軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

435回目 インマッスル王の計画

「おい貴様! たしかガモンとか言ったな! 今すぐにあの空飛ぶ船を献上しろ! 僕が使ってやる!!」

「その脂ぎった口を閉じろチーデイ! 勇者殿、愚弟の言う事は無視してくれると助かる。あの体でこの国を生きるには無駄な虚勢を張るしかないのだ」

「薬臭いやつが僕に意見するな! 自然のままに生きるなら、兄上は骨と皮しか残らないだろうが!」

「自然のままだと? 気の向くままに何でも喰らう意地汚さが自然だと言う気か。貴様など、残飯処理くらいにしか役に立たぬわ!」

「なにぃ!!」

「よさんか貴様ら! 大人しくすると言うから同席を許したのだ! これ以上恥を晒す気ならば部屋から出ていけ!!」

立ち上がり、インマッスル王を挟んでにらみ合う二人を、同じく立ち上がったインマッスル王がその肩を押して無理やり座らせた。

二人の王子は体格だけは大きいが見かけ倒しのようで、インマッスルの片腕の力に負けて椅子に座らされる。

「見苦しい所を見せた事をお詫びする。この二人の事は置物とでも思ってくれ」

「…………はあ、解りました」

…………まいったねどーも。前情報より酷いじゃねーか。騎士であるダイキョが嘆くのも解るなこりゃ。いずれこの二人の下につくのかと考えれば、嘆きたくもなるか。

その後も、ことある毎に二人は対立し、最終的にはインマッスル王もブチギレて二人は騎士達によって退場させられていった。しばらくは部屋に監禁して反省させるそうな。

まあでも退場させてくれて良かったよ。特に第二王子のチーデイな。あいつの余りに無礼な態度に俺の隣に座るシエラは笑顔のままで殺気を振り撒いていたし、俺の後ろに護衛として立つ『メガリス』からもイライラが伝わって来てたもの。

…………って言うか、なんで同席させたし。

「いや、本当に失礼した。愚息どもの非礼、この通りお詫びする」

「え!? いやいや、頭を上げて下さい!!」

「父上!? 父上が謝る事では…………!」

膝に手を置き頭を下げるインマッスル王にコウハキンは慌てたし、俺もどうしていいか分からずに混乱してしまった。

だが、俺の隣に座るシエラは落ち着いた様子で、「なるほど、こうなると解っていてわざとあの二人を同席させたのですね?」と言い放った。

一国の王様相手になんて事を言うんだコイツ!? と、俺も『メガリス』もシエラに視線を送ったが、とうのシエラは澄ました顔をしていたし、顔を上げたインマッスル王はニヤリと笑って、「バレたか」と一言呟いた。

…………え!? シエラの言う通り、本当にインマッスルが仕込んだ事なのか!?

「いやいや、本当にわざとあの二人を同席させたんですか? こうなると解っていて? …………何の為に」

「…………それは恐らく、ガモン様があの二人に嫌悪感を持つように、でしょうね」

「…………意味が解らないんだけど?」

俺が首を傾げると、そこから先の説明はインマッスル王が自ら教えてくれた。

「要はな、ガモン殿があの二人に近付かない様にしたかったのだ。ドーピンもチーデイも、一国の王となるには少々頼りないからな」

「…………それって、もしかして次の王はコウハキン王子に決めているって事ですか?」

俺の質問に、インマッスル王はしっかりと頷いて見せた。

「親としては息子達には何も考えずに期待したいのだがね、一国を預かる者としては民に苦労を背負わせると解っている者に後を任せる訳にはいかんのだ」

「父上!? そんなの初めて聞きましたよ!?」

「当然だ、口にしたのは今が初めてだからな。ドーピンもチーデイも、貴族を集めて派閥をつくっている。だがコウハキンよ、お前にはそれがない。派閥の力が全てではないが、それが無ければ簡単に潰されてしまうのも確かだ。私は、お前には生きて王への道を進んで欲しいからな」

派閥同士の権力争いか。深く考えなくても、それが起きたら物凄い被害がでる事は間違いない。ましてや、それが貴族の力を借りられないコウハキンとなると、一方的にやられて終わってしまうだろう。

…………つまりアレか。コウハキンの後ろ楯に俺達をつける事で、ドーピンとチーデイの派閥に睨みを利かせた訳だ。

「…………父上。なぜ、俺なのですか?」

「…………ドーピンの奴は頭は良いのだが心が弱い。その結果として、ドーピンを傀儡にしようとした貴族に言われるがままに薬を服用し、あの歪な体になった」

ああ、聞いてた通りドーピンのあの体は薬で作られているんだな。…………あんなにムキムキになる薬とは、ヤバそうな匂いしかしないな。

「そしてチーデイは、もう見たままだ。第二王子と言う立場がそうさせたのかも知れないが、あれはこの国の風土に合わん。民は自国の王の顔も知らん者が多いが、その王が行った政策によってその背中を見るものだ。あの二人の背中では、民はついて来てはくれないだろう」

王様の顔は知らなくても、その政策に背中を見る、か。確かにそれなら、あの二人の背中にはついて来てくれそうに無いな。