作品タイトル不明
346回目 白狐族の暮らし
俺達が泊まるドーム状のテントはかなり大きかった。中に入るとまず数段の下り階段があり、そこを降りた先の板の間で靴を脱ぐ。
白狐族のテントの中は何枚もをずらして重ねた絨毯が敷き詰めてあり、土足厳禁なのだ。
「おお、あったけーー」
ドーム状になった猛吹雪の中にある『白狐族の里』も、それほど寒い訳では無かった。薄着でいると肌寒い、くらいの気温に保たれていたのだが、テントの中は本当に暖かい。ストーブでも焚いてあるようだ。
「この季節、調理場にある竈には常に火が入っています。もちろん料理の為に使う竈ですが、料理の他にもテントの中を暖める意味合いもあります。火の番は皆様のお世話をする者がしますので、皆様は気にせずにくつろいでください」
テントの中に入ってそう説明を受けていると、奥から一人の中年の白狐族の女性が出て来て、俺達に頭を下げた。
「皆様のお世話をするよう仰せつかりましたモッペでごさいます。何かあれば、何なりと仰ってください」
「お世話になります。ガモンです」
「「お世話になります」」
俺達も自己紹介をしながら頭を下げた事にモッペは少し驚いたようだが、柔らかく微笑んで「よろしくお願いします」と言って下がっていった。
「このテントは寝室が三つありますので、お好きにお使い下さい。私も隣のテントには居ますので、何かあれば声をかけてください」
「はい、ありがとうございます」
カックが去った後、俺達はさっそく部屋割りを決めた。
まずシエラとカーネリアで一部屋、これはもう決まりきった組み合わせだな。そしてエルドルデが一部屋、俺とアレスで一部屋である。
男の方はちょっと揉めた。エルドルデがアレスとの相部屋を希望したからだ。
ダメに決まってるだろ。なんでヤギを狙う狼とヤギが相部屋になるんだよ。そのヤギは戦えるヤギかも知れないが、狼がムキムキで歴戦の強者となれば意味がない。アレスも俺の護衛という観点から絶対に一人部屋には出来ない!! と、俺をダシにして全力で拒否っていたのでエルドルデは一人部屋になった。
「はぁーー。ま、しょうがないわね。じゃあアタシ、先に温泉に行って待ってるからね?」
ヤレヤレと溜め息をついてコチラに投げキスをし、先に温泉に行くエルドルデ。…………待ってるって何だろう? 本当に意味が解らない。俺とアレスはこれからちょっと散歩に行くのだ。温泉には夜にゆっくりと入るのだ。
俺とアレスは部屋に荷物を置いて着替えると、頷き合って静かに外に出た。別に誰かに見つかりたくなかったとかではない。疲れているであろう仲間達を気遣っての事である。
「それにしても、ここは不思議な里ですね」
「本当にな。雪に囲まれているどころか、猛吹雪の中にいるってのに、この里はそんなに寒くないしな。あれかな、かまくら的な効果かな?」
「ああ、そうかも知れませんね。…………おや、あれはニッカとダッカじゃないですか?」
「本当だな。それにあれは、この里の子供達か?」
里の中を少し歩くと、やけに人が集まっている所があった。どうやらニッカとダッカが無事に帰って来た事を皆で喜んでいるらしい。
あの大ババ様と呼ばれていた里長は居ないが、ニッカとダッカはジュエルドラゴンも出して皆に紹介していた。初めて見るであろうジュエルドラゴンには、里の大人達も目を丸くして驚いている。
「あっ! ガモン兄ちゃん! アレス兄ちゃん!」
「お、ダッカが俺達に気づいたな」
「手を振ってますね、行ってみましょうか」
この里の人達にも挨拶をしたかったので、俺達はニッカとダッカが中心にいる集まりに向かった。
「おおっ! あなた方がニッカとダッカを助けてくれた方々ですか! あなた方に心からお礼を申し上げます!」
「我らの子を救って下さり、ありがとうございます!!」
「「ありがとーー!!」」
俺達にお礼を言う子供達の手には、ニッカとダッカに持たせていた物か駄菓子が握られていた。
白狐族の皆から言われるお礼の言葉に少し照れくさくなる。俺はその照れ隠しもあって、スキル倉庫からキャンプなんかで使うテーブルを取り出し、その上に駄菓子を山積みにして出した。
「駄菓子ならいっぱいあるからな、遠慮無く食べていいぞ!」
「「わぁーーーー!!」」
駄菓子に群がる子供達…………いや、大人も混じってるな。白狐族は、冬の間はこうして閉鎖された空間で過ごすらしいので、元から里の外に中々出ない白狐族でも、やはり息が詰まるのだろう。
まあ『外に出れるけど出ない』のと『外に出られない』のでは大きな違いがあるからな。猛吹雪で空が見えないのも、その要因だろう。
あまり彼らの生活を変えるのも良くは無いが、少しボードゲームでも置いていこうかな。彼らも、冬の間に街で売るための絨毯や織物などの工芸品を作る仕事はあるそうだが、やはり多少の娯楽は必要だと思う。なんなら、俺のガチャアイテムを駆使すれば遊具のある児童公園のひとつ位は余裕で作れるからな。
でも勝手に何かやると問題になるので、大ババ様に挨拶がてら相談しよう。もちろん要らないと言われたら、余計な事はしないさ。