軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

scene:211 マッテオたちの仕事

「なるほど、魔力を圧縮するというのは、面白い。それで独角ライフルは、どの程度の魔獣を倒せるのだ?」

「脅威度5の双角鎧熊を倒せる威力があります」

「ふむ、中々の威力だ。トゥイストホーンは独角ライフルのような武器にできるのか?」

「トゥイストホーンを使うには、上級魔術程度の魔力量が必要になります。そうすると、魔力バッテリーが必要になるでしょう」

「片手では支えられない重さになるな。両手で支える武器か」

王太子の一言で、ギャング映画で見たドラム型弾倉の付いたサブマシンガンのような武器が、リカルドの脳裏に思い浮かんだ。

魔力バッテリーと銃の部分を分離する形も考えられるのだが、一旦サブマシンガンの形が思い浮かんだので、そのイメージが固定化されてしまう。

「その前に、魔術士が使う方が良いと思うのですが」

「いや、上級魔術を使えるような魔術士なら、そのまま上級魔術を使えばいい。そうではないか?」

そういう意見も理解できるが、魔術には触媒が必要になる。触媒なしで上級魔術並みの攻撃ができるのは、魔術士にとっても有益なのだ。

リカルドはそういう意見もあることを言ったが、王太子は考え込んだ。

「将軍はどう思う?」

「その前にリカルド殿に尋ねたいのだが、トゥイストホーンを作るのに、いくつかの角を無駄にしたと言っていましたな。どれくらいの割合で成功するのですか?」

「成功率は六割ほどです。五本試して、二本が失敗するというところです」

「ならば、独角ライフルを大量に作ってもらう方が、軍としては嬉しい」

王太子が、なるほどというように頷いた。王太子はリカルドにいくつかの質問をしてから、トゥイストホーンを使った武器一つと独角ライフル八丁の製作を頼んだ。

実際に使ってみて、武器として採用するか決めるらしい。

「ところで、この竜肉は旨いな。まだあるのなら、分けてくれぬか?」

「王族の方に振る舞われるのなら、明日にでも城に届けます」

「すまぬな。城には食べ物しか楽しみがないのだ」

サムエレ将軍が笑った。

「ならば、早く結婚して、子供を作ることです。楽しみが増えますぞ」

「結婚は、セラート予言の年が終わった後だ。それまでは安心して結婚生活を迎えられぬ」

「殿下の良いところではありますが、責任感が強すぎます。もう少しご自身の人生を楽しんでください」

ガイウス王太子が肩を竦めた。決心を変えるつもりはないようだ。

この日は楽しい時間を過ごした王太子が帰ると、リカルドはタニアたちがどうしたか、ジュリアに尋ねた。

「皆、帰ったわよ」

「悪いことをしたな。明日、謝ろう」

翌日、バイゼル城へ寄って竜肉を届けてから魔術士協会へ行くと、タニアとパトリックが待ち構えていた。

「昨日、王太子殿下と何があったんだがね?」

「殿下にトゥイストホーンと独角ライフルを見せたら、魔獣退治に必要だから作って欲しいと頼まれたんだ」

「大変ね。私たちが手伝えたらいいんだけど」

タニアの厚意は嬉しいが、タニアとパトリックには武器や道具を作製するという才能がないようだ。パトリックには魔力コーティングの基礎を教えたこともあるのだが、さっぱり上達しなかった。

