軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

148回目 打ち上げ

「それじゃあダンジョン攻略と、皆の無事を祝って乾杯!!」

「「「「かんぱーーい!!」」」」

ゲンゴウとモンテナにドゥルクを引き合わせた次の日は、ティムに誘われてカラーズカ侯爵邸で打ち上げとなった。

集まったのは俺とシエラにアレス一家、トルテ含むノーバスナイトにサリアナイト、そして当然ティムとバルタだ。

カラーズカ侯爵邸での打ち上げと言っても堅い席ではなく、部屋も俺達が萎縮しないようにと客室の一つで、アレス一家が使っている客室の隣にある客室である。

俺とシエラにアレス一家は小綺麗な普段着だが、トルテ達ノーバスナイトとサリアナイトは割と気合いの入った格好をしている。どこかのダンスパーティーにでも出るのか? という感じの気取った服だ。

一応、昨日のフレンドチャットでティムは普段着でいいと言っていたし、俺も『貴族の普段着』じゃなくて『一般人の普段着だぞ』と念押しはしたのだが、ザッパトルテ兄弟がしっかりタキシード着て髪もまとめて来たのを見た時は吹き出すかと思った。何とか耐えたけどな。

ちなみにサリアナイトはドレス姿です。どちらもレンタルだそうで、ティムは苦笑して出迎えていた。七人は少し落ち込んでいたが、まあこういうのは気にしないのが一番だ。俺達はツッコまないから、強く生きて貰いたい。

「なあティム、これって朝に食材と一緒に渡したレシピ本に載ってた料理だよな? ちょっと違うけど良く似てるもん」

「そうだよ。全部ガモンの持って来た食材で作っちゃうとバフが付いちゃうから、使う食材を抑えて別のに変えているんだよ」

「あぁなるほど。変にバフ付いちゃうと大変だもんな。でもティムの所の料理人は凄いな、初めて見るレシピを別の食材も使って再現するのか。さすがはプロだよな」

「そうだね。あ、ガモン。あのレシピ本って買い取ってもいい? 料理長がぜひとも欲しいって言ってるんだけど」

「いいよ。あれダブってるからあげるよ。同一の内容だとステータス上がらないからな」

「本当に? ありがとう!」

広いテーブルに並んでいるのは日本の物とあまり変わらない唐揚げやピザなんかも並んでいる。

ただ別のテーブルには貴族が食べるような料理も並んでいた。少し食べてみるがこれも中々いける。盛り付けの美しさは日本の高級レストランで出るコース料理みたいだ。世界は違っても、こういう所は似るんだよな。

せっかくコース料理があるのに、みんな気後れしてしまってあまり手が出ない。そこでティムとシエラ、アレスとその母であるアレマーさんが教師となってマナー教室が始まってしまった。俺にティムが教え始めた所から始まったのだ。

「ガモンは明後日にはターミナルス辺境伯に挨拶に行くんだから、マナーはちゃんと勉強しておいた方がいいよ。ターミナルス辺境伯は普段はそんなに厳しい人じゃないんだけど、一人娘のリメイアを溺愛しているからね。最近はリメイアからガモンの話ばかり出てくるからガモンを良く思ってないらしいよ?」

「それ俺のせいじゃない…………。でもまぁ、頑張るよ。領主に嫌われていい事なんかないだろうし」

「甘いですぜ旦那」

俺が嫌われない範囲で頑張ると返事をすると、今度はバルタが忠告をしてきた。

「領主様に嫌われるってのはいい事どころか悪い事ばかりですぜ。って言うか旦那は、絶対に気に入られなきゃダメですぜ、今後に関わりまさぁ」

「なんで? 嫌われてさえいなければ大丈夫だろ?」

俺がそう言うと、バルタはヤレヤレと首を振った。ちょっとイラッとする仕草だ。

「いいですか旦那。若様はこの街に住んでいるわけでなく、もっと言えば他国の人間ですぜ。今回だって、旦那をターミナルス辺境伯様に紹介したら若様の仕事は終わりですんで、国に帰る事になりやす」

「うん。それはまぁ、考えてた」

「旦那にはそれまでにこの街に拠点を作って貰わねぇといけやせん。確か、旦那のスキルにもそう出てたんでしょう? 若様が帰っちまった後だと、大変ですぜ? 普通は領主様と会う機会なんざありえやせんせ」

…………そうか、確かにバルタの言う通りだ。それは考えてなかった。

「この街でよそ者が家を手に入れるのは簡単じゃありやせんぜ。そりゃ若様がリメイア様に頼めば普通の家くらいは何とでもなりやすが、旦那のスキルが言う『拠点』には普通の家じゃ不足でしょう」

「…………うん、確かに…………」

俺のスキル『ガチャ・マイスター』は、どう考えても俺に仲間を集めさせようとしている。何せ『パーティー』だけじゃなく『クラン』を作る機能があるんだから。

クランを作るとなると、確かに普通の一軒家では不足だろう。それこそ貴族の屋敷くらいの広さが欲しい。そしてそんな屋敷なんて、普通の方法では手に入らない。それこそ、領主と懇意でもなければ。

「…………ちょっと真面目にマナー覚えるわ。これでどうにかなるとは思わないけど、マナーが悪くて嫌われるのは最悪だからな」

「本気だねガモン。…………わかった。それなら明後日までウチに泊まりなよ。…………我が家に伝わる地獄の特訓で、当日までに完璧に仕上げてあげるから」

「…………え?」

俺の決意を聞いたティムの眼がキラリと光り、その全身からは気迫が溢れ出した。それはもう、バルタがサッと目を逸らし、俺が迂闊な言葉を一瞬後悔するほどに。

「なに? 何か不満?」

「…………いえ、よろしくお願いします…………」

ニッコリと笑うティムに、いまさら断れる訳もなく。俺は領主に会う当日まで、地獄の特訓を受ける事になりました。