軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

247回目 廃墟のダンジョンマスター

モンスターに占領され、ダンジョン化した廃墟の街。

その中をスキルの検証と戦闘訓練をかねて走り回っていたが、その様子は俺の知るダンジョンとはかけ離れており、ただの『廃墟の街』と言う印象の方が強かった。

確かにモンスターは闊歩しているし、宝箱も幾つか見つけたし、倒したモンスターも放っておけば消える。

だが、やはり青空の下と言うのはダンジョンっぽくない。階層を跨ぐ階段とかも無いし、罠も宝箱に仕掛けられた物だけだ。

うーーん。条件だけ上げていけばダンジョンなんだけどな。…………青空、青空だな。俺がダンジョンに潜ってる気分になれない原因は。

「旦那、さすがに呆けるのはどうかと思いやすぜ。あっしの索敵だって万能って訳じゃないんですから、こんな所で気は抜かねぇでくだせぇ」

「ゴメン。気をつける」

バルタに普通に怒られた俺は、素直に謝った。

「わかってくれれば良いんでさぁ。…………で、着きやしたぜ。代官の屋敷でさぁ」

この廃墟の街で一番デカイ建物、代官屋敷に辿り着いた。流石に領主が住む城程ではないが、立派な屋敷だ。それに不気味さはあるが、多少の手入れはされているらしく、他の建物のように壁が崩れたりはしていない。

「…………? なんでだか、この屋敷だけキレイだな。それに、不思議な気配を感じる」

「…………こいつは盲点でしたぜ、話に聞いた事はありやしたが、与太だと決めつけてましたぜ。まさか実在するとは…………」

俺が首を傾げる横で、バルタが愕然とした表情で呟いた。その内容はよく解らないが、何かよほど驚く事があったらしい。

「なんだよバルタ。分かるように言ってくれ」

「…………端的に言うなら、このダンジョンのダンジョンマスターは『アレ』って事でさぁ」

そう言いながらバルタが指差したのは代官の屋敷だ。俺はその指差された箇所を探してみるが、そこには何もない。バルタが指差す先には、これから行く屋敷があるばかりだ。

「……………………?」

「…………まぁ理解は難しいでしょうね。もう一度言いますぜ、『アレ』がダンジョンマスターでさぁ」

そう言われてもう一度確認するが、やはりそこには屋敷しかない。

……………………いやいやいや。それは無いよな? そうは思うが、やはりバルタが指差す先にある物は、『屋敷』だけだ。

「え、嘘だろ? そんな訳ないよな? だってアレ、モンスターでも何でもない『屋敷』だぞ?」

「ええ。ですからその『屋敷』が、ダンジョンマスターでさぁ。流石にあっしも、実在するのを見るのは初めてですが、間違いありやせんぜ」

バルタの言葉を聞いた俺は、もう一度屋敷を見てから、バルタに当然の質問をぶつけた。

「…………どうやって戦うんだよ、あんなもん」

「やることは普通のダンジョンと変わりませんぜ、『ダンジョン・コア』を破壊すれば勝ちです。それをダンジョンマスターを倒してからやるか、ダンジョンマスターの体内でやるかの違いでやすね」

「た、体内?」

え? もしかして入るの? あの屋敷自体がダンジョンマスターだと解っているのに? 正気か?

「…………気持ちは解りやすぜ? でもアレは、そういうダンジョンマスターなんでさぁ。…………ちなみに、一度中に入っちまったら、ダンジョン・コアを潰すまで外には出られやせんからね。あくまで噂でやすけど、あの中で寝たりしちまったら、消化されるって噂でさぁ」

「ダメじゃん」

…………入りたくないなぁ。しかもコレって、『郷愁の禍津像』もあの中にあるヤツなんだよな。

「さ、行きやすぜ。普通は入念な準備がいる所でやすが、旦那ならいらねぇでしょう。あんなのは早く潰してしまうに限りやすぜ!」

「まあ行くしかねぇよな。…………行くか」

俺達はダンジョンマスターだと言う屋敷の外門を開き、まずは屋敷の庭に入った。その瞬間、門の外側の風景が歪み、廃墟の街が消えて、まるで絵の具をぶちまけた様なまだら模様になった。

「うわ気持ちわるっ!? って言うか、もうここから始まるのかよ!?」

「もう外には出られねぇみたいでやすね。まあ、元からそのつもりで入ったんですから構いやしやせんぜ。とっととクリアしてしまいやしょう!」

意気揚々と言うバルタに頷きで返し、足を前に進めると、まるで地面から湧き上がる様に、二体のオーガが現れた。

「さっそくお出ましで! やりやすぜ旦那!!」

「わかってる!!」

『『グオオオオッ!!』』

棍棒を振り回し、走って来るオーガに俺は身構え、バルタは横に跳んで死角に回る。そのバルタを追いかけようとしたオーガに、俺は『黒炎の短刀』に魔力を通して『黒炎弾』を撃ち出して牽制する。

そして丸太のような棍棒を振り上げたオーガの一撃を躱すと、そのオーガの頭に『衝撃の弾丸』が撃ち込まれたのかオーガの頭がブレて、俺に襲い掛かったオーガが一瞬で気を失い、倒れた。『ひのきの棒』の、『死角からの一撃で6割で気絶』という効果だな。相変わらず『ひのきの棒』は、バルタと相性が良い武器だ。

オーガの一体が気絶したので、残るは一体のみだ。そちらにもバルタの攻撃は当たっているのだが、気絶はしなかったらしい。

だが、気絶しなかったのなら何度でも試せるのが、この攻撃の良い所だ。俺は引き続きオーガの注意を引きながら戦い、三度目のバルタの攻撃で二体目のオーガも気絶した。

俺とバルタの連携も大分こなれてきたな。まあ、屋内だと、バルタが死角に回るのは無理かも知れないけど。