに、腕があって無いようなティラノサウルスになる事を選ぶとは驚いた。しかも威圧感もとんでもない事になっている。
『グルルルルッ…………! ギャオオォォーーーーッ!!』
実際に聞いた事はもちろん無いが、威嚇の叫びまでが正にティラノサウルスの様だった。
しかもその後ろにある太い尻尾も、かなりの威力を持っていそうだ。これと三人で戦うのかよ。唯一の救いは、魔王の鎧が大分小さくなってきた事だろうか? 戦い始めの頃と比べれば、だいたい半分くらいには削れていた。
「来ますぜ! 旦那!!」
「仕方ない! やるぞ!!」
形を変えた大魔王との、第三ラウンドが始まった。