作品タイトル不明
246回目 モンスターだらけの街
廃墟となった街の一角で、俺は息を潜め、外を歩くモンスターの動きを見極めていた。
崩れた壁から見下ろす路地裏には、現在三体のモンスターがいる。それは三体とも『オーガ』と呼ばれる『鬼人族』のモンスターだ。
オーガは体長三メートルを越える巨体で筋肉質。そのゴリゴリの肉体を使った肉弾戦に特化した、Cランクのモンスターである。
角はいかついし筋肉はすごいし、肌のいろが青だの赤だのとカラフルだしとメッチャ怖い。
『グゴゴゴ、ゴルゴル』
『グルル』
『………………グゴグゴ』
……………………雑談してる? マジで? モンスターも雑談するの?
何やらゴルゴル言ってるオーガ達は隙だらけだ。その手にはオーガ達の武器である、丸太の様に太い棍棒があるが、それは今、地面に下ろされている。
つまり、油断。このオーガ三体は今、あり得ないほどに油断している。…………チャンスだ。
俺は静かに深呼吸をして☆4『黒炎の短刀』を構える。そしてオーガの一体に狙いを定めると、壊れた壁を越えて外へと飛び降りた!
「…………フッ!!」
『ゲギャァッ!?』
俺の体重も乗せた一撃はオーガの一体の首に突き刺さり、さらに短刀から吹き出す黒炎でオーガを内部から焼く事で、一気に絶命させた。
当然そうなると、残る二体のオーガの意識が俺に向く。その瞬間、オーガの一体の頭が鈍い破裂音と共に大きく横にブレた。
言わずもがな、バルタの狙撃である。『衝撃の弾丸(+2)』での狙撃ではオーガを殺す事は出来なかった様だが、攻撃を受けたオーガはしっかりと気絶している。
このオーガは、これから行く『邪眼族の螺旋迷宮』にいる『邪眼族』と同じくらいの強さらしく、バルタはわざと『殺さない無力化』をやったのだ。
『ギッ!? ……………………!』
仲間の一体は殺され、もう一体は狙撃された事で、残るオーガが混乱した。そこにバルタの狙撃が届き、残るオーガの頭がブレて衝撃に膝をつくが、『気絶』までは至らなかった。
バルタの狙撃を意識した時点で、『意識外の一撃』では無くなったので『気絶』の確率が6割になり、それにハズレたのだろう。
「狙い通りだな。なら次は!」
『グギッ!? グルルルルッ!!』
気絶はしなかったが体勢を崩したオーガを、俺はわざと浅く斬りつける。それによってオーガの意識は俺に向き、オーガは丸太のような棍棒を振り上げてコチラに向かって来た!
「うおおっ!! 恐ぇぇっ!?」
『グオオオッ!!』
振り下ろされる巨大な棍棒、だがそれを地面にぶつけさせる訳にはいかない。大きな音を立ててしまうと、モンスターが次々と集まって来るからだ。
「うおおおおっ!!」
『グルゥッ!?』
両手で構えた『黒炎の短刀』の上に、オーガの棍棒がぶつかった! 本来なら、こんなの受け止めたら潰されて終わりなのだが、今の俺には☆5『七星の盾』の永続スキルで『物理防御+100、魔法抵抗力+100』が付いている。
そのため、よく見れば俺の短刀とオーガの棍棒の間には薄い膜があり、それがオーガの棍棒を受け止めているのだ。それを破らない限り、俺にダメージを与える攻撃は届かない。
…………防げると解っていても恐いのは、もうどうしようもないけどな。
『グオオオオッ!!』
俺に棍棒を受け止められたと思ったのか、オーガが筋肉を膨らませて更に棍棒を振り下ろして来た。だがそれも俺の防御力を打ち破る事はできず、受け止められてしまう。
そして次の瞬間、オーガの頭が鈍い破裂音と共にブレて、オーガはその意識を刈り取られて地面に沈んだ。
「…………終わったな。よし、トドメだ」
気を失って倒れている二体のオーガにトドメを刺して、俺は素材である角と魔石を回収し、バルタから『フレンド・チャット』で連絡を受けて、落ち合う場所として決めていた民家へと戻った。
俺が戻ると、すでにバルタはそこにいてペットボトルの水を飲んでいた。
「お疲れ様でやす。取り敢えず、検証は上手くいってやすね。やはり狙撃という攻撃がある、と認識されていると『意識外からの一撃』は通りやせんね」
「そうだな。でも俺が完全に気を引いてしまえば問題ない事も解ったな。たぶん最後のアレは『意識外の一撃』が通っていただろ?」
「まあ、すでに三回繰り返して三回とも同じ結果になってやすからね。最後の狙撃は『意識外の一撃』と認識されたって事でいいでしょうね」
そう、せっかくのダンジョンの上に敵も条件に合うので、俺達は攻略と同時にスキルの検証も行っていた。
特に『ひのきの棒』が持つスキル『気絶』は、この後に行く本命ダンジョンを攻略するキモになるから、しっかりと検証しておくのだ。
あ、ちゃんと『郷愁の禍津像』の探索もしているよ? 取り敢えず街の中で有りそうな所は既に調べたので、後は代官の屋敷を調べるだけにはなっている。
街の奥に見える、この街で一番大きな代官屋敷。俺達の求める『郷愁の禍津像』も、このダンジョン化した街のダンジョンマスターも、おそらくはそこに居るはずだ。