軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16回目 ティムの真実

ジョルダン王国に入国したからには、もうコソコソする事も無く、俺達は国が整備する大道を堂々と進んでいた。

大きな道だけあって、交通量が多い。歩いている人や馬に乗っている人はもちろん、ダチョウのような動物に乗っている人もいるし、馬車とも何度かすれ違った。

そして俺は、昨日クリアしたストーリークエスト『テルゲン王国を出国する』で手に入ったクリア報酬。『☆3以上確定! ガチャチケット!』を、さっそく使ってみた。

「…………ん!? これは!!」

「どうかしたの? ガモン」

ティムがそう話しかけて来るが、今はそれどころでは無い。なぜなら、ガチャマシーンの画面で俺が弾いたコインが、放物線を描いて真ん中の金色のガチャマシーンに放り込まれたからだ!

「レア演出キターー!!」

「うわっ!?」

急に立ち上がってガッツポーズをした俺に、ティムが引いている。ゴメンねティム! あとでしっかり説明するから!

ドキドキとしながらガチャマシーンのレバーが回るのを見守る俺。

金色って事は☆4は確定の筈。しかも、ワンチャン☆5まで期待出来るんじゃないか!? うおおっ! 早く回れーーっ!!

そして排出される金色のカプセル。間違いなく、これは☆4のアイテムである。

「ど、どうしたんだよガモン。今度はニヤニヤ笑って…………? ちょっと怖いぞ?」

「フフフッ! 出たんだよ、☆4が! 『☆3以上確定! ガチャチケット!』で」

「そうなんだ! それで、何が出たんだ!?」

「まてまて慌てるな。それはこれからだ」

何せ、☆4だとしても装備だとは限らないと知っているし、ランニングシューズのスキルはちょっとガッカリだったからな。

いやでも。1%でしか出ない☆4だ。どうしても期待してしまう。

俺は願いと期待を込めて、金色のカプセルをタップした。

そして出て来た物は。『氷魔弾の弓』と言う、青くて美しい、氷で出来ていそうな弓だった。その美しい弓を見て、俺は確信をする。これは当たりだと。こんな美しい弓が、外れである筈がない。

俺はさっそく、その『氷魔弾の弓』をテーブルの上に出して見た。

「キレイ! これが今出たアイテムなの!?」

目をキラキラさせるティムが、テーブルの上の弓を手に取った。

「へぇ、冷たそうな印象なのに冷たくない。なんだろう、水晶か魔石で出来てるのかな? あ、でもちゃんとしなるんだね」

美しい弓を持って嬉しそうにティムは語っていた。超絶イケメンってのは、嬉しそうにしていると可愛く見えてくる。なるほど、全方位の女性に好かれる訳だと、俺はちょっとした敗北感を胸に刻んだ。

さて、こうなって来ると欲が出てくる。簡単に言えば、もう一度ガチャを引きたい。それも確定ガチャを。

そしてそれを手に入れる方法が目の前にあるのだ。ストーリークエスト『ティムをフレンドに登録する』だ。

俺は、氷魔弾の弓のスキルにもまだ目を通していないのに、欲望に負けてフレンドのアイコンをタップした。

前にタップした時は何も無かったが、今はフレンドに登録できる者として、『ティム』と『バルタ』の名前があった。

確かフレンドを増やすと、毎日フレンドポイントが手に入り、更にフレンドとはチャットが出来るようになるんだったな。うん、ティムやバルタとチャット出来るってのは、魅力的だ。

二人をフレンドにする事で、双方に特にデメリットがあるとは思えなかったので、俺はティムにフレンドと言う物を説明し、登録してもいいか確認をとった。

「…………へぇ。遠くでも話が出来るってのは凄いね。うん。僕はいずれテルゲン王国に帰らないといけないし、いいよ。そのフレンドってのに、僕をして欲しい」

「わかった! ありがとう、ティム!」

俺はさっそくフレンド登録を操作し、ティムをフレンドとして登録した。…………したのだが。

「……………………?」

「どうかした?」

フレンドに登録した名前が、『ティアナ(ティム)=カラーズカ』になっている。

…………ティアナ? え? かっこティムって何だ? だいたいティアナってこれ、女の子の名前じゃないのか?

俺は思わずテーブルに乗り出してティムの顔を凝視した。

「えっ? ちょっ、近いよ、ガモン…………」

「…………ティム……? いや、ティアナ…………? お前、女の子だったのか?」

「えっ!? ガ、ガモン、何で…………」

「おっといけねぇっ!? お二人さん、揺れますぜ!」

俺とティムが顔を寄せて互いを見ていると、バルタの声がして馬車がガクンッ! と揺れた。何かに乗り上げたのか、そんな感じの揺れだった。

…………だからこれは事故だ。たまたま俺がテーブルに身を乗り出していて、ティムも俺に寄っていたから起きた事故である。

バランスを崩した俺とティムが、とっさに何かに掴まろうと、何とかバランスを取ろうとした結果に起きた事故だ。

俺達の唇が互いにぶつかっていたのも、俺の右手が、何かで押さえていてもなお柔らかさを伝えてくるティムの胸を掴んでいたのも、悪意のないただの事故である。

「「……………………」」

そして二人が離れ、沈黙と混乱に耐えられずに俺が言った、…………言ってしまった「えっと、…………ごちそうさまでした」という言葉も。

顔を真っ赤にして、涙目で右手を振り上げたティムと、その直後に俺の左頬から鳴った破裂音も。

その事故の結果と言えるのだ。