軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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メイドさんに身体を洗ってもらうのは経験してしまえば緊張するほど大した事ではなかった。

相手もプロなのだ。

エロくならない洗い方をしっかりと学んでいるのだろう。

硬いタオルとブラシで擦られる。

ただそれだけだ。

ただ、髪にこびり付いたまま固まったコウモリの血を落とすのに時間がかかった。

石鹸の泡を馴染ませて木製の櫛でこそげ、それでも取りきれずタオルで髪一本一本しごくようにして落としてくれた。

用意された石鹸はセイレーン号で洗濯に使われていた液状の石鹸と違い、俺の知っている固形の石鹸だった。

油臭くもないし鼻を付く酸っぱい匂いもしない。

高級品質なんだろうな。

みるみる湯が汚れていく。

なんだか俺は拾われたばかりの汚い捨て猫みたいだな。

落とされた瘡蓋が水に浮いてノミの死骸みたいなのだ。

さて、ここからは今までとは少々事情が違う。

上半身が終わり、この先にはデリケートゾーンがある下半身が残されている。

すると、布を渡された。

「気になる場所があれはどうぞ。使い終えたタオルはこちらの桶へ」

なんだもう、自分でやっていいんじゃん。

緊張して損したわ。

俺は気になる箇所やら足指の間などを心ゆくままゴシゴシすると使い終えた布を絞って桶に入れた。

「どうぞ」

振り返るとメイドさんがいつの間にか立ち上がってバスローブを広げて待ってくれていた。

俺も立ち上がるとバスローブを背中から被せてくれる。

なるほど最後まで洗練された所作だった。

エロくはならず、俺も見られて恥ずかしい所は見られなかった。

逆にここまでエロみがないとむしろ何か少々残念な気すらして来るが、多分それは気のせいだ。

「お髪をお拭きになったらこちらをご着用ください」

示された服はまたさっきのカソックとは別の軍服だった。

良いのだろうか?

ひとまずパンツに脚を通してパンツの腰紐を結ぶ。

ふう。

人心地がついた。

メイドさんとはいえ人前でノーパンはやはりなんだか落ち着かない。

残りの服を身につけて帽子を被り衝立から出た。

「ふむ、なかなか様になってるな」

「何着も服をありがとうございます。でも良いんですか、これ軍服ですよね?」

「他領や国軍との共同作戦の時だと不味いが、作戦外なら問題ない」

なるほど。

領軍と国軍の決まり事か。

肩章まで付いている。

領主氏が着ていた軍服は茶だったがコレはグレーっぽい。

「これってどういう階級なんです?」

「お前に与えられたのは伍長の位だな。軍曹の下だ」

「平民の子供が下士官なんて大丈夫なんですか?」

最近学んだ知識によるとポリオリ領軍においては下から順に二等兵、一等兵、上級兵と「兵隊さん」の位があり、その上に伍長、軍曹、曹長と「下士官」の位がある。

ここまでが平民でもなれる階層で、そこから先の「士官」の位は陞爵して貴族階級にならないと賜る事ができない。

ちなみに、兵隊さんは農家や工房の職人と兼業が許されていて下士官はそれ専門の職業軍人だ。

これがアーメリア国軍だと完全実力主義で平民でも士官職へ成り上がる事ができる。

国軍と領軍の軋轢があるのもこの辺が関係あるんだろうな。

「それより低いと祝賀会に参列するのが不自然になる。誰かに訊かれたら先ほどの功績を認められて昇級したことにしておけ。コウモリの大群をお前が立案した作戦と魔術で滅ぼしたのだ。妥当だ」

なるほどそれなら気が楽だな。

成人したてのただの小間使いだった馬子が初めて式典に参加する。

大体俺の状況そのままだから何かを演じる必要がない。

「僕は王子に引っ付いていればいいんですか?」

「いや、式典は他の下士官と参列してくれ。その後の祝賀会も下士官の席テーブルがあるから適当に飯でも食っていてくれ。おそらくお前の話になるからその時は呼びにやる」

「了解です」

知らない人たちと一緒か。

ちょっと気が重いな。

俺はメイドさんに先導されて下士官の詰め所に連れて行かれた。

城の裏側に近い二階で、位置的には裏口に近い兵隊さんたちの詰め所の上のフロアだ。

「こちらでお待ち下さい」

メイドさんにそう言われて部屋に入る。

下士官の面々はもちろん知り合いらしく賑やかに談笑している。

ひとりは慣れてるけど、大勢の中で独りぽっちなのはなかなかに厳しいものがある。

この中にはクラウディオ小隊の者も居るんだろうけど、殆ど接点がないから見分けが付かない。

いつもの格好なら分かるかも知れないが皆が揃いの軍服に揃いの帽子だもの。

仕方ないので入り口近くの角っこに置いてあった椅子に腰掛けて待つことにした。

皆は何か飲んだりしているが酒臭くはないので水だろうか。

奥にドリンクバーでもあるのかも分からないが喉も乾いてないし見て回る気も起きないので見るともなく床を見つめて時が経つのを待つ。

ふと気付くと、俺を見てひそひそしているのが何組かいる。

下士官といえど年齢はバラバラだがこんな子供がいたらまあ目立つのだろう。

なんなら直接何か言ってくれた方が気が楽な気がするんだけど、どうだろうか。

いや、やっぱ嫌だな。

何か嫌味とか意地悪な事を言われたら数ヶ月は引きずりそうだ。

おれのメンタルは意外とソフトなのだ。

すると一組がこちらに近づいてきた。

やめてくんねえかな。

「やはりオミ殿ではありませんか! 気づきませんでしたぞ」

「伍長におなりになったので? ご昇進おめでとうございます」

「我々のテーブルはそこです。どうぞこちらに」

口々に言われ、よく見ればクラウディオ隊の魔術兵の皆さんだった。

「すみません、気づきませんでした。いつものローブを着てらっしゃらないので」

「我々も落ち着きません。今日は式典ですから他所行きです」

魔術兵たちは下士官だったのか。

そうか、平民出だけど魔術に適性があって就く職種なのだろうな。

しかし魔術教練の時は遠巻きに避けられていた気がするがこんな懐っこい人たちだったのか。

「いやはや、声を掛けて頂いて助かりました。ひとりで寂しかったんです。ありがとうございます」

「いえいえ、いつもは王子とご一緒ですから声の掛けようがありません」

「我々は平民ですから」

「それにしても今日のフレイムピラーは凄まじかったですね」

「あれはフレイムピラーじゃないだろ。詠唱も全然別だったろうが」

「古エルフの魔術か」

「そういえばリサ様がバルベリーニの連中と共にいらしたな」

「それは本当ですか?」

「ああ、あれは確かにリサ様だ。クラウディオ様にお声を掛けてらした」

「マジか。俺もお目見えしたいな」

「俺、初めてだよ!」

みんなテンションが上がって姦しい。

口を挟む隙がない。

しかし長官の顔ってあまり知られてないんだな。

そりゃそうか。

中年の兵士までしか接点がないのか。

そうこうしているとアルベルト隊から移動が始まり、ベネディクト隊と我々が続き殿はサビーノ隊が務めるようだ。

隊長の身分の順なのだろう。

ゾロゾロと階段を上がり広いホールに出た。

五階くらい上がってきただろうか。

王室のフロアの下にこんなホールがあるとは知らなかった。

謁見の間の下くらいだろうか?

ポリオリ城は迷路のように複雑でいつまで経っても位置関係が覚えられない。

ちなみに、王妃や王女が暮らす場所というのは城内で完全に隔離されており、王室の女性は普段全く見かけることすらない。

王妃や王女は城から出ることはおろかテラスにすら姿を現さないのだそうだが、今日は見れるのだろうか?