作品タイトル不明
463回目 遅れて来た報酬
「本当に! 本当にありがとうございました!! この御恩は生涯忘れません!!」
涙ながらにそう叫びながら、レプラコーンのモメットは何度も何度も頭を下げた。胸の前に重ねられた手には、世界樹の素材で作られた『エルフの秘薬』がしっかりと握られていた。
「いや良いんだ。それより、移住する者が決まったら『フレンド・チャット』で連絡してくれ。迎えにいくから」
「はい、必ず!」
深々と頭を下げたモメットが顔を上げると、その近くにいたイマメルバーンがモメットの肩に手を置いた。
「済んだか、モメット。では行こうか」
「イマメルバーン様、よろしくお願いします」
目的を果たしたモメットが、イマメルバーンの『転移魔法』で共に飛んでいく。モメットが通常で使っている方法が使えないので、レプラコーンの隠れ里を知っているイマメルバーンが送っていったのだ。
ただ、レプラコーンもまた、可能であるならば世界樹の側で暮らしたいとの事だったので、モメットをフレンドにして連絡を取れるようにしてから送り出した。
これからレプラコーンの隠れ里で俺達の事を話し、移住希望者がいれば、エルフを迎える『森と遺跡の浮島』に受け入れる予定だ。布製品の加工ではレプラコーン以上に腕を持つ種族は居ないらしいので、その力を借りられれば、きっとやれる事が増えるだろう。
◇
さて、世界樹関連で予想外な事も色々と起きたエルフの里だったが、エルフやレプラコーンが移住してくる事も決まり、肉体を得た『世界樹の化身』達も『レナスティア』に常駐する事になった。
エルフとレプラコーンに関しては移住に少し時間が掛かるが、世界樹達はすぐにでも…………と言うか、俺達について来ると言っているので、俺達は『レナスティア』の世界樹とその世話をするドライアド達に加えて、数名の『世界樹の化身』達も連れて、『レナスティア』へと帰還していた。
ちなみに俺達が乗って行った飛空艇『アベルカイン』には、数日前にはもう帰還を命令していたので、すでに『レナスティア』のドックの中だ。
そして『レナスティア』に戻った途端に行動を開始したのは『世界樹の化身』達だ。
俺の仲間達から様々なお菓子やらジュースやら料理やらお酒やらを出された時に、たわいもない雑談に出て来た『コンビニ』にとても興味を持ったらしく、ティアナ達女性陣を連れて、さっそく出掛けてしまった。
残ったメンバーの内、バルタは世界樹達についていった妹達に合流するために街へと向かい、アレスとドゥルクは俺にそっくりな世界樹の子供とドライアド達を連れて、世界樹の本体がある浮島へと向かって行った。
そんな訳で、この場には俺とアルジャーノンだけが残った。
「じゃあ僕は『技巧神の大工房』に戻るね」
「あ、ちょっと待ってくれ。少し話したい事があるんだ」
工房での作業に戻ろうとしたアルジャーノンを引き留めて、俺はレティアを呼び、天空城の適当な部屋へと移動した。
「それで、どうしたの改まって? ガモンくんの事だから、スキルに関する事なんでしょ?」
「うん。まぁスキルと言うか、クエストで貰った報酬なんだけど。…………幻獣討伐の報酬が届いたんだよ」
幻獣討伐の報酬。それは明確には記されていなかった報酬だ。
宇宙の『方舟』から落ちて来た幻獣の討伐。緊急クエストだったそれの報酬は、『相応の物を送る』というボヤけたもので、しかも討伐が終わっても直ぐには送られて来なかった。
その報酬が、つい最近届いたのだ。
届いたのは『一通の手紙』を模したアイテム。その名も『神器の設計書』だ。
☆?『神器の設計書』
・便箋三枚で一セットの設計書。これに欲しいアイテムの構造・能力・デザイン等を書いて封筒に入れて封をすると、それが神界にいる神々の元に届けられ、なるべく設計書の物に近い☆5アイテムとして作製してもらえる。
・使えるのは一度のみで便箋は付属の物だけが使える。封をしてしまった後の変更はできないので注意が必要だ。
「…………ってアイテムなんだけど」
「つまり、任意の☆5アイテムを作って貰える? それって物凄いね! 一応、『なるべく設計書の物に近い』って一文があるけど、ガチャの☆5相当まで許されるなら、結構何でもアリだよね?」
「まぁそうなるな。この辺はガバガバだと思う。余程にヤバイ物でない限りは却下なんてされないだろう」
「だね。…………それで、僕にそのアイテムの設計とかをして欲しいって話しかな?」
「いや違う。これで女神ヴァティーを自由にするアイテムを設計できないか?」
「ヴァティーを? ……………………不可能じゃない、出来るかも知れないけど、何の為にそれをするのか、聞いてもいい?」
女神ヴァティーが関わっているからか、アルジャーノンの俺を見る眼が少し細くなった。アルジャーノンとしては、ヴァティーに危険が及ぶ可能性があるかを確認せざるを得ないのだろう。
女神ヴァティーはアルジャーノンにとって、この世界で一番大切な存在であるのだろうから。