軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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俺は長官と王子に付いて部屋を出た。

廊下を歩き、階段を降りていく。

「姉君はアレッシアと面識は?」

「それが無いのだ。母君が懐妊していたのはうっすら聞いてはいたのだが」

「姉君が家を出る前に生まれていた筈ですよ? 正確には姉君が家を出られてからまだ八年ですよね?」

「そうだったか」

そこまで話してふたりは黙った。

まあ、家に居た頃から既に家族と疎遠だったなどという話は気まずいよな。

しかし今の話の流れ的にアレッシアというのはふたりの妹さんということか。

ふむふむ。

ところで、クラウディオ王子は長官に良く懐いているよな。

何故だろう?

俺は後ろから声を掛ける。

「おふたりは随分と仲が良いみたいですけど、他のご兄弟もみな仲が良いんですか?」

長官が歩きながら肩越しに返事する。

「以前、クラウディオは父君と王都まで来たことがあってな」

「その時ちょうど姉様がマシュトマにいらしたので会うことができたのだ」

マシュトマって王都の港の名前だったか?

「王都に着いたら父君はずっと会議だ。俺はえらく暇だったので問い合わせてみたら姉君の船が偶然にも寄港中だったではないか。それで面会を申し込んでお会いして船も見させてもらったのだ」

あ、そうだったのか。

そういえばあんまりお姉さんの事とか船の事とか訊かれなかったけどそういう事だったのか。

会ったことない姉には興味がないのかと思ってた。

「あの時は、セイレーン号もまだほぼ新品だったな。あれから二年も経って、今はもう全体的に古びてしまった」

「そうなんですね。また見てみたいですね」

ふたりがそんな話をしていると、さっきのホール前室にたどり着いた。

すかさず長官のお付きの女性が近づいてきたが長官は手で制した。

今回はメイク直しはしないらしい。

「中央のテラスでお待ちです」

お付きの女性はそれだけ言うと一歩下がった。

長官は頷いてホールに入った。

俺たちも続く。

ホール中央ではダンスが始まりなんとも優雅な雰囲気だ。

弦楽団はこのホールでは一段上ではあるが見える場所で演奏している。

ダンスフロアの中程の壁際に設えられた舞台の上だ。

ダンスを踊る足音で演奏がかき消されないように配慮されているのだろう。

ちなみにさっき俺たちが話をしていた一角はもう片付けられていた。

もうヴィート氏に絡まれることはなさそうだ。

俺は心の中で胸を撫で下ろした。

長官と王子はやはり人気者で数歩進むごとに声を掛けられる。

その度にふたりはにこやかに返答する。

王子に声を掛ける女性の目がハートになっているのは分かるのだが、長官を見る女性の目もハートになっているのが何ともはや。

そういう需要もやはりこの世界にもあるのだな。

確かに、白いパンツスーツを着こなす長官は男装の令嬢という風に見えなくもない。

そっち系が好みの方にはさぞかし刺さるとこだろう。

声を掛けてくる方々以外の、長官を見る男性陣の目はやはり長官の腰元に集中しているようだ。

きっと彼らは尻のラインが明らかになる女性の服を見慣れてないのだろう。

焼け付くような熱視線が長官の短い上着から覗く細いウエストと形の良いヒップに集中しているのが見て取れる。

長官の尻が燃え出さないか心配になるが、当の本人は至って涼しげにしている。

クラウディオ王子もだが、視線が集まることに慣れてる人はこうした場でも堂々としていて余計に格好いい。

ふと気付けばホール中央から奥は、より一層女性の数が多い。

ホールの奥側は城の奥側でもあるのだが、普段目にすることのない女性たちは城の奥の方で匿われているのかも知れない。

つまり城の高層階の西側がいわば大奥や後宮といった感じなのだろう。

秘密の花園に一歩近づいてしまったな。

などと思っていると、気付けば件の中央テラスに到着していたらしい。

ひとりの少女が長官の前に立ち、スカートを指で摘み膝を屈めて頭を下げた。

ロイヤルな挨拶だ。

生まれて初めて生で見た。

少女は淡いグリーンのドレスを着て、王子よりも赤みの強いウェーブのかかった栗色の髪をおろしている。

ドレスといっても妙齢の女性のように胸元の開いたものではなく肌色の少ない健全な感じ。

肩から二の腕は出しているが肘からは白い手袋で隠している。

顔はクラウディオ王子とよく似ていた。

なんとも可憐な少女である。

「お姉さま、お初にお目にかかります。バルゲリスが次女、アレッシアと申します」

長官は屈んで少女と目の高さを同じにして手を取った。

「姫、およしください。私如きにカーテシーは不要です。私は家も女も捨てた身。叔父貴か何かと思っていただければ僥倖です」

「でも、、、」

アレッシアはクラウディオ王子を咎めるように見上げた。

王子は軽く頷く。

それを見てアレッシアは諦めたように軽くため息をついた。

「分かりましたわ。でも私残念ですわ、ずっと憧れていたお姉さまに折角お会いできたのに叔父貴と思えだなんて」

「お許しください。国軍に籍を置く身です」

長官は随分と妹の下に出るな。

そういうものなんだろうか?

アレッシアは今度は王子を見て挨拶をした。

「改めまして、クラウディオお兄さま、ごきげんよう」

今度は膝を屈めずに軽く頭を下げた。

「ご機嫌よう、アレッシア。僕にはボウではなくカーテシーでもいいんだよ?」

「あら、それではお姉さまよりも兄さまの方が上みたいになってしまいますわ」

「それもそうだな。アレッシア、其方は可憐なだけでなく聡明なのだな。どうかキスをさせておくれ」

キスをさせろと言ったクセに、ふたりは頬を寄せ合ってキスの真似だけした。

そういうものなのだろうか?

ロイヤルのお作法はよく分からん。

「お兄さま、そちらの方はもしかして?」

「ああ、我の教師であり弟分のオミクロンだ」

「ご紹介に預かりましたオミクロンです。お初にお目にかかります、姫」

俺は深々と頭を下げた。

ロイヤルにどう挨拶すれば良いのか聞いておけばよかった。

領主さまにはひざまづいて挨拶したのだからそうするべきだったのかも知れない。

「まあ、変わったご挨拶ね」

「此奴は遠い国から来たのだ。王族でもない。許してやってくれ」

「遠い国から、、、」

頭を上げて姫を見ると好奇心旺盛な澄んだ目をこちらへ向けていた。