軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

242回目 飲み友

「…………まさか、こうしてまた酒が飲めるとは思わなかった。飲んだとしても、嫌な事から眼を背ける為の苦い酒になると思っていたぜ」

「一応、食糧庫に大量に積んで来たから、しばらくは食っていける。薬も、簡単なのとポーションを置いて来たからな」

「おう、マジで助かるぜ! しっかしガモンが『勇者』とはな! その『勇者』を囲んで食い物を巻き上げるなんざ、ウチの民は俺よりも遥かに腕のいい山賊だぜ!!」

缶ビールのロング缶をプシュッ! と開けて、ラグラフは喉を大いに鳴らした。

「自分の所の民を山賊呼ばわりするなよ。…………しっかし、まさか『缶ビール』でバレるとはな」

俺とラグラフは、今やすっかりタメ口で酒を飲んでいる。ラグラフに俺が『勇者』である事がバレたのもあって一緒に飲み始めたのをキッカケに、気安くなってしまったのだ。

「へへっ。さっきも言ったが、俺にも『勇者』の血が流れているからな。まさかこいつが酒の入れ物とは思わなかったがな」

そう言ってラグラフが胸元から出したのは、白い虎の描かれたビールのロゴマークだ。日本ではかなり有名な『白虎ビール』のロゴマーク。缶ビールにも描かれているそれを切り取ってネックレスに加工した物である。

それはラグラフの家に代々伝わる物で、勇者としてこの世界に来た先祖がこの世界に持ち込んだ物だ。

ラグラフは自分の手は汚れきってるから、先祖の名を名乗るのは申し訳ないと言って、名乗らない事にしているようだが、先祖と同郷である俺にはコッソリと教えてくれた。

ラグラフ=カツヨシザワ。それがラグラフのフルネームだ。

これはアレか? 『ヨシザワ=カツヨシ』さんか? それとも『ヨシザワ=カツ』さんだろうか? まあ、それはどっちでもいいか。

いずれにしろ、ひと仕事終えた俺が「ラグラフ陛下も飲みますか?」と差し出した缶ビールを見て、ラグラフに「まさか!? ガモンは『勇者』なのか!?」とバレたのが現実だ。

「で、話を戻すけどさ。ラグラフ、このままだとジリ貧だぞ? 俺が食糧を置いたのなんて単なる一時凌ぎだ。あんなのは本当に冬を越すのに使うだけだ。そこから先なんて無いぞ?」

「そんな事は言われんでも解ってる。…………だがなぁ、それが難しいんだよ。俺だって国ごとの亡命も考えたさ。だけどな、俺は悪名高い『ラグラフ』だ。俺が居たら受け入れてくれねぇんだよ。逆に俺さえ居なければ受け入れてくれるとは思うんだが、ヘタな死に方じゃ納得しねぇ奴しか残ってねぇ」

「…………だから俺に首を押し付けようとしてたのか」

「このギリギリの状態なら、俺が死んでも受け入れられるかも知れねぇと思ったんだよ。…………いま考えると、俺も追い詰められて普通じゃなかったな。…………ガハハハハ! やっぱ人間、メシがねぇとダメだな!!」

この国は、『ラグラフ王国』は孤立している。ジョルダン王国にしてもテルゲン王国にしても、更には他の国にしても、元・ガンガルド王国の難民が流れて来るのは受け入れてはいる。

消極的に、『住み着くなら勝手にどうぞ。そのうち税金は取りに行くから、頑張ってね』って感じではあるが、ちゃんと税金を納めるならば、時間は掛かるが国民として認めて貰えるようにもなる。

だが、『ラグラフ』。この名前は悪名が高過ぎるらしく、どこの国でもラグラフが来たとなれば組まれるのは討伐隊だ。決して受け入れてはくれないのである。

「…………酷い話だな」

「いや酷くねぇよ、当たり前の話だ。俺はそれだけの事をやって来た自覚もあるし、この国の民を護るためとは言え、自分の雇い主を一族郎党皆殺しにしている。女も、年寄りも、子供ですらも手にかけた。そんな悪魔みてぇな奴を受け入れる国なんか無いのが普通なんだ」

「…………そう、言われるとなぁ…………」

「まぁ取り敢えず、ガモンのおかげて冬は越せる。それに、あのジャガイモとかカボチャってのは育ちやすいんだろ? 冬を越したら、この要塞の中に畑でも作ってみるさ」

そう言ってラグラフは缶ビールを飲み干した。ちなみに、ラグラフをフレンドにはしない。これはラグラフ自身にも断られた。

「俺みたいなのと繋がってたらダメだ。『悪名』ってのは厄介なんだぜ? 無名より良いって寝惚けた奴もいるが、出会った瞬間に相手が敵と認識するのが『悪名』ってやつだ。無い方が良いに決まってるだろ。そんな俺と繋がっていたら、『勇者』の名にもキズがついてやりにくくなるぜ。 やめとけやめとけ」

などと言われたのだ。悪名は厄介、初対面で敵と認識される、か。…………確かにそうなのだろうな。

だが、このまま繋がりが切れるのも惜しいと思った俺は、ラグラフと話し合った結果、ラグラフの妻の妹、と言う微妙な距離の人物とフレンドになる事になった。

ラグラフからすると義妹だが、年の離れた義妹で、年齢は俺よりちょい上の二十六才。会った印象は『男勝りな爆乳』である。

「おうっ! あんたがガモンかい! アタシは『メリア』ってんだ! よろしくな!!」

「…………は、はい。よろしく」

短い髪に浅黒い肌、そして勝ち気な性格がまるで荒くれのようだ。…………が、それ以上に…………すげぇ。

「…………すげぇだろ?」

「…………お、おう」

何が、とは言わない。ただ俺の視線はどうしても一点に吸い込まれる。引き離すのが大変だ。

「一応言っとくが、メリアは独身だぞ」

「…………えっ? あ、うん」

「何だい、何をかしこまってんだい! アタシと友達になるんだろ? シャキッとしな!!」

バシバシと俺の背中を叩くメリア。なんかまた、個性的なフレンドが増えたなと、俺は思った。