作品タイトル不明
129回目 訪ねて来た幽霊
「「「……………………おいしい」」」
「そりゃ良かった」
取り敢えず落ち着かせてあげようと、サリアナイトの三人にインスタントのココアを出してあげたのだが、気に入ってくれたようだ。
余程の目にあったのか、三人ともずっと助けてくれたティムとアレスの事しか見て無かったのだが、温かいココアを飲んで落ち着いたのか、俺達の事も認識してくれるようになったようだ。
「ここは安全だから、ゆっくり休んでくれ」
「「「あ、ありがとうございます」」」
全員を『◇キャンピングカー』に招いた俺は、外の監視やアンデッド退治をドローン達に任せて休息を取る事にした。
特にノーバスナイトとサリアナイトの六人には休息が必要である。特にサリアナイトを助ける為だと気力を振り絞っていたノーバスナイトの三人は、サリアナイトの三人が自分達を助けてくれたティムとアレスに対してウットリとした顔をしているのを見て、心が砕かれている。
別に付き合っていた訳ではないようだが、虚空を見つめているノーバスナイトの三人を見ていると、何て言うか、暖かい毛布をかけてあげたい。
まあそれはそれとして。
「取り敢えず食事だな。ノーバスナイトもサリアナイトも、しばらくマトモな食事してないだろうし、まずは腹を満たす事にしようか」
ノーバスナイトの三人にも、助けた直後にカップラーメンしか出してないからな。それにあの様子もあるし、美味い物を食わせてやりたい。
…………とは言ってもだ。しょせんは俺ごときが作れる料理に限られる。俺の数少ないレパートリーで作れる物。それでいて心が癒されて美味い物。
「よし、シチューを作ろう。シチューのルーも牛乳もあるしな。ガチャ食材マジ便利」
シチューは基本的に何を入れても美味い。ジャガイモやニンジンという定番もそうだが、ブロッコリーや白菜も最高だ。どうせなら野菜をたっぷり入れよう。シチューのルーもいっぱいあるし、何より普段の生活では使う機会の無かった鍋が、バカデカイ寸胴鍋があるのだ。これ、使ってみたかったんだ。
と言う訳で。俺はシエラとバルタに手伝って貰いながらシチューを作った。シチューは簡単に作れる料理だからマジで助かるよな。しかも栄養満点で美味いし。
「できたぞーー。タップリあるから、遠慮なく食ってくれ。パンも大量に出しとくからな。じゃあシエラ、悪いけど配膳はよろしくな」
「わかりました。お任せください」
と、配膳をシエラに任せてパンの準備をしていると、キャンパーがフヨフヨと俺に近づいて来た。
『マスター、報告があります』
「なんだ? もしかして、モンスターが対処出来ない程に増えたか?」
『いえ、そうではないのですが…………。『◇キャンピングカー』への侵入許可を求められています』
「…………侵入? どういう意味だ? みんな中にいるだろ?」
『…………許可を求めているのは、人ではありません』
「…………なにそれ怖い」
そして、それはどういう意味なのかとキャンパーを問い詰めようとした時、唐突に『◇キャンピングカー』の中に声が響いた。
『許可を求めているのは儂じゃよ。こんな体になってから、どこにでも入れると思うとったのに、何故かそこにだけは入れんのじゃ。なのでそちらから招いてくれんかのぅ』
「いやマジで怖い! 何これ!? 外に何がいんの!?」
『それでは、映像を出します』
そう言ったキャンパーの眼が光ると、空中にホログラムの映像が映しだされた。
映っているのは『◇キャンピングカー』の外の景色で、どうやら攻撃用ドローンを介した映像のようだ。
…………そしてその映像の中心部に、それはいた。青白く透けている何かが、確かにそこに存在していたのだ。
「……………………いや確かに何かいるけど、何アレ?」
「なにガモン、どうかしたの? なんだか変な声が…………って!?」
「うん? 旦那、若様も揃って何を見て…………はぁっ!?」
俺が見ている得体の知れないモノを確認して絶句するティムとバルタ。…………いや本当に何なの? 問答無用で回復の弾丸を撃ち込んだ方が良いんじゃない?
「ちょ…………!? どういう事!? これもガモンのスキルなの!?」
「これは…………!? 本当に本人ですかい!? これも旦那のスキルですかい!? 一体どうなってんで!?」
外の幽霊っぽいのを確認したティムとバルタの様子がおかしい。何だかやたらと動揺している。
「なに? 何かヤバイのかアレ? やっぱ、問答無用で撃ちまくった方が…………」
「いや! あの人! ドゥルク=マインドだよ!!」
「見るからに本人ですぜ!? 化けて出たんですかい? それともこれも旦那のスキルで!?」
「『ドゥルク=マインド』!? マジで!?」
ドゥルク=マインドって緊急クエストとストーリー・サブクエストの依頼主じゃねぇか!! え!? 本人出てくんの!?
いきなり歴史的な英雄が『幽霊』で現れるとか。『◇キャンピングカー』からそれを見ている俺達はもう騒然とした。しかもアレ、ここに入って来ようとしてんだけど。
…………いや待ってよ。まだモンスターの括りのレイスとかスケルトンなら存在に目をつぶってもいいよ。ゾンビだって基本ダンジョンに作られた存在だったから、腐臭とか悪臭もわずかだったし。
でも本物の幽霊とかダメだろ。出て来ていい存在じゃないよねそれ!?
『…………まだかの。入って良いと、一言いって貰えれば入れるんじゃが…………』
再び『◇キャンピングカー』の中に響く声。…………えぇ、マジで? 幽霊とご対面とか、あっていい事なの?