軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

262回目 邪眼族の騎士

邪眼族の螺旋迷宮・八十一階層。

階層の番人として立ち塞がったのは邪眼族の騎士『レフ』。バルタが名乗って前に出て、俺が少し下がった事で勝負はバルタVSレフの戦いとなった。

「行きやすぜ」

『いつでも』

レフの返事を聞いた瞬間、バルタの姿は掻き消えて。レフの左側で剣とナイフがぶつかって火花を上げた。

「こりゃあ驚きやしたぜ! 今のに初見で合わせられたのは初めてでさぁ!」

『我が種族は邪眼族。そして我らはその中でも特に戦闘に秀でた『大蛇八首』だ。ナメて貰っては困るな!』

火花を散らしながら何度か打ち合い、距離を取る二人。次に動いたのは、邪眼族の騎士レフだった。

まるで舞うように剣技を放つレフ。身体は人間のようだが、どうやら骨格は違うらしく、その腕は関節を無視して蛇のように動いた。

だが、バルタも邪眼族との戦い自体は初めてではない。それを予測していたように紙一重で躱すと、投げナイフを二本投擲した。

『この程度、何の意味も…………グッ!?』

投げられたナイフを首を左右に動かして軽く躱したレフだったが、何故かその直後に首を押さえて仰け反った。

そしてバルタは仰け反るレフの足を払うと、仰向けに倒れたレフの剣を踏みつけ、ナイフを突き付けた!

『…………見事だ。敗けを認める』

「…………ふぅ。なら、あっしの勝ちって事で」

どうやら決着はついたらしい。…………が、あまりにもアッと言う間に終わったので、俺には何が起きたのか、よく分からなかった。

『こんな手に引っ掛かるとは、僕もまだまだですね』

おそらくは素の喋り方に戻ったレフが、立ち上がりつつ首を押さえた手を握って前に出すと、その下の方にバルタが投げた小振りのナイフが二本ぶら下がっていた。

戦いも終わったし、何やら邪眼族のレフも友好的な雰囲気なので近づいて見てみると、バルタの二本の投げナイフは、細くて黒く塗られた鎖で繋がっていた。

…………なるほど、レフは投げナイフは綺麗に避けたけど、この鎖に首を絡め取られて隙ができたのか。そしてそこにバルタが足払いをかけて終わった訳だ。

『バルタが斥候職なのは知っていたのに、暗器の可能性を見逃すとは…………。これは僕の未熟さだな。参りました』

「ずいぶんと、あっしの事を知っているようで」

『それはそうでしょう? 貴方はこのダンジョンの常連ですからね。バルタはこのダンジョンでは、色んな意味で有名ですよ』

「バルタが有名? 色んな意味ってのは?」

『挑戦者として、不屈の戦士として、探求者として、…………あとは、友や家族の仇として。貴方は、このダンジョンに挑み過ぎてますからね』

「…………まぁ、色々やりやしたからね。恨まれてんだとしても、覚悟の上でさぁ」

バルタは後頭部をかきながら、俺から目を逸らした。きっとバルタは、このダンジョンをクリアする為に『色々』試したのだろう。それこそ、人に言えない様な事も。

『でも偶然か必然か、貴方は正しい道を選んだようですね』

そう言いながら俺を見るレフ。蛇頭なので表情は読み取れないが、何となく優しげな雰囲気だ。

「それは?」

『最下層に行けば解る事ですよ。…………最後にひとつ聞いても?』

「なんでしょう?」

『バルタなら、ここの壁に『邪鼠』が出て来る穴が無い事には気づいていたでしょう? 僕を殺さなかった理由は?』

「まぁ、勘ですかね。なんとなくですが、殺したら『邪鼠』とか関係なしに呪われそうな気がしたんでさぁ」

『……………………正解だよ。じゃあ、次に進むといいよ。…………あぁそうだ。君達は僕らの女神様のレリーフを集めていたね。はい、渡しておくよ』

「…………えっと、俺達が言うのもなんだけど、いいのか?」

『いいよ。同じ物はいくらでも作って貰えるから』

「ちなみになんですがね、これ材質は何でやすかい?」

『ん? …………何だったかな? 確か、『アンオブタニウム』とか言っていたな。詳しくはこれを作った本人に聞くといい。彼も最下層にいるから』

ふーーん? 『アンオブタニウム』ねぇ。…………知らないな、何だコレ?

「アンオブ…………? 聞いた事がありやせんね。どうです、旦那? 旦那の世界にはありやしたか?」

「いや、知らない。俺が知らないだけかも知れないけど、魔力が絡んだら間違いなく無いな」

『言っておくけど、僕も知らないからね。知りたかったら、やっぱり最下層まで行くんだね』

ベテランのバルタですら知らない金属を手に入れて、俺達は先に進んだ。八十一階層の奥には、すぐに階層を下りる階段がある。

「バルタ。これ多分、連戦になるけど大丈夫か?」

「ええ。まだ余裕があるんで大丈夫ですぜ。行きやしょう」

バルタが大丈夫だと言うので、俺達は階段を下りた。

その先にあるのは、もちろん八十二階層だ。そして前の階層と同じくワンフロアだけのその階層の真ん中には、一人の騎士が立っていた。

『ウム! とうとう来たなバルタよ!! 我が名は『ベト』!! 邪眼族は『大蛇八首』が一首である!! いざ尋常に勝負しろ!!』

邪眼族『大蛇八首』の二人目は、なんだか暑苦しい戦士だった。