軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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平民の顔見知りができてくると、色々な噂話を耳にするようになった。何々領の誰々王子は種違いだとか、何々領の誰々子爵は農奴に手を出しているとか、そういうどうでも良いスキャンダラスな噂話だ。

くだらないとは思うのだが、他領の下々が王家や貴族にどんな思いを持っているのかをリアルに感じ取れる数少ない機会なので窘めたりせずにそのまま話を聞いておくことにしている。

領地によってはその国の王子と下々が入学していることもあるので、彼らも流石に噂の当事者の近くで悪口は言えない筈だから内容は自然と遠いところに座す方々の噂になる。なので王子はともかく俺にとってはちんぷんかんぷんだ。知らない国の知らない貴族の話なので頭に入ってこない。

しかし王子は一応どこの誰かは把握しているようで、たまにメモしていたりする。王子の親父さんにまで報告が行ったりするのかしら?

回ってくるのは噂話だけではない。まあこれも噂話に分類しても良いのかも知れない。

それは怪談である。

その内容はもう学校といえばの定番の怪談である。

曰く、寮のあるこの土地はかつて墓地であったとか、初代校長は非業な死を迎えて今でもその霊が学内を彷徨っているとか、呪われた生徒が同室の全員を惨殺してその部屋は開かずの間になっているとか、そのパターンは現代と全く同じである。

これは学校の怪談に限った話ではないのだが、意外だったのは魔女に関する噂が多いことだ。何処どこの連中は魔女の末裔だから呪われやすいとか、何処どこでは魔女狩りが行われたから呪われやすいとか、王家に男児が産まれないとか、死産になるとか、飢饉が起きるとかである。

さておき、今日聞いた噂話はこの寮に魔女が居るというものだった。

我が寮には当たり前だが生徒を監視する寮長というのが居る。腰の曲がった白髪の老人で昼間はあまり姿を見せず、日が落ちてから寮内を巡回しているらしい。俺たち貴族が暮らしている三階四階にはあまり来ないらしいが、平民の部屋がある一階二階ではよく見かけるのだそうだ。

夜中にトイレに行きたくなって離れにあるトイレに行き、用を足していると真っ暗な離れの戸口から寮長がじっと見ていたりするのだそうだ。

それは怖い。

魔女と言われているが性別は男の筈だ。入学式でシニョール・ボッシと紹介されていたからな。シニョールって要するにミスターのことだ。

しかし背が低く、長くカールした白髪を肩に垂らし、ゆったりとしたローブに身を包み、しわがれた甲高い声をしているので男か女か判別が付かないところがある。

深く皺の刻まれたその顔にはヒゲが全く生えておらず、更に疑念を持たせる。もちろん男でヒゲが生えない奴だっていることくらい分かっている筈なのだが、やはりこうなると疑念を感じてしまうのだろう。

そもそも、この世界では白髪の老人というのをあまり見ない。居なくはないが結構レアだ。平均寿命が五十という事もあり白髪になる前に天に召されてしまうのだ。

ちょっとこれは関係ない話なのだが、農家の女性は三十くらいから腰が曲がり出してパッと見が老婆のような人が居たりするので年齢不詳なことこの上ない。

さて、話は元に戻るがそのボッシ氏が魔女だというのだ。

ちょっと待って欲しい。

魔女というのは悪魔と契約をし、人や社会に害をなす存在の筈だ。それがアカデミーの寮長を任されている?

理屈が合わない。

不気味なのは分かるが余りに稚拙で差別的な悪意がある噂話だ。そういうのは良くないぞ。

と思ったら話には先があった。