軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

245

それから王都までの道のりは、これといった出来事のない平和な道のりだった。

追い剥ぎを迎え撃つのに徹夜をしたので生活リズムが狂い、昼寝をしては夜更かしをするという変な習慣ができたくらいだ。

途中、集落がふたつあったが話を聞くと王都から派遣された兵士が定期的に見回りに来るので治安が良いのだという。

とはいえ、俺たちは兵士たちに出会さなかったので毎日毎週の事ではないようだ。

この辺りは元から治安が良いのかもな。

だんだんと畑が広くなり、森が遠のき、気付けば広大な農地が広がっていた。

まだ王都は見えないが王都の圏内に入ったのだなとはっきり分かる。

農家の家や家畜小屋が点在しているのが今まで見かけた農地との違いだ。

この広い広い農地がひとつの村という扱いなのだろう。

途中、手摺りもない粗末な橋を架けられた小川を渡った。

幅が一メートル程で、石の護岸が作られた川。

明確に農業用水だ。

凄い。

ここらを耕した時に出た石を並べたのだろうが、油圧式の重機のないこの世界でよくまあこんなものを作ったものだ。

王都の本気度が感じられる。

今まで見た麦畑には水路なんてなかったもんな。

ここなら水田も作れるかも。

そのまま道なりに進むと、道は木の塀に囲まれた村へと続いていた。

門を兵隊さんが守っている。

こんな村があるのか。

高さのある見張り台まである。

今までの感覚なら既にひとつの国である。

え、ひょっとしてコレもう王都?

などと訝しみながら近づくと門兵にぶっきらぼうに言われた。

「王都の開門は明後日だ。それまでここで待機せよ」

「え?」

「開門は午前中だけだ。間に合わぬと次は一週間後になるぞ」

なんとここは農村ではなく宿場町だったのだ。

しかしそこここに鶏が歩き回り豚もいる。

余り清潔とは言えぬなんとも有機的な匂いがこの場を支配していた。

門を抜けるとやはり税関のような受付があり、入国税こそ取られないが身元確認が行われる。

「馬の停められる宿はあっち、野営がしたいなら奥の教会の庭が借りられる。野糞は禁止。辻ごとに公営トイレはあるが有料で小銅貨二枚だ。持ち合わせがないならそこに不用品の買取商がいる。問題を起こしたら王都には入れない。何か質問は?」

何回も言い過ぎて一切の感情が乗らなくなってしまったような案内に、ただ頷くことしかできなかった。

そこに広がるのは今までに無かった猥雑さ。

飯屋と酒屋と客引きをするお姉さん。

朝から呑んでいるだろう酔っ払いが道端に寝ている。

「とにかく宿だな」

「ですね。あっちですっけ?」

馬を引いて指差された方角へ進むと、柵で仕切られた別の町がそこにはあった。

いや、マジで別の町だって。

そちらは木が茂り灌木や花壇で柵の中が整えられている。

近づくと何も言わずとも内側に居た老人が柵の門を開けてくれた。

「右奥の宿にまだ空きがありますて」

お礼に会釈をして案内された宿へ向かうと、小僧さんが出てきて馬房を案内してくれた。

なんだかほっとする。

鞍を下ろしながら皆と感想を言い合う。

「凄い所だな」

「他の街道は宿場町はなかったんですか?」

「我々はいつも南側から入りますが、ないですね」

「馬車でこんなところ来たら場違いですね」

「ディーヌベルクの王家はどうしてるのでしょう?」

え、ディーヌベルクにも王族って居るの?

そりゃ居るか。

少なくとも領主はいる筈だ。

でもお城とかそういう感じの立派な建物とか無かったよな。

俺らが見てないだけか?

「ディーヌベルク領主は王都に住んでるよ。代官の居城はダンジョンの壁がある方の反対側だって」

親切に小僧さんが教えてくれた。

「それに代官が王都に出向く時は北側に回り込むんだって。コマッキオから船で南下してマシュトマに入るってさ」

「え」

ロレンツォが絶句した。

そうとう遠回りなのだろう。

王子は小僧さんに小銅貨を握らせた。

「よく知っているな」

「ディーヌベルクからのお客さんが多いからね」

「お客はほとんどディーヌベルクから?」

「もっと奥からの人も多いよ。タラゴナからの人だって来るんだ。お客さんは?」

「我々はポリオリからだ」

「うわ、ポリオリの人は初めてだ。ドワーフの国なんでしょ?」

「よく勉強してるな。アカデミーを目指してるのか?」

「うん。折角王都の近くに居るんだから行かなきゃ損だって」

「そうか。では馬を頼むぞ」

「はい!」

行かなきゃ損か。

確かにそういう選択肢でもあるよな。

地方に住んでたら王都までの旅費だけで相当なもんだ。

それで落ちたら目も当てられないよな。

アカデミーを目指すのも選ばれた者だけの特権か。

入学試験だけでも地方のギルドで受けられるようにしないのかな。

合否が分かれば旅費を捻出する親だっているだろうに。

いや、違うか。

そこまでやったら逆に地方の人材流出が問題になるのかも。

俺は頭を振る。

イカンイカン。つい現代人目線で評価してしまう癖があるが、俺は別に為政者でも何でもないのだ。

転生者があちこちで跋扈するこの世界で俺がやれる事など何も残っていない筈だ。

それよりも目の前の課題に全力で取り組まなければ。

喫緊はアカデミーの受験だ。

あとはなんだっけ?

初心を忘れてはいけないよな。

筋トレ、勉強、女に優しく、だっけ?

筋トレは剣術で賄ってる。

勉強はこのところ出来てない。

女にはほとんど関わりがない。

女といえばさっきそっち系のお姉さんたちが色気をムンムンに放っていたな。

いやいや、夜の蝶に優しくするのはアウグストに任せておこう。

俺はそういうのは専門外だ。

いや、違うって。

ビビってる訳じゃねえって。

童貞だからってバカにすんなよ?