作品タイトル不明
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慌てて立ち上がって咆哮のした方を見ると、森の中にヒグマが居た。
すぐそこだ。
数メートルも離れていない。
ヒグマは立ち上がった。
デカい。
見上げる大きさだ。
三メートルほどもあるだろうか。
今しかない!
俺は体勢を低くして走り出した。
クマが四つ足になって走り出したら五〜六十キロメートルのスピードになる。
人間が走って逃げられる速度じゃない。
しかもあんなに密集していたらひと薙ぎで何人が死ぬだろうか。
今なら、思ったよりも人が多くて警戒しているだろうから何とか前脚を地面に付く前に致命傷を与えねば。
幸いヒグマはこちらを見ていない。
エルフたちの悲鳴で足音に気づかれなければ何とか、、、
ヤバい!
俺はヒグマの右手死角から肉薄していたのだが流石に気付かれた。
その瞬間、ゲオルグたちの放ったファイヤーボールがヒグマの顔面を捉える。
俺に気を取られたタイミングで放たれたのだろう。
俺は走りながらダガーを引き抜きヒグマの前を掠めるように走り抜けながら腹部を切り裂く。
両手で持ったダガーが僅かに薄い腹の毛皮に吸い込まれる。
横目で内臓が噴き出すのが見えた。
黒狼の時と一緒だ。
内臓にはかなりの腹圧が掛かっているのだ。
俺はそのまま走り抜け藪に飛び込み太い木の裏に逃げ込む。
こんなデカいヒグマの攻撃を喰らったら一撃でも戦闘不能になってしまう。
里の方へ少し距離をとって、木立の隙間から様子を見るとヒグマは四つ足になっていた。
倒れてはいない。
浅かったか。
ヒグマは目前に居るエルフの方へ攻撃に行くか逃げるか逡巡しているように見える。
ヤバい。
どうせ死ぬなら人もろとも、みたいな思考がクマにあるのかどうかは分からないが手負の野生動物は何をしでかすか分からない。
ここは逃げてもらわねば不味いことになる。
咄嗟に俺は両手を掲げ、両手でダガーを握り、切先をクマに向けて唸り声を上げた。
目を見開き歯を剥き出しにして精一杯の凶悪な声を出す。
ヒグマは俺の威嚇を見て僅かに後ずさったがそこで脚を止めた。
あ、ヤバい。
こっちに来るかも。
その瞬間、ゲオルグたちからのファイヤーボールの追撃があった。
流石のヒグマも森の奥へと敗走してくれた。
俺は息の根を止めねばこの里が狙われ続けるのではとクマを追って駆け出した。
ライトニングで足止めしてフレイムピラーで丸焼きにしてやる!
と、首が絞まって俺は仰向けに倒れた。
「お主はこっちじゃ」
マントのフードをゲオルグに掴まれていた。
「魔力を使い過ぎじゃぞ」
言われてみればスッカラカンだ。
クマの襲撃で興奮して分からなくなってただけか。
俺は手を地面に付いて立ち上がった。
すると視界が急に暗くなった。
吐き気もする。
その場でへたり込むとゲオルグが肩を貸してくれて何とか立ち上がる。
歩き出そうとするとゲオルグがローブの裾を踏んでコケた。
俺もそのまま前に倒れて頭を木に打ちつけた。
痛みをあまり感じない。
アレか、俺が腰紐を抜いちゃったから裾を踏んだのか。
自業自得とはいえこんな仕打ちは無いわな、と力なく笑う。
笑うと頭が痛い。
酷く不快な寒気がする。
ああ、ヤバい。
魔力切れだ。
俺そんなに魔力使ったっけ、、、?
遠くからゲオルグの怒鳴り声が聞こえる。
頬が叩かれる。
揺さぶられると頭が痛い。
目を開けると何人もの顔がこちらを見下ろしている。
何だよ大袈裟だな。
俺はちょっと眠いだけだってば、、、
目を閉じるとまた頬を叩かれた。
無理矢理口がこじ開けられ何かがねじ込まれる。
俺は腹が立った。
汚ねえジジイの指を俺の口に突っ込むなよ。
抵抗しようと腕を振るうが感覚がない。
あれ、何だっけ?
俺は何で森で寝てるんだっけ?
森で寝ると服にムカデが入って来ちゃう、、、
俺はハッとした。
イカン。
俺、魔力切れで死にかけてる。
俺はガバと起きかけて押さえ込まれた。
「意識が戻ったか。昆布を吸うことに集中しろ!」
言われてみれば口に入ってるのは昆布か。
ちょっとサイズが大きくてしゃぶり辛い。
俺は制止を振り切って昆布を口から半分出してチューチューと吸う。
「もう大丈夫か?」
俺は小さく頷く。
俺を覗き込む皆が同時に安堵のため息を吐いてちょっと面白かった。
梢越しに落ちて来る日差しが眩しくて俺は目を閉じた。