軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

351回目 エルドルデの卵

(フーーッ、フーーッ)

「……………………?」

朝。俺の顔に何やら生暖かい、それでいて薔薇の香りがする空気が吹き付けられるのを感じて目を覚ますと…………。

「ガモンちゃん…………!」

「うわぁぁーーーーっ!!??」

視界いっぱいにエルドルデの顔面が広がっていた。

「わぁぁーーーーっ!!??」

「落ち着いてガモンちゃん。アタシよ、エルドルデ」

「ひぃっ!? ビクともしない!!」

思わずエルドルデの顔を殴りつけるも、ゴツい首の筋肉のせいかビクともしない。俺の恐怖に反応したのか、俺のジュエルドラゴンであるグラックまで飛び出して、エルドルデの顔面を尻尾で殴りつけ始めた。

「あらカワイイ。この子がガモンちゃんのジュエルドラゴンなのね?」

「いや落ち着いて話してないで退いてくれませんかねぇ!?」

「ダメよ落ち着けない!! 聞いたわよガモンちゃん! このジュエルドラゴンって美しい子達は、アナタの持っている☆5アイテムで作れるんですって!? アタシにも! アタシにもプレゼントしてちょうだい!! お礼に一晩つきあってあげてもいいから!!」

ズズイッ! と更にドアップになるエルドルデの顔圧に俺の恐怖は更に高まった。体を動かして逃げようにも覆い被さったエルドルデにガッチリホールドされていて身動きが取れない!

「近い近い近い!! 結構です!! お礼はいらないから! 作りたいなら作らせてあげるから!! 早く退けぇーーーーっ!!」

恐怖体験でしかなかった目覚めの後、俺達の世話をしてくれているモッペさんが用意してくれた朝食を食べた。

昨日、白狐族の人達にはガチャ食材も大量に卸したのだがそれがかなり好評で、得に野性味あふれる肉と川魚ばかりだった白狐族に、ガチャ食材の美味しくなるように育てられた家畜の肉と鮮度が保たれた海の幸はメチャクチャ喜ばれた。

朝食も、俺のガチャ食材が使われた料理が半分を占めていたし、モッペも調理してみたかったのだろう。

そしてエルドルデの強い希望で、☆5『ジュエルドラゴン製作キット』を取り出し、エルドルデのジュエルドラゴンを作る事になった。

「これで作れるのね? アタシの卵が…………」

鳥獣人が『自分の卵』とか言うとなんか意味深だな。いやまぁ、エルドルデはおっさんだし、当然だが卵を生んだりは出来ないけどな。…………ああ、だからこそ余計に欲しいのかもな。

「これでジュエルドラゴンの卵をまず作る訳だけど、ジュエルドラゴンを作る為には魔力を持った宝石が必要になるんだ」

「あらそうなの? 魔力を持った宝石なんて、結構貴重な物が必要なのね」

「エルドルデが持ってないなら、俺達の手持ちから選ぶ事になるけど、どうする?」

「…………いえ、そう言う事なら取って置きを出すわ! かなり貴重な宝石だけど、我が子の為と思えば惜しくなんてないもの!!」

…………我が子て。いや別にいいけども。

「アタシが現役時代の最後に手に入れた魔宝石。アナタは、この時のためにアタシの所に来てくれたのね」

何か詩人みたいな事を言っているが絶対に違うと思う。

そしてエルドルデが自分のマジックバッグから取り出したソレを見て、俺達は揃って息を飲んだ。

それは何かの宝石の原石だった。岩の台座から鋭く伸びた何本もの水晶石が天に伸びているが、その一本一本が別の色を持っており、さらに一本だけを見ると、先端から台座に向かって色の濃度が濃くなっているのが解る。

「…………凄いなこれ」

「そうでしょう? アタシの冒険者人生の中で一番のお宝だもの。ギルドマスターになってからも、冒険者が持ち込んだお宝はいくつも見てきたけど、この『オールカラーズクリスタル』を越える物は見てないわ」

「…………え? って事は、これをジュエルドラゴンにするの?」

「もちろんよ。大切にしてきた宝石ですもの。これが生きた宝石としてアタシの所にくるのなら、こんなに嬉しい事はないわ」

「マジかぁ…………」

いやまぁ、エルドルデの物なんだからエルドルデの好きにするのが一番良いんだけどさ。大丈夫かコレ? 見た感じ、国宝級の代物に見えるんだけど。威圧感ハンパないし。

だが、そんな俺達の考えも他所に、エルドルデは宝石を躊躇いなく『ジュエルドラゴン製作キット』にセットした。

もうこうなってはしょうがない。俺も腹を括って『ジュエルドラゴン製作キット』の使い方をエルドルデに説明した。

そして待つこと数分。ついに、エルドルデのジュエルドラゴンの卵が完成した。

それは一つ一つの色が違う翼に覆われた、カラフルで美しい卵だった。エルドルデの派手さもあって、これがエルドルデのジュエルドラゴンの卵だと言われれば妙に納得してしまうほどに、エルドルデによく似合う。

「…………これが、アタシの卵。ずっと夢に見ていた我が子なのね…………」

エルドルデはそう言いながら、両手でジュエルドラゴンの卵を包み込み、そっと涙を流した。

それはジュエルドラゴンの卵であって、決してエルドルデの卵でもなければ我が子でもないのだが、余計な口は挟まない。なんであれエルドルデが大切にしてくれるなら、きっとそれは、これから生まれて来るジュエルドラゴンにとっても幸せな事だと思うからだ。

エルドルデも幸せそうに笑っているので、これで良いのだ。