作品タイトル不明
240回目 山賊の王様
森の中をしばらく歩くと、森の中に巨大な要塞が見えてきた。森の木々に同化して見えづらくする為か、壁には一面に植物の蔦が這っている。
俺はそれを遠目に見ながら、スキル倉庫から出した☆4『禍津像探知機』を見ながらスイッチを入れた。するとちょうど要塞のある地点に三つの反応が現れた。
「…………やっぱりここか」
この国に暮らす人々に食料を分けるのが決まった時、俺は密かにこの『禍津像探知機』を使っていた。すると付近に『郷愁の禍津像』が三つある場所が見つかったのだ。
もちろん、一つのダンジョンに三つある可能性もあるが、ここが元は貴族の領地だった事から、その貴族が持つお宝に混じっている可能性を考えた。
そして今、それは確信に変わった。俺の持つ『禍津像探知機』がここにあると示しているからだ。
俺はそれを確認すると、すぐに『禍津像探知機』をスキル倉庫にしまう。アレス達との約束で、これは使う時以外はスキル倉庫にしまっておく事になっているのだ。スキル倉庫にあれば、使用権限を与えているキャンパーならすぐに取り出せるからな。皆で使うなら、これがベストなのだ。
「開門! 開門だ!!」
「おお、帰ったか! いま開けるから待ってろ!!」
俺達と一緒にいた男の一人が声を上げると、城門の上にいた見張りが中に声をかけた。すると門の前にある落とし格子が上へと上がっていき、その奥にあった重厚な城門が片方だけ僅かに開いた。開き方は少しだが、人が通るには十分だ。
門を通り抜けて中に入ると、そこには多くの人が待っていた。その人達はみんな食料は取れたのかと口々に言い、中には薬草を求める人もいた。
みんな一様にやつれており、この国が本当に疲弊しているのが分かる光景だった。
「待てお前達! 落ち着け! 今日は客人を連れて来たんだ! それも、俺達に食料を提供してくれる客人だ!!」
「ほ、本当か!? 本当に食料をくれるのか!?」
「た、頼む! もう食料があまり残ってないんだ! 質が悪くてもいいから量を置いていってくれ!!」
俺達と一緒に来た男が言った言葉に、その場が騒然となった。みんな落ち着く所か、眼がギラギラとしている。みんな飢えに苦しんでおり、見境がつかなくなってきているようだ。
これではこの場を動けないばかりか暴動が起きる。と感じた俺は、その場にスキル倉庫から取り出した布を広げさせて、まずはすぐに食べられる果物やらを大量に山積みにした。
「おおーーっ!! 果物だ!! 野菜もあるぞ!!」
「おい! まだ手を出すな!! 子供が先だ! 次に年寄りと女だ!!」
「運べ運べ!! おい! 誰か子供達を集めて来い!!」
山積みにした果物や野菜に人が群がり、あっという間に山が無くなっていった。そして人々がいなくなると、俺達と一緒に来た男達が俺に頭を下げた。
「申し訳ありません! 礼も言わずに!!」
「勘弁してやって下さい! あいつらも必死なんです!!」
俺は頭を下げる男達の肩をポンポンと叩いて顔を上げさせた。別にこの男達が悪い訳でもないからな。
「いや気にしなくていいよ、食べ物がなくて焦っていたのは解るから。それより、王様の所に連れていってくれ」
「わかりました、ありがとうございます。…………では案内しますので、俺について来て下さい」
◇
「おう。てめぇらか、俺達に食料を売ってくれるっていう物好きなバカは。いや、マジで困ってたから助かるぜ! ガハハハハッ!!」
「…………本当に山賊じゃねぇか」
玉座から俺達を見下ろしてガハハと笑うラグラフ王は、モジャモジャの髭を蓄えた体格の良い大男で、とても王様には見えないワイルドに過ぎる格好をしていた。
この国が他国と交易できないのは、こういう所にも問題がありそうだと、俺は密かにタメ息をついた。
ラグラフ王国の城は、かつては要塞として使われていた無骨な城だ。かつてはドルイネル伯爵の領地としてそれなりの街もあったし村も多かったのだが、内乱とモンスターの影響でほとんど人が住める状況では無くなったので、今では砦としてかなり大きく作られたこの城に全てのラグラフ王国の住民が住んでいる。
まあ大体の住民は北のジョルダン王国やテルゲン王国に難民として移動したのだが。ここに残っているのは、家族がラグラフの部下をやっているか、どうしてもこの地を離れたくなかった者かのどちらかである。
「いや実際、このままだと冬を越せねぇから、テルゲンにでも略奪に行くか真剣に悩んでいたくらいだったんだ。金はあんまりねぇが、俺の首でよけりゃやるからよ! ちっと多めに置いていってはくれねぇか? これでも俺は賞金首だ、結構な金になるぜ?」
「ちょっ!? 親分! 何を言い出してんだあんた!?」
「あんた一応国王だろ!! どこの世界に食い物のために首を差し出す王がいるんだよ!?」
「うるせぇっ!! これから来る冬を越すのがまず第一だろうが!! このままだと飢えて全滅だぞ!? 俺の首で済むなら安いもんだろうが!!」
「「……………………(困惑)」」
……………………なんか俺達の前でメチャクチャ物騒な言い合いが始まったけど。…………いらないからね? 人の首なんて。そんなもん差し出されたら夢に出るだろうが。