作品タイトル不明
417回目 フレンドクエスト『フラウス』
「夜更けにわざわざ私の部屋を訪問されるとは、何かありましたかティアナ様。呼んで下されば私から出向きましたのに」
「もう、フラウス! ここには私と貴女しか居ないんだからそう言うのはやめて。友人として訪ねて来たんだから」
「フフ、そうかい。ならそうしようか」
騎士団の団長となったフラウスには特別な個室が用意されている。小隊長だった時よりも広く豪華になった部屋に一人で訪ねて来た困ったお姫様に苦笑しながら、フラウスはティアナに椅子を進めて、二人の席の間にある丸テーブルにワインのボトルとグラスを二つ置いた。
これらは我聞のガチャから出てきた物をゲンゴウの『タカーゲ商会』が取り扱っている物で、フラウスは客としてそれらを買うのが楽しみの一つになっていたのだ。
「それで、今日はどうしたんだいティアナ? 友人として訪ねて来るにしても、今の君は忙しいだろ? 夜は恋人と過ごすべきじゃないかな?」
「いいのよ、その恋人に頼まれて来たんだから」
恋人と言う言葉に頬を染めながらそんな事を言うティアナに、フラウスはクスクスと笑いながら、グラスにワインを注いだ。
「初々しくていいね。しかし、ガモン殿に頼まれて来たのかい? …………なんだろう、想像がつかないね」
「あのね、実はアレスの事なんだけどね」
「アレス殿? 彼がどうかしたのかい?」
「うん。その、アレスがね、貴女に興味があるらしいのよ」
ティアナの言葉を聞いてフラウスは数度瞬きをして少し考え、首を傾げた。
「興味? 私もアレス殿の強さには興味があるけど、改まって言う話かな? このところ毎日訓練も共にしているし、手合わせだってしているのに」
「そうじゃなくてね? アレスは女性としての貴女に興味があると言うか、平たく言うと好意を持っているらしいのよ」
「……………………好意?」
「うん。…………もう! 貴女の事が『好き』って事よ!」
「……………………好き…………」
ティアナの言葉をゆっくりと反芻して、フラウスの顔が徐々に真っ赤になっていく。
フラウスとて、周囲に男が居なかった訳ではないが、フラウス自身の高潔さと何よりも強さによって、周りにいた男達はどうしても一歩引いてしまっていた。
フラウスに真っ直ぐに好意をぶつけてくるのは女ばかりで、フラウスも貴族として将来的にどこかに嫁ぐのならば、恋愛などする必要もないと、そういった事から離れていた。
そんな中でアレスと言う男は、自分よりも強く、高潔で、なにより格好良かった。フラウスは今この瞬間まで意識してはいなかったが、自分でも知らず知らずのうちにアレスに引かれていたのである。
それをフラウスは、今しっかりと認識した。
「…………!! こ、これは…………!!」
「どうしたの?」
「え!? あ、いや…………」
自分の気持ちに向き合った事で、フラウスに一つの変化が起きた。それはティアナにも言いづらい事だった。
今、フラウスの目の前にはウインドウが出ている。それは我聞に『フレンドクエスト』を依頼するかどうかの確認であり、フラウスのフレンドクエストの内容はアレスと同じく、自分の恋の後押しをしてもらう事だった。
アレスもフラウスも、剣の修業や自身の周りの事を重視して生きて来た。奇しくも二人とも、この恋が初恋であり、自分が異性の事でこんなに戸惑う事になるとは考えてもいなかった。
だからこそ、その戸惑いや不安、そしてこの恋に対する期待や嬉しさが『フレンドクエスト』として表面に出て来たのだ。
そんなフラウスの戸惑いを他所に、フラウスの反応を見て脈アリだと気づいたティアナは、畳みかけるようにアレスの気持ちを伝えた。ティアナとしても、二人が好きあっているのならば、是非とも幸せになって欲しいのだ。自分が今、まさに幸せだからこそ、その幸せをフラウスにも感じて欲しいと考えていた。
そしてティアナの話の中で、アレスにもこのフレンドクエストが現れており、既に我聞に相談している事を知ったフラウスは、緊張に震える指で、密かにフレンドクエストの依頼を出した。
◇
「えぇーー…………」
「どうかしましたか?」
「ん? あぁいや、何でもない」
ティアナにフラウスの所に行ってもらい、俺はアレスと『レナスティア』の街に配置した☆4の店にあった居酒屋に来ていた。
丸っきり日本の居酒屋で焼き鳥やホッケなんかを肴に焼酎を飲んでいる。まあ、アレスには焼酎はちょっと合わなかったみたいなので、アレスが飲んでいるのはウイスキーだけどな。日本の居酒屋はなんでもあるから。
しかしまさか、フラウスからもフレンドクエストが来るとは思ってなかった。内容もアレスと一緒なので、なんの事はない、この二人は両想いだったのだ。
数日前の俺なら『爆ぜろ』と思っている所だが、今や俺も『爆ぜる』側である。素直に二人を祝福してやろう。
そして、俺はアレスにフラウスのフレンドクエストの事は告げずに、フラウスをデートに誘うようにアドバイスした。
両想いである事を伝えたとしても、アレスから告白をした方が良いのは変わらない。相手の事を考えて準備するのも、誠意の内だと俺は思うからだ。
アレスは俺の言葉に頷き、後日フラウスをデートにさそって告白し、結婚する事になったそうだ。
そう、付き合う事になったと言う報告を受けるのかと思ったら、まさかの結婚すると言う報告だった訳だ。
…………いや早くね? そう思ったがどうもあの二人、一途な性格で相手を強く想い過ぎていた為に、初デートのその日に結婚の約束まで突き進んだらしいのだ。
まぁ、あの二人なら大丈夫だとは思うが、俺とティアナはまだ婚約式を控えるって辺りなのに、一足飛びに追い抜かれた気分である。…………いや、いいんだけどね? フレンドクエストも二つクリアして、『トゥルー・フレンド』も二人増えたから。
ちなみに俺とティアナの婚約式の数日後には、アレスとフラウスの結婚式が行われるそうです。…………早くね?