「一人で大丈夫だ。それより、二人にはこれを上げるよ」

リカルドはトゥイストホーンを二人に渡した。

「これで魔境から溢れた魔獣を倒してくれ、ということね」

「君たちなら、それを使って、大概の魔獣を倒せると思うんだ。訓練をしておいてくれないか」

「討伐局の真似なんかしたくないけど、仕方ないか。国全体の問題ですものね」

タニアは魔境から魔獣が溢れた場合、どうなるかを理解しているので引き受けた。パトリックは元々が討伐局の人間なので、魔獣を倒す武器なら大歓迎だ。

タニアたちがトゥイストホーンの練習をするために、訓練場へ向かった。

「やり方は、リカルドに聞いたけど、魔力を込め過ぎないように、気を付けないとダメだぎゃ」

「そうね。ここでは中級下位魔術程度の魔力量に限定しましょう」

「賛成だがね」

二人が訓練場に行くと、革新派の魔術士たちが訓練をしていた。

「タニアさん、訓練ですか。珍しいですね」

「リカルドから、これをもらったんで、訓練に来たのよ」

シドニーたちはタニアとパトリックが持つ変なロッドみたいなものを見た。

「それはロッドなんですか?」

シドニーとイヴェッタが尋ねた。

「一角竜の角だがね」

「えっ、嘘ですよね。あの角は青白いスッとした角でしたよ」

「リカルドが、その角を加工したんだがね」

「あれが、こんなになるなんて、どんな加工をしたんです?」

「それは教えられんがね」

「ああ、そうか。そうですよね」

タニアはトゥイストホーンのグリップを持って、訓練場の土嚢が積んである前に進み出た。トゥイストホーンを土嚢に向け魔力を流し込む。

周りで見ていた革新派のメンバーは、タニアが触媒を使わないのに違和感を覚えた。中級下位魔術程度の魔力を注ぎ込み、内部に魔力が圧縮されたと感じたタニアは、それを押し出した。

トゥイストホーンの先端から何かが飛び出した気配を感じたメンバーは、顔を強張らせる。

魔力圧縮玉が土嚢に向かって飛び、命中して爆発した。土砂が空中に飛び散り、雨のように地面に降り注いだ。

「凄え」

初めて魔力圧縮玉の威力を見た魔術士は、何が起きたのか分からず呆然としている。

「タニアさん、それは魔術じゃないんですか?」

触媒も呪文もなく魔術が発動した。魔術士たちにとって驚天動地である。

「これは魔術じゃないのよ。このトゥイストホーンは魔成ロッドじゃなく、魔功銃に近い武器なの」

「でも、魔功銃には魔術回路やいろんなものが組み込まれているじゃないですか。そのトゥイストホーンのグリップに何か組み込まれているんですか?」

「いえ、魔力伝導率が高くなっているだけよ」

「……触媒が要らないのか。とんでもないものだ。僕も一角竜を狩りに行こうかな」

「一角竜は群れで襲ってくるから、二十人ほどで行かないと死ぬからね」

狩りに行きたいと言ったメンバーは、顔をしかめた。二十人のスケジュールを合わせて、一緒に行くのは大変だったからだ。

「でも、シドニーたちは三人で行ったと聞きましたよ」

タニアはニッと笑って言う。

「リカルドは、十八人分の力があるのよ」

「そうかもね。シドニー、どうなんだ?」

シドニーが渋い顔をする。

「僕たちは、十六匹の一角竜に襲われたんだ。そのほとんどは、リカルドさんが倒した。これは嘘じゃないぞ」

「凄いな。さすが王太子殿下の魔術士と呼ばれるだけある」

「私も一緒に魔境へ行きたかったな」

タニアたちが訓練場でトゥイストホーンを試している頃、リカルドはトゥイストホーンを使った武器の設計を始めていた。

別に難しいものではない。魔力バッテリーと魔力の流出量を制御する機能と引き金を引いた時に魔力圧縮玉を押し出す機能があればいい。

新しい武器を開発しながら、独角ライフルの製作も進めた。魔功ライフルの部品を外注に出して、魔術回路だけを製作して組み立てるだけなので、早めに完成する。

トゥイストホーンを使った武器も完成した。形は両手で構えるサブマシンガンに似ているが、ドラム型魔力バッテリーをセットして、一発だけ特大魔力圧縮玉を発射するというサブマシンガンとは似ても似つかぬ武器となった。

出来上がった武器をサムエレ将軍へ渡し、代金をもらった。将軍は武器の評価を任されたようだ。

王太子から頼まれたことは済ませた。リカルドはトゥイストホーンの研究を始めた。トゥイストホーンについては魔力圧縮機能だけを確かめたが、トゥイストホーンには何か別の機能があるように感じていたのだ。

リカルドは少しずつ魔力をトゥイストホーンに流し込み、内部の構造を探った。トゥイストホーンの内部構造は、年輪のようになっていると分かっている。

その中心部に流し込んだ魔力は魔力圧縮機能が働き、内部で魔力圧縮玉になるようだ。そして、中間層にある魔力伝導率が高い部分に魔力を流すと、通常の魔成ロッドのような使い方ができるらしい。

しかも、特級魔成ロッドと言っても良いほど、魔力許容量が大きかった。

「初めは特級どころか、普通の魔成ロッドにもならない、と思っていたんだけどな。これなら特級魔成ロッドとして使える」

特級魔成ロッドを手に入れたリカルドは、魔境での一角竜狩りは成功だったと思った。

◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆

リカルドがトゥイストホーンを研究している頃、兄であるマッテオと仲間の魔獣ハンターは、港町ジブカに来ていた。

ジブカの漁業組合から、ベルセブ諸島の島の一つバラク島の調査を依頼されていたからだ。

「バラク島は、俺たち漁師の避難場所の一つなんだ」

漁業組合の組合長から聞いた話によれば、天候が急変してバラク島の入り江に逃げ込んだ漁師たちが、不思議な声を聞いて、誰か居るのかと探したらしい。

「その不思議な声というのは?」

「子供のような声で、『お腹空いた』と聞こえたそうです」

「人間の言葉を覚えて、繰り返す鳥がいるそうだから、そいつじゃないのか?」

ベテラン魔獣ハンターのバルビオが確認した。

「声だけなら、そうかもしれませんが、声の主を探して島の森に入った漁師が、魔獣に襲われて、身体中が傷だらけになって、戻ってきたのです」

「ふむ、鳥にやられたとは思えんな。怪我をした漁師は、死んだのか?」

「いえ、傷自体は致命傷でなかったので、生きて戻ってきました。ですが、そんな魔獣がいる島を避難場所として使えません。皆さんに魔獣を退治して欲しいのです」

「分かった」

マッテオたちは漁師の船でバラク島へ向かった。島に到着すると荷物を降ろした。その中には食料や水、テントなどが入っている。

「マッテオが、弟さんから収納碧晶をもらっておけば、こんな苦労をしなくて済んだのに」

仲間であるエルナが愚痴るように言う。

「馬鹿言うな。リカルドからは貴重な武器と防具に収納紫晶までもらったんだぞ。その上に高価な収納碧晶なんかもらえるか」

「いいじゃない。弟さんは金持ちなんだから」

マッテオはリカルドに遠慮しているようだ。だが、今のリカルドにとって、収納碧晶の一つや二つはどうにでもなる。それが分かった時は、断った後だった。

荷物を降ろした漁師の船は、逃げるようにして島を離れた。六日後に迎えに来ることになっている。

「今度、弟さんから依頼された時に、報酬として収納碧晶を頼めばいい」

バルビオが提案した。

「そうだな。頼んでみよう。それより拠点となる野営地点を探そう」

島自体は大きくなく、一日あれば一周できそうだ。

マッテオたちは入り江近くの森を探して、湧き水のある場所を見つけた。漁師から水場があることは聞いていたので、飲水は大丈夫だと分かっていたがホッとした。

水場から少し離れた場所に大木があり、そこなら野営する場所として合格だろうと決めた。

「さて、テントを張ろう」

マッテオが声を上げ、荷物からテントを取り出した。エルナと男二人の二つのテントを張る。

バルビオが大量の薪を拾ってきた。二晩くらい大丈夫なほどの量がある。その頃になると、太陽が西に傾いて辺りが暗くなる。

「今日は調査する時間はなさそうだ。夕食を食べてから、早めに寝ようぜ」

バルビオの提案に、マッテオとエルナが頷いた。

「マッテオ、漁師がやられたという魔獣だけど、何だと思う?」

エルナの質問に、マッテオが首を傾げた。

漁師は何が襲ってきたのか分からないうちに、全身を切られたと言っていたらしい。

「あれだけの情報じゃ分からない。傷から考えると、鋭利な爪を持つ魔獣だと思われるけど、傷跡に違和感があった」

「そうよね。爪の跡なら、何本か並んだ傷が残るのに、どれもバラバラだったのよね」

「あの傷に似たものを見たことがある。【嵐牙陣】という魔術でやられた傷に似ていた」

バルビオが予想外の情報を伝えたので、マッテオとエルナは驚いた。

「えっ、人間の仕業だと言うの?」

「分からん。人間の話し声みたいなものを聞いたという証言もあるんだ。その可能性も考慮している」

「魔術か。まさか、海賊のアジトがあるってことはないよな」

バルビオが考え込んだ。

「海賊が出たという話は聞いていないから、海賊はないと思うが」

そんな話をしながら、保存食を使って料理を作って食べると、マッテオたちは寝た。但し、交代で見張りをすることにした。