軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

263回目 『大蛇八首』

大柄な体躯を持った戦士『ベト』。その武器は大きな戦斧であり、その体格差から繰り出される一撃を喰らえば、バルタなど一撃で即死してしまうだろう。

…………もちろん、『当たれば』の話である。

『ヌンッ!! フンッ!!』

ドゴンッ! ドゴンッ!! と、大きな戦斧を叩きつけては床を破壊していくベト。その怪力は大した物だが、いかんせんバルタとは相性が悪い。

ベトの力任せの攻撃は全て躱されており、バルタはかなりの余裕をもって間合いを詰めていき、ベトの背後にしがみついてナイフの背を首に当てた。

『ハッハッハッ! やはり俺ではダメだな。バルタの慎重さはよく見ていたから、引っ掛からないだろうとは思っていたがな!!』

「ん? 引っ掛かる?」

戦闘が終わり、自らの蛇頭をペシペシと叩きながら笑うベトの言葉に、俺はちょっとした疑問を持った。ベトの言う、『引っ掛かる』という言葉が何を指しているのかが解らなかったのだ。

「まぁ解りやせんか。旦那、ちょっと見といて下せぇ」

俺の疑問にそう答えたバルタは、ベトが砕いていた床のガレキが集まった所に立った。するとバルタの重さに負けたのか足元のガレキが崩れ、バルタはまるで落とし穴に嵌まったかのように床に胸の辺りまで沈んだ!

「うわっ!? 落とし穴かよ!! いつの間に!?」

『ウム、ちょっとバルタの死角になったタイミングで床に毒を吐いておいたのよ。そして出来た穴をバレないようにガレキで塞いだのだ。結局はバレておったがな! ハッハッハッ!!』

ゴツくて力任せなだけの戦士かと思っていたら、そんな事は無かった。これ、俺なら確実に引っ掛かってた気がする。

そして引っ掛かって身動き取れない所をあの戦斧で…………! もう確実に死ぬヤツだ。

ともかく、二人目のベトを難なく倒した俺達は、続く八十三階層の『ギル』、八十四階層の『ダス』、八十五階層の『へー』と、次々に下していった。

いやいやバルタが強すぎる。一応、ダスを倒したタイミングでお昼を兼ねて(ダスにも振る舞った)休憩を取ったが、それが無くても問題無さそうなくらい、バルタは強かった。

何せ速い。バルタに『大蛇八首』が出て来てからバルタの装備やスキルをスピード特化にしたのもあるが、それはもう眼では追えない速さになっているのだ。そしてそれを気配を消す技術が達人級のバルタが使うのだから、同じ達人である筈の『大蛇八首』ですら、一瞬見失う事がある程だった。

それでもバルタと戦えているのだから、『大蛇八首』も十分に化物なんだけどな。

そして八十六階層。

ここで俺達を待ち構えていたのは全身黒ずくめの、忍者の様な姿をした寡黙過ぎる邪眼族だった。

『……………………(クイクイ)』

「…………何か手招きしてるぞ?」

「付いて来いって言っているようでやすね。まぁ、ここに来て罠もねぇでしょうし、ちょいと行ってみましょうや」

忍者みたいな邪眼族の後について行くと、ソイツはなんと階層を跨ぐ階段を降り始めた。

さすがに予想外だったが、下の八十七階層にいた邪眼族の姿を見て、俺達は何となく悟った。

何せソイツは、俺達を連れて来た邪眼族と同じような忍者の姿をしていたのだ。まあコチラは、暗い赤色の忍者服だったが。

『ようこそバルタ。俺は『大蛇八首』の一首『ザイ』。で、お前達を連れて来たのが、『大蛇八首』が一首で俺の弟でもある『バウ』だ』

『……………………(コクリ)』

「もしかして、二人で戦うって事ですかい? あっしは別に構いやせんが、旦那を参加させる気は無いですぜ?」

『いや違う。一対一に変わりはないさ。…………いくぞ、バウ!』

『……………………!!』

ザイが合図をすると、バウの体が床に沈んで消えた。…………いや、よく見るとバウの影だけは残っており、その影はひとりでにスルスルと動いてザイの影と合流すると、ザイの足元から何本かの影の蛇が現れ、ザイの体を登って巻き付いた。

「な、なんだアレ?」

『あれはバウの影魔法だ。バウは影を操って戦うのだが、その本質は『攻撃』よりも『強化』に優れていてな。特に自身の兄でもあるザイの強化を得意としておるのだ』

「へえ。……………………いや誰だよ!?」

バルタと向き合うザイとバウの様子を見ていると、いつの間にか俺の隣にたっていた豪奢な鎧を着た邪眼族が、バウがやっている技術について丁寧に説明をしてくれた。

『ん? おお、ワシは『ケト』と言う。『大蛇八首』の筆頭を務めておるものだ。いや、上がずいぶんと楽しそうなのでな、ついつい待ちきれずに上がって来てしまったわい』

筆頭!? 『大蛇八首』の筆頭が出て来ちゃったの!? …………え? それって、最後の砦じゃないの?

「…………あの、一応確認なんですけど。『大蛇八首』が出て来たって事は、八十八階層か、もしくはその次が最下層ですよね?」

『ウム。何を隠そうワシが最後の階段を護っておる者だ。あとは最下層だけだぞ?』

「いやダメじゃん!? 最後の砦が持ち場放棄したら!?」

『ガッハッハッ!! 言われてしまったな!! ガッハッハッハッハッ!!』

最下層の強固な扉が、最初から半開きになっているような暴挙。その扉を半開きにした犯人は、俺の前で自らの蛇頭を撫でながら、豪快に笑っていた。

そしてその様子を、向き合っているバルタ達ですらも、呆れた様子で見ているのだった。