作品タイトル不明
243回目 正しくは無いが間違ってない
翌日。目的もあるので早々に旅立つ事にした俺達は、ラグラフやメリア、それにあの要塞の住人達と共に、最初に俺達が囲まれた道にまで戻って来ていた。
「いいかいガモン。帰りもちゃんと寄るんだよ、待ってるからさ。約束だよ?」
「お、おう」
そう言ってメリアは俺を軽く抱き締めた。メリアは既にガチャ装備を身に付けているので期待したような柔らかい感触は無くてむしろ痛いが、昨日の今日でずいぶんと気に入られてしまった。
それもこれも、メリアに渡したガチャ装備の影響だ。
メリアはCランクの冒険者らしいのだが、自分に合う防具が無くて苦労していたらしい。仕方なくオーダーメイドで頼むのだが、そうするとかなり高いし、自分の思い描いた防具に出会えた事など一度も無かったのだと言う。
スタイルが良すぎると、それはそれで苦労がある。と言う事だな。
だが俺のガチャ装備は、使用者に合わせてサイズが変わる。男女での専用装備もあるが、例え女性専用の装備でも無理な物ばかりだったメリアは、昨晩これまでの鬱憤を晴らすかのように装備の試着を続けた。
メリアにとっては、装備を取っ替え引っ替え試着してみるってのは夢だったらしく、ラグラフもラグラフの家族も、その様子を微笑ましく見て付き合っていたので、俺も最後まで付き合った。
その為、メリアの中で俺は家族として認識されたらしく、僅か一晩でまるで弟のような扱いに収まった。
…………そう、弟である。それも便利な弟である。
いや別に変な期待をしていた訳でも無いんだよ? でもこう、男してさ、全く相手にされないってのもクルものがある訳で。
「ガモンが戻って来る頃には、ユミルとネリスも戻っているだろうからさ。きっとだよ!」
このユミルとネリスと言うのは、メリアのパーティーメンバーだ。そして二人とも、メリアと同じような悩みを抱えているらしく、この二人の装備についても頼まれたのだ。要は、二人もフレンドにして欲しい、と言う訳だ。
取り敢えずフレンドにどうこう以前に、会ってみないと話にならない。なのでメリアの願いは一旦保留にした。だってその二人が今居ないんだもの。しょうがないよね。
ちなみに、メリア達のパーティーの名前は『メガリス』と言うそうだ。メリアはガチャ装備のお礼として、ラグラフ王国の付近にあるダンジョンを探索し、『郷愁の禍津像』を探してくれると約束してくれた。
例の『禍津像探知機』を見る限り、この近辺にはまだ『郷愁の禍津像』がある。メリアにも見せたところ、その内の二つはダンジョンがある辺りと一致しているようだったので、お願いしたのだ。
そしてラグラフの方は、大量の食糧のお礼として裏組織の中で『郷愁の禍津像』が出回ってないか探ってくれるようだ。マジで助かる。
「その『郷愁の禍津像』ってのを破壊すれば『魔王』が消えるんだな? …………ったく、裏の立場になった時に『実は魔王は封印されているだけ』って知った時も衝撃だったが、まさかそんな簡単な事で魔王を倒せるとはな。ウチの国に封印されてるヤツを見つけたら破壊するぞ? メリアにやらせれば問題ないんだろ?」
「ああ、よろしく頼む」
「本当ならお前にやった三体も破壊しちまいたい所だがな。まあそれは、ガモンを信じて任せるぜ」
「わかってるよ。いずれにしろ『郷愁の禍津像』の破壊は絶対するから、任せてくれ」
ここで手に入れた三体については、どこに封印されているのか解らないからな。取り敢えずジョルダン王国のジョゼルフ王には『フレンド・チャット』で連絡は入れたので、調べてくれるだろう。
「ガモンの旦那、話は終わりやしたかい?」
「ああ。そろそろ行こう」
ラグラフ王国の住人や冒険者達と話していたバルタも戻って来たので、俺達はそろそろ出発する事にして、『ランブルクルーザー』を出した。
「うわっ!? なんだいこれ!?」
「「おおーーっ!!」」
俺の愛車『ランブルクルーザー』を初めて見たメリアが驚きの声を上げ、住民達からも感嘆の声が響く中、俺達は『ランブルクルーザー』に乗り込み、エンジンをかけた。
「ラグラフ! メリア! じゃあまたな!!」
「おう! またいつでも来い!!」
「待ってるからな! ガモン!!」
「「ありがとうございましたーー!!」」
ラグラフ王国の人々に盛大に見送られて、俺は『ランブルクルーザー』を走らせた。
「…………とんだ寄り道でやしたが、いいヤツばかりでしたね。噂じゃあ、そのまんま山賊の根城って感じだったんですがね」
「そうだな、ラグラフも良い奴だった。自分がやった事を背負って生きるってのは大変なんだな。俺はその時の状況を知らないから何とも言えないけど、悪徳領主とは言え一族郎党皆殺しってのは苛烈だからな、それを背負ったラグラフもキツいんだろう」
「…………ラグラフがやった事は、正しくはねぇですが間違っちゃいませんぜ。あの国の領主だった奴の書斎がそのまま残されてたんで、ちょっと調べたんですが、あっしでも皆殺しを選んだかも知れねぇと思うような内容でしたぜ」
「そんなにか…………」
…………正しくは無いけど間違ってない、か。何だか考えさせられる言葉だな。
俺達は、それからしばらくは無言で車を走らせ、その日の内にテルゲン王国の国境を超えたのだった。