軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

282回目 時を越えた双子

「おぉーーーーん!! トレマァ!! イオスゥ!! やっと!! やっと助けられた!!」

「えっ!? ちょっ! 何!? ウソ!? お父さん!?」

「トレマちゃん違うよ!! お父さんは死んじゃってるよ!! えぅっ!? だ、誰!? お兄ちゃんはどこ!?」

「あっ! そうだ!! お兄ちゃん!! ちょっと! 離して!! お兄ちゃんどこ!?」

カオス。…………全裸の美少女二人にオッサンが号泣しながら抱きついて、美少女二人の抵抗を受けている姿はもはや事案である。

しかも石像になっている間に時間が経ちすぎているために、二人とも自分に抱きついているのがバルタだと分からない様子だ。トレマなどは、兄を父親だと勘違いしていた。まあ、親子だし似ているんだろうな。

…………それにしても、だ。目のやり場に困る。全裸の美少女が二人だからな。バルタが抱きついているとは言え、見えてはいけない部分が見えそうになる。

いや、ちゃんと眼は逸らしてますよ? ただ気になると言うか、チラチラ見ちゃうと言うか、なんとも困った状況である。

「そこまでにして下さい。ほら、バルタさん。二人とも裸なんですから」

そう言ってバルタを引き離したアレマーが、二人にバスタオルを掛けてあげた。

「「…………え? …………キャーーーーッ!?」」

トレマとイオスも、バスタオルを掛けられた事で、ようやっと自分の今の格好に気がついたらしい。物凄い悲鳴を上げながら、バスタオルで身をくるんだ。

そして俺とバルタは、アレマーに背中を押されて部屋を追い出されたのだった。

それからしばらく時間をおいて。

アレマーに付き添われて風呂や食事を済ませたトレマとイオスの双子の姉妹は、再び実の兄であるバルタと対面する事になった。

アレマーが用意したと思われる、ガチャアイテムっぽいラフな服を着てソファーに座るトレマとイオスの間には、なにやらすっかり懐かれた様子のアレマーが座り、双子は両側からアレマーの手を握っていた。

「「バルタお兄ちゃん!? ウソ!?」」

「嘘じゃねぇって言ってんだろうに。あっしの顔くれぇ、覚えてんだろう?」

「えぇーー。だって…………おじさんじゃん」

「顔が老けすぎだし、髪も薄くなってる…………」

「グハァッ!?」

必死で助けた妹達からの、容赦ない言葉が胸に刺さって、バルタは膝から崩れ落ちた。気の毒ではあるが、バルタの妹達は十六才らしいので日本で言えば女子高生。つまりは『JK』だ。これも仕方ない事かも知れない。

事の経緯は一応説明したのだが、説明されたからと言って、すんなり受け入れられる様な内容でもない。

何せ石像となってから三十年以上も経っているのだ。二人としては、『呪いで石化したと思ったら解けていた』くらいの一瞬の出来事なのだ。

いや、双子とて目の前にいるオッサンがバルタである事は解っているのだ。そのバルタがどれだけ自分を犠牲にして、必死に自分達を助けてくれたのかも理解している。…………だから後は、感情の問題だ。それがもっとも厄介なものではあるのだが。

「…………ゴメンお兄ちゃん。…………ありがとう」

「…………正直、ぜんぜん受け入れられてないけど、お兄ちゃんがあたし達を助けてくれたのは…………まあ、分かる。…………ありがとう、お兄ちゃん」

「いや、いいんだ。お前達とこうやって憎まれ口を叩き合うってのも、何度も夢に見た事だったからなぁ…………」

現実を受け入れきれず、バルタと距離を起きつつも、自分達を助けてくれた兄に礼を言う双子の姉妹と、何十年経とうと諦めず、ついに目的を果たしたバルタ。

ここから先のすり合わせは大変だろうが、時間の流れが引き起こした不具合は、きっと時間が解決してくれるだろう。

ぎこちなく会話を続ける三人を見てそんな事を考えながら、俺はアレマーと共に部屋を出た。

「…………しばらくは兄妹水入らずにしておこうか」

「そうですね。私もその方がいいと思います」

三人の様子は、アレマーが見ていてくれると言うのでお任せして、俺は子供達にどこかへ連れて行かれたアルジャーノンを探す事にした。

とは言え、子供達がどこに行ったかは予想がついていた。生活ガチャからは、子供が遊ぶような玩具もよく出てくるので、それを集めた部屋があるのだ。

と、言うわけでその部屋へと足を運ぶと、案の定アルジャーノンはそこにいた。

アルジャーノンを含む子供達は、テーブルを囲んでジェンガで遊んでいた。アルジャーノンは『拠点ポータル』を設置した時に、密かに『ウサピョン』と名付けていたウサギのぬいぐるみと同型の物を抱きしめて、真剣な表情でジェンガから一本抜こうとしている。

なんとも可愛らしい絵面だ。って言うか、やっぱり気に入っていたんだな、あのウサギのぬいぐるみ。

「よし、ここなら…………ああっ!?」

「「アハハハハッ! アルジャーノンの負けーー!!」」

しばらく様子を見ていたが、結局はアルジャーノンが崩して終わりとなった。

アルジャーノンはウサギのぬいぐるみに顔を埋めて悔しがっていたが、ずっと様子を見ていた俺にやっと気づいたらしく、抱きしめていたウサギのぬいぐるみを、ぬいぐるみ置き場に戻して、何食わぬ顔で俺の所にやって来た。

「こ、子供達の面倒は見ておきましたが、そちらは終わったんですか?」

「いや、完全に一緒になって遊んでいただろ」

少し赤面しながら誤魔化しにかかるアルジャーノンは、俺のツッコミを聞いて、顔を真っ赤にして視線を逸らしたのだった。