作品タイトル不明
415回目 フレンドクエスト『アレス』
俺とティアナの婚約が、テルゲン王国で大々的に発表された。
俺の仲間達にはプロポーズをした後すぐに話して祝福して貰ったが、ここで初めて知った街の人達の反応は、まず「ガモンって誰だ?」から始まり、あの『天空城』を持つ勇者だと聞いてから歓声を上げる、と言う何とも現金な形になった。
まぁ、俺が目立ってテルゲン王国のために何かをした事なんか無いからな。俺の事なんか知らないよね。まさかこのテルゲン王国で召喚された勇者だとも思っていないだろう。
そして俺とティアナの婚約式の準備が始まると共に街は少しずつ賑わい始めた。何と言うか、デカイお祭りの準備をしている時のように活気が出て来ている。
この間に俺の持つ飛空艇は三隻目となり、『アベルカイン』に続く飛空艇は、その名も『ブレイブレイド』と『クラスマジック』と言う、何とも中二チックな物になった。仲間内で名前を募集して、厳正にクジで決めた結果である。
名付けにあたって俺が付けた条件は一つ。二隻目をBから始まる名前に、三隻目をCから始まる名前にする、という物だけだ。一隻目が『アベルカイン』なので、分かり易くしたかったのだ。
中二チックという点に置いては、その名前決めに絡めて密かに『Aナンバーズ』とか頭の中で考えていたので、俺も人の事は言えない。まぁ、みんな飛空艇自体に度肝を抜かれるので、名前なんて気にしないだろう。…………気にしないで貰いたい。
ともかく、三隻になった飛空艇の『ブレイブレイド』と『クラスマジック』を使って、俺とティアナの婚約式を各国へ報せる為に、カラーズカ家に古くから仕えている騎士達が旅立った。
その中にはドゥルクとカーネリアも含まれた。二人とも貴族や王族との交流があったので交渉の席にも着けると、俺のクランメンバーを代表して飛空艇に乗り込んだのだ。
飛空艇なら各国の移動はアッという間だが、幾つかの国を経由するので、十日程は掛かる見込みだ。各国には俺とフレンドになっている騎士を一人ずつ配置する事で、スムーズに連絡を取れるようにもする。返事を貰うにも、手紙とかでは面倒も多いからな。『フレンド・チャット』が使えるならそれが一番良いだろう。
なんやかんやで俺とティアナの婚約式が行われるまでには一ヶ月以上は掛かるようだ。その間に、式場と俺達の衣装を作るのだと言う。
この式場と衣装はガチャで賄ったりはしない。この婚約式で生まれる様々な『特需』は、戦争で人が離れた国に人を呼び戻す事にも繋がるとレクターが言うので、お任せする事にした。義父になる人の顔は立てないといけない。
「…………採寸も終わったし、あとは仮縫いの時に付き合えばいいだけとなると、時間が空くな」
ティアナの方は他にも色々と準備があるとかで忙しくしている。俺も手伝ってはいるのだが、基本的にはティアナの思い描く式をそのまま叶えてやりたいので、あまり出番が無いのだ。
俺は衣装につける宝石やら装飾品の事が解らない。ティアナのドレスだけでなく、俺の方にも色々と装飾品がつくと聞いてはいるが、何も知らないド素人の意見は現場を惑わす。なのでこの辺りはプロにお任せである。
だって、国によっては侮辱になる模様や宝石があるとか言われたし、好き勝手にデザインしたら絶対に地雷を踏むだろう。せっかくの晴れの日に、それはちょっと遠慮したい。
と言う訳で暇をもて余していると、中庭の片隅にアレスの姿を見つけた。珍しい事に、あのアレスがベンチに座って空を見上げ、完全に気を抜いてボーッとしている。
最近はやけに張り切って、フラウス騎士団のフラウスと手合わせをしていたのを見てたが、どうかしたのだろうか? フラウスからは「アレス殿は凄いな。同年代の者で私より強い者はそうは居ない。久し振りに少し自信が揺らいだよ」と、イケメンなコメントを貰っているし、負け越している筈は無いのだが…………。
「どうかしたのか? アレス」
「!? こ、これはガモン殿…………!」
「ああいいよ立たなくて。と言うか、隣いいか?」
「は、はい。どうぞ」
慌てて立ち上がろうとしたアレスを制して隣に座ると、何だか妙に気まずい雰囲気が流れた。…………いや、マジでどうしたんだろう。いつものアレスじゃないな。
「なんだ、何か悩み事かアレス?」
「あ、いえ。…………まぁ…………」
歯切れが悪い。こんなアレスは初めて見た。俺は取り敢えずアレスを元気づけようと、努めて明るくアレスに話し掛けてみた。
「いやどうしたんだアレス! 何か悩みがあるなら俺に相談してみろ。今の俺は無敵だぞ? どんな悩みだってドンと来いだ! それこそ恋の悩みだって大丈夫だぞ? 婚約者もいる身だからな!」
「…………!!」
と、そんな風に声を掛けてみると、アレスがハッとしたように顔を上げて、俺の顔をジッと見て来た。
しまった、ちょっと調子に乗り過ぎたか? と、俺が冷や汗を流していると、アレスは目を閉じて何やら決意をするように息を吐くと、目の前の何かに手を触れた。それは、俺には見えていないウインドウにタッチするような仕草であり、その直後に、俺の目の前にもウインドウが現れた。
《フレンドクエスト・アレス》
『アレスの恋模様』
・フラウス騎士団のフラウス団長に心を奪われてしまったアレスの、恋の悩みを解決せよ。
・一目見て恋に落ち、一言話して心を奪われ、一度手合わせして『この女性しかいない』と心に決めました。しかし初めての事に戸惑いが大きく、自分ではどうしようもありません。相談に乗ってはくれませんか?
依頼主:アレス
「……………………」
「……………………」
……………………マジで? フレンドクエストって、恋愛相談とかでもアリなの?