作品タイトル不明
239回目 山賊の国
俺達を囲んだ山賊もどきは、悪い奴らでは無かった。
まあ、やろうとした事は悪いのだが、事情を鑑みると致し方ない部分がある。情状酌量の余地が大いにあるのだ。
「…………ふーーん。つまり孤立している訳か。そして瘴気にあてられたモンスターが多くなり過ぎて狩りができず、食料も足りないと」
「は、はい。そうですね…………」
俺とバルタは、山賊もどき達について一緒に歩いていた。彼らの住んでいる所は、森の中にある要塞なのだと言う。そこまで行くには森の中を突っ切らないといけないので、ランブルクルーザーを降りて歩いている。
俺が『ランブルクルーザー』をスキル倉庫にしまったのを見た山賊もどき達は、どうやら俺の事を物凄い腕を持つ魔道士だと誤解したらしく、俺の側にはあまり寄って来なくなった。
警戒するなら、人畜無害な俺よりも『影纏い』なんて二つ名を持っているバルタだと思うが、どうやら魔法が大して使えない一般人にとっては、自分達の理解できない魔法をつかう者は恐怖の対象であるらしい。
実際、俺の一番近くで自分達の置かれた状況を説明しているおじさんも、若干腰が引けている。
「なんだかなぁ…………」
俺のは全部スキルの力で、魔法って訳でも無いのにな。まあ、それはそれで得体が知れないから怖いのか。
「ええっ!? じ、じゃあバルタさんは今、クランに加入しているんですか!? 『G・マイスター』なんて聞いた事も無いですよ!?」
「そりゃそうだ。『G・マイスター』は本当に出来たばかりのクランだからな。あっしも入ったばかりだし。で、そのクランのリーダーが、そこにいるガモンの旦那ってわけだ」
「あ、あの人が…………!?」
何やらバルタが余計な事を話しているらしく、バルタと話をしながら歩いていた冒険者達がチラチラとこちらを伺っている。
いやもう、本当に勘弁してほしい。
◇
今いるのは『ラグラフ王国』と言う国で、元はガンガルド王国と言う国の一部だった場所だ。
ガンガルド王国だった時には、王家と強い繋がりがあり、野心も強い上位貴族が治める領地だったらしい。
その名は『ドルイネル伯爵』。
ガンガルド王国で起きた内乱には必ず関わっており、しかし自分が関与した証拠は残さない程に用心深い男だったと言う。
今の『ラグラフ王国』を作ったのは、その時にドルイネルの手足として働いていた『ラグラフ』と言う裏組織のボスだ。
元は山賊の頭領をしていた男だが、ドルイネルに捕まり、ドルイネルの手足として汚れ仕事をする事を条件に生かされる。そしてラグラフは、正にドルイネルの期待通りに暗躍していた訳だ。
だがラグラフは、決して従順だった訳ではない。ドルイネルに自分の命だけでなく、生まれ故郷の人々の命すら握られて苦渋の決断として従っていただけである。
散々部下を使い捨てにされ、国が滅びる間際になると領民を犠牲にして、自分は財産を抱えてテルゲン王国に亡命する段取りを整えていたドルイネルに、ついにラグラフはブチギレた。そしてドルイネルを一族郎党すべて殺して国を乗っ取ったのだ。
「そして今はこの地を護るために『ラグラフ王国』の国王をやっている訳か。そんな事をよく知ってますね? 普通は隠すんじゃ?」
「お恥ずかしい話ですが、この国の住人ってのはかつてのドルイネルに生かさず殺さずで酷使されていまして。私にしましても、息子が家族の生活のためにラグラフ様の部下をしておるのです」
「…………なるほど、まともには生活出来ない状況だったんですね」
こうして『ラグラフ王国』は作られた訳だが、ラグラフが山賊だったのも、ドルイネルの命令とは言え裏組織のボスだったのも、最終的には雇い主であるドルイネルの一族を皆殺しにしたのも全て真実だ。
そんな男が国王をやっている国が他国とまともに交易できる筈もなく、さらには国の周囲にはモンスターが溢れている。
ラグラフ王国は徐々に衰退しており、こんな国に出入りする商人も後ろ暗い者ばかりで、交渉は常に足元を見られた。
そのせいでドルイネルが溜め込んでいた財産も底をつき、まともに食っていく事も出来ない状況に追い込まれている訳だ。
ラグラフはそれでも何とかしようと奮闘しているし、住民たる彼らもそれを見ているので、自分達の食い物くらいは何とかしようと森に出た所で俺達に遭遇。
何かを売って貰おうにも金は無いので、ラグラフを真似て山賊をしようと俺達を囲んだ訳だ。
…………何と言うか、本当にギリギリまで追い詰められているな。
「…………まあ、この状況を見てしまいましたし、食料と多少の薬は置いていきますよ」
「本当に助かります。ですがやはり私どもでは采配ができませんので、ラグラフ様と話をして下さい。まだ少しは、ドルイネルの財産も残っている筈ですので」
…………さすがにこの状況を知って金を巻き上げようとは思わないけどな。俺が欲しい物は別にあるし。まあ一先ずは、そのラグラフって王様に会ってみよう。
食料を置くにも、大量となれば食料庫に置きたいからな